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Lv666の褐色美少女を愛でたい  作者: 石化
第四章 アメリカ+

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第百三十二話 仲直り

 

 レンさんにうまくできるかわからないと言った通り、リンさんのためにどうすればいいのか、俺の中の道筋は全く立っていなかった。

 もともと、関係ないこととしてやり過ごそうとしていたことでもあるから。


 とはいえ、レンさんには聞きたいことがある。

 なんとかしよう。


 まずは状況確認だ。


 リンさんの状況。

 リンレンパパの呼びかけで、ちょっとだけ正気に戻ったようだったが、彼がおろおろしすぎていて、寄る辺なく再び俯いている。


 リンレンパパの状況。

 どうしていいかわかっていない。

 久しぶりに会った娘ということもあってか、全体的にぎこちない。

 それでもこちらに牽制するような目線を送ってくるから、やりにくいことこの上ない。

 過保護というしかないだろう。


 どうしようか。リンレンパパの圧力が強くて近づくのに躊躇してしまうぞ⋯⋯。


 困っていたところ、リンレンママが、パパに話しかけた。


 こちらにウィンクをよこす。

 気を引いてくれるようだ。


 これならいける。

 こちらを気にするそぶりを見せるリンレンパパだが、ママさんの畳み掛けるような話術にかかりっきりになってしまっている。


 鬼の居ぬ間になんとやら。



「リンさん。」


『はい⋯⋯?』


 金の長髪が、顔を上げた彼女の両肩に流れる。

 気を張った表情しか見たことがなかったから、今のあどけないという方が似合う顔立ちは結構刺激的だ。


「今日はリンさんの意外な一面を知れて嬉しかったです。」


 それは間違いなく本当だ。

 冷徹な人だと思っていたから、こんな風に隙を晒しているリンさんに戸惑いもしたけど、だからこそ好意を持てる。



『えっ⋯⋯。』


 意外そうな表情。

 彼女にとっては恥以外の何物でもなかったのだろう。


「だから、そんなに落ち込むことはないと思います。」


『私は落ち込んでなんて。』


 反抗する元気が出てきたようだ。

 励ます時は、肯定してしまうのが一番だ。


 俺の母がよくやってくれた。

 高校時代、自分の職業に絶望したとき、母の励ましのおかげで、前を向けた。


 それを、実践する。


「落ち込んでないなら良かったです。元気はありますよね。」


『なんの確認ですか。⋯⋯。でも、ありがとうございます。』


 リンさんは柔らかく微笑んだ。


 うん、そっちの方が魅力的だ。


「レンさんから話があるみたいです。」


『嫌ですと言っていいですか?』


「気にしてるみたいですから、許してやってください。」


『あなたから言われたら仕方ありませんね。』


 ふふっと彼女は息を漏らす。


 なんか俺の評価めちゃくちゃ上がってない?

 そんな大したことをした覚えはないんだが。

 いや、まあ、夜に吠えるものを倒して命を救ったことはあるか。

 それに人からの評価は高くて悪いことはないからな。



 レンさんを呼ぶ。

 すぐに飛んできた。

 やっぱり俺を緩衝材にしなくても、自分でいえばそれで済んだと思うんだけどな。


『ごめん、リン。やりすぎた。』


『反省してください。私だって怒るときは起こります。ただでさえ姉さんは迷惑をかけ通しなんですから。』


『調子に乗ってました。』


『それなら私がトライヘキサの監視役をやることにしましょうか。もともと姉さんのわがままだったんだし、役割を交代しても別にいいですよね?』


『それは嫌。』


『全くもう姉さんはわがままなんですから。私が姉さんを任務にかこつけて遊んでいると報告するだけで、姉さんは終わるんですからね。自覚してください。』


 攻守逆転。

 正気を取り戻したリンさんの切れ味が凄まじい。


 レンさんはすっかりタジタジになってしまっている。


 まあ、レンさんがやったことは、かなり罪深いからな⋯⋯。

 いい薬だろう。


『ちょっと直方、見てないで助けてよ。』


「今回はレンさんの自業自得です。」


『この薄情者!』


 そんなこと言われてもリンさん怖いし⋯⋯。


 レンさんは正座をさせられて、リンさんから説教を受けていた。

 レンさんもちょくちょくおもらしネタを用いて反撃しようとしていたが、リンさんは完全に吹っ切れたのか、気にすることなく言い募る。


 完全に姉妹の力関係が入れ替わっていた。


 俺はそれを見ながらピザを食べていた。


 平和なのは良いことだ。


 しみじみしていたら、リンレンパパがどかりと俺の横に座った。


 ママさんは追加のピザを取りに行くために引っ込んでしまったらしい。


 やっぱり圧力がすごい⋯⋯。

 逃げたい。


『さっきは悪かったな⋯⋯。』


 ビクビクしている俺にかけられたのは、思っていたのとは別の言葉だった。

 あれ、意外と優しい⋯⋯。


『二人ともお前達を信用しているのがわかった。あんな姉妹喧嘩なんて、親にもほとんど見せたことがないんだがな⋯⋯。』


 それほど気を抜いてもいい相手だと思われているということか。

 レンさんはともかくリンさんはどうなんだろう⋯⋯。


 さっきの会話の感じだと、信用されているというのも間違ってはいないんだろうけど。


『二人ともぐんぐん成長する天才だったから、俺が導いてやれる時間は少なかった。』


「お父さん、ご職業は?」


『お前にお父さんと言われる筋合いはない。⋯⋯冒険者だ。』


 いやリンレンパパというよりマシだよ。多分。


「冒険者ですか。」


 それで暮らしていけている。あまつさえ家族を養えているというのは、間違いなく腕利きの冒険者なのだろう。


『二人ともよくついて来たんだよ。あいつらを守るために、俺は強くなった。すぐに追い抜かされるとは、トンと考えていなかったが⋯⋯。』


 彼は遠い目をした。

 追憶と、慕情の入り混じった目だった。


『お前なら、違うんだろ?』


「はい。」


『なら、頼む。俺の分まで娘たちを守ってやってくれ。』


 頼む彼の姿は、とても寂しそうだった。


 俺は、頷いた。

 俺なら、彼女たちを守れる。

 彼女たちを超える強さを持つに至った俺なら。


「時間が合えば。」


『台無しじゃねえか⋯⋯。』


 呻くように彼は言って、少し笑った。



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