表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Lv666の褐色美少女を愛でたい  作者: 石化
第四章 アメリカ+

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

138/155

第百三十七話  ヨセミテ4

 


 あの場所に帰ってきた。


 やっぱりこんなところに入り口を作るなんて頭おかしいよ。

 確かに経験値もドロップも良い感じだったから、行きたい気持ちもわかるけどさ。


 なんならもう一回落ちる可能性もあるよ。

 足が震えてきた。

 落ちたくないんだけど。


「今回は俺から行かせてくれ。」


 先に誰もいない方が気は楽だ。


『危ないですから、私が先に降りた方がいいと思います。万一のことがあっては困りますから。』


 しかし、リンさんの提案は至極もっともで、俺は頷いてしまった。

 セーフティネットのあるなしは死亡率に直接響いてくるからな。


『私が抱えていこうか?』


 サトラが提案してくれたけど、流石に二人で飛ぶのは難しいんじゃないだろうか。リンさんみたいに重力を小さくできるわけでもないし。


 それに、俺はこれに勝って、ヨセミテダンジョンに完全勝利をしたい。

 ここから逃げたら、負けたという思いが残ってしまうに違いない。


 それは絶対に嫌だ。


 そういうわけで断った。


 結局、リンさんの次に俺が降りることになった。


 風に乗ってふわりと降りるリンさんはとても優雅で美しい。


 風に乗れる職業効果って、すごいね⋯⋯。


 次は俺の番だ。


 上がってきている人がいないことを確認して、慎重に足を踏み出す。


 真っ逆さまに落ちている谷底に水がキラリと光って見える。


 ワンチャン落ちてもあの川で衝撃吸収されないかな⋯⋯。

 普通に水面に当たった衝撃で死ぬか。


 というかこれ素直に壁に腹を向けた方がいいのでは?


 歩くときに前傾になる人間の性質上、壁に背を向けている今の体勢は落ちやすすぎる。


 あそこに、大きな出っ張りがあるな。あそこまで行ったら体の向きを入れ替えようそうしよう。


 一歩一歩慎重に。手と足が三つ接地していれば基本的には落ちないってテレビで言ってた。


 いやほんとなんで登りはあんな簡単に行けると思っちゃったんだろうね。

 レベルは上がっても、結局のところ俺は凡人だ。センスには乏しい。器用さが必要なところを、無理やり押し通る必要なんてなかったんだ。



 そのまま、出っ張りで体の向きを変える


 さらに慎重に、ゆっくりと。


 ようやく降りたときには、15分近く経っていたけど、俺は達成感でいっぱいだった。

 すぐ後に10秒くらいで降りてきたサトラとレンさんは見なかったことにする。


 リンレンパパは5分くらいだった。あなたも十分早いと思います。


 ●


 帰り道、俺はこっそりパパさんに近づいた。


「すみません。せっかく久しぶりに家族でダンジョンに行くことになったのに、俺が迷惑をかけて。」


 入り口での落下未遂。ダンジョン内で積極的にモンスターを狩ったために、リンレンファミリーの出番があまりなかったこと。そして、慎重すぎる帰り口。


 総合的に考えて、迷惑をかけたというしかないだろう。


『あー。いや、そんなもんだろ。お前らが来ることを認めたのは俺だしな。』


「なら良かったです。」


『ほんとお前は評価に困るやつだな⋯⋯。ちぐはぐというかなんというか。』


「どういう意味ですか。」


『かっこいいんだかカッコ悪いんだか。』


「なるほど。」


 わからん。

 容姿の話か?


 告白されたことはない。

 つまりそれほど美形ではない。


 あんまり蔑まれたこともない。

 容姿で蔑むやつなんて、年を経るに従って減っていくから、この記憶は何も物語っていないか。


 容姿の自己評価は普通だ。

 まあ、大多数の人間は普通に位置するだろう。

 それが平均値であり中央値だ。この場合どっちが正しいんだろうな。サンプルが多いと同じになるんだっけか。


『とりあえず、嫁をもらうなら覚悟を決めてうちに来い。二重の意味で歓迎するぞ。』


 それは認めてくれたということかな?

 でも二重の意味ってことは、しごき的な意味も入っているような気がする。


「今のところはその予定はありませんよ。」


『そうか。残念だ。』


 肩を落としている。

 わからない。娘を持つ父親の心はわからない。


 とりあえず、無様はだいぶ晒したけど、現在の実力が確認できたから、総合的にはプラスのダンジョン攻略だった。よくわからないボスドロップもあったしね。


 薬の素材にでもなるんだろうか。


 金に困ったら売りに行こう。


 とりあえず、そんじょそこらのダンジョンなら、鼻歌交じりで攻略できるようになってしまったようだ。


 これがゲームならば、レベルキャップが開放されて、さらなる上のレベルのモンスターが現れるんだろうけど、今のところそんな気配はない。


 バランス調整をミスっている気がするが、どっちかというと俺の職業の方がバグっているから仕方ないことになるだろう。


 後の心残りは、サトラを変えた元凶を、どうにかしたいということだけだ。


 これからもう少し情報を集めていくことにしよう。


 あとはレベル上げだね。

 もはやダンジョンのレベルが低すぎてレベル上げできる気がしないんだけど、これはどうすればいいかな⋯⋯。


 難易度的にはその経験値は間違っていないんだけど、このままじゃ、何体狩ればレベルアップすることやら。気の遠い話になってしまいそうだ。


 これからどうしようかな。まあ、ナルデが帰ってくるのを待つのが一番いいとは思う。あの人がいるのといないのとでは情報収拾効率にえらい違いが出るからな。


 つまりはとりあえず、もう一回、リンレンハウスにご厄介になるということだ。


 もう一回日本食でも振る舞おうかな。

 時間もあるし。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ