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Lv666の褐色美少女を愛でたい  作者: 石化
第四章 アメリカ+

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第百二十六話 フォーマルハウトの焔


口では争いを拒むようなことを言いながら夜に吠えるものの触手による攻撃は継続している。言行不一致だ。


『ようやく現界できたと言うのに。面倒臭い。』


「なら立ち去ったらどうだ。」


『我の姿を見て、言葉を聞いて、崇拝も失神もしない小さきもの。お前は異常だ。だが、資格がない。我に交わす言葉はない。』


こちらを評価してはいるが、資格とやらがないとコミュニケーションをとるつもりはないようだ。


なら、触手を切り払う。

サトラの負担を少しでも軽減するんだ。


千鳥が触れる直前、触手がぶれた。


確かに弾いたはずなのに、触手の一撃が俺の胸に突き刺さる。


衝撃。

吹っ飛ばされた。


『仁!』


サトラの叫び声が大きく響く。


『我は不可侵なれば。神性を持たぬ攻撃は通じぬ。邪魔は消えた。のんびりといたぶるとしようか。あああううううおおおお』


触手と槍がぶつかり合う音が響く。



俺の意識が途切れるに従って再び夜に吠えるものの声が理解不能なものへと変わっていく。


ダメだ。そこにサトラ一人を残していけるわけがない。

どうにかして、気を引いて、そして⋯⋯。


どう勝つ?


あの、意味のわからないスペックを誇る化け物にどう勝つんだ?


素直に撤退を選ぶのが正しいのでは?


吹っ飛んだ俺を小さな体が起こした。


『唱えなさい。』


威厳に溢れるナルデの声。

アテナ様だ。


『これしかありません。星辰は無理やり合わせます。続けて。ふんぐるい むぐるうなふ くとぅぐあ ふぉまるはうと んがあ・ぐあなふるたぐん いあ! くとぅぐあ!』


彼女の口から響いたと思いたくない奇怪な呪文。

それでもそれしか選択肢がないと言うのなら、唱えるしかない。


「ふんぐるい むぐるうなふ くとぅぐあ ふぉまるはうと んがあ・ぐあなふるたぐん いあ! くとぅぐあ!」


開けてはならぬ扉を開けた気がした。


気づけば目の前に超高温の火の玉が浮かんでいた。

周りの音が聞こえない。

ただ、俺と火の玉の二つだけがそこにはあった。



『怨。敵撃滅』


『愉快喜悦。』


『水巫女助。』


『了承承。知』


不自然に途切れながらも火の玉から意思が伝わる。


フォーマルハウトの焔

Lv999

技能「プロミネンス」「テレパシー」

称号「グレート・オールド・ワン」「炎の四大霊」「生ける炎」


Lv999。おそらく夜に吠えるものと同格。

凄まじく暑い。生きた炎。その称号は伊達ではない。

だが、途切れ途切れに伝わる意思は、間違いなく夜に吠えるものを敵視するものだった。


時が動き出す。


『仇。敵確認』


『お前を知るものなどもはやおらぬと⋯⋯!』


『良運優。勢』


強大な二つの怪物の意思がぶつかり合っている。

メラメラと燃える炎と、ゆらゆらと揺れる触手。


互いに力を図っているようだ。

そうだ。今のうちにサトラを助けなければ。


俺はそろりとサトラの方に歩み寄る。

彼女は二つの怪物に挟まれて動けていない。


『だが、こちらも対策済みだ。この前やられてからな。外側の高温への耐性は万全だぞ。』


『然。我不利?』


『我の顕現を止めるすべなどありはしない。』


『解我宿剣。』


前へ駆け出そうとした足が止まった。

再びあの不思議な空間だ。


俺とこの炎以外動かない。



『頼助我。力』


テレパシーが届く。

頭を下げられた気がした。


「サトラを助けられるなら。」


これまでで一番強いはずの相手と、この炎。

この炎が力を貸してくれと言っている。

やれる事は全てやらないと、生き残れるはずもない。


『水巫女助。』


「頼む。」


『宜我誓。助』


炎の言葉は、簡潔が過ぎていてあまり意味がわからないけど、サトラを助けると誓ってくれたことだけはわかった。


『両。剣貫穿』


「ああ。両方で貫く。」


紅葉刃と、千鳥。

二つの武器が赤く赤く染まっていく。

フォーマルハウトの炎が宿った。

赤熱して、思わず取り落としそうになるも、気合いで耐える。


『我空陽動。』


ほとんど全てのエネルギーをこちらの剣に注いで、ガワだけになったらしき炎が、浮かぶ。


「わかった。」


そちらに気を取られている間にこちらが刺す。

そういうことだろう。夜に吠えるものの視線は、フォーマルハウトの炎が出現してからずっとそちらに固定されている。

それだけそちらを警戒して、俺たちは気にすることのない存在だということだ。


『動再頼頼。』


時が動き出す。



「加速。」


短期決戦しかない。

こちらに気づかぬうちに。

俺がこの熱に耐えられなくなる前に。


夜の笛従者との戦いでは見せていない加速をここで用いる。


一瞬でサトラを越えて、さらに肉薄。


後ろではフォーマルハウトの炎が煌々と夜空を照らしている。

向こうの反応が一瞬遅れた。


だがすぐに対応してくる。


触手が二本、こちらを狙う。


それでも俺にできるのは、これが一撃必殺だと信じて突き進むことだけだ。


「うおおおおお。」


さらに加速。


両方の赤熱が最高潮に達する。

確実に両手は火傷をしている。


構うか。ここで決めろ。


夜に吠えるもののブヨブヨの胴体へ、千鳥と紅葉刃を深く深く突き立てた。



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― 新着の感想 ―
[一言] SAN値チェックのお時間だああああ!! 熱い男、仁。(物理的に)
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