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Lv666の褐色美少女を愛でたい  作者: 石化
第四章 アメリカ+

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第百二十二話 姉妹

 ●


「あっ。」


 俺は自分のスマホが震えるのを見た。愛さんからの返信だ。

 愛さんたちは無事に東京に帰れたようだ。

 最大級の感謝とともに、到底使いきれない金額が、俺の口座に振り込まれていた。

 やっぱり怖いな愛さん⋯⋯。

 ただの感謝だし、お金は多ければ多いほどいいけれど、それはそれとして、この金額を一瞬で払える愛さんには恐れを抱いてしまうのも無理はない。


 で、本題だ。


 女神の処遇の件である。


「主人さまがカヤノヒメさまにお尋ねになったところ、しばらく幽閉ということになったようです。ダンジョンに関しては、こちらの利益になるということと、作った女神の力を持ってしても、完全に元に戻すのはこちらのリソースを食うということで、現状維持だとか。」


「それは良かった。」


「良かったのですかね⋯⋯。私たちもダンジョンから利益を得ていますし、否定はできないと言ったところではあります。」


「動機はこちらへの侵攻で間違い無いようです。自分の支配する世界を増やしたかったと言ったところでしょうか。」


 現世への侵攻というには、ゆったりしていたように思う。

 俺たちもなんだかんだダンジョンがあるという生活に慣れてきたしな。


「地球の神たちのごたつきに乗じて楔を打ち込んで、あとはゆっくりという作戦だったようですね。」


「楔というのがダンジョンだったと。」


「はい。あの時は日本とギリシャが争ってましたし、地球の神々はそちらを注視していましたから、警戒がおろそかになっていたのでしょう。」


 日本神話とギリシャ神話が争っていたらしい。

 なんでそんな最近神界大戦みたいなことをやっているんですかね。

 神話の時代ならいざ知らず、七年前だろ。もっと落ち着きを持ってくれ。


「そこらへんは長くなるので割愛します。纏めると、現状維持、です。好きにやっても大丈夫ですよ。」


「ありがとうございます。愛さん。」


「これくらいはおやすいご用です。」


 愛さんの澄ました顔が頭に浮かんでちょっと笑ってしまった。


 ●


 リンさんの情報共有によって、どこへ行けばいいのかはわかった。

 それだけでなく、軍が現場まで送り届けてくれるということになった。


 ンガイの森には相当対応に苦慮していたらしい。


 練度は十分な軍隊だと思うんだけどな⋯⋯。

 なんてったって米軍だ。Lv100がゴロゴロいる。

 モン・サン・ミシェルダンジョンくらいだったら簡単に突破できるだろう。


 それでこの対応だ。

 つまりそれほどのものが潜んでいるということ。

 気をつけたほうが良さそうだ。


 現在は軍用車の中にいる。俺たちと、監視役としてついてくるらしいリンさんの五人である。


 リンさんはピリピリしている。


 主にサトラに向けたものだが、こちらにも向けてくるから収まりが悪い。


『同盟国だから、このくらいの弱みは別にいいはず⋯⋯。』


 謎のつぶやきが聞こえてきた。

 確かに日本とアメリカはまだ同盟国だ。

 他国の人間に知られるのは弱みを握られるようで嫌だったのだろう。


 わからないこともない。


 ならナルデはいいのかという話だが、彼女は、間違いなく自分一人でもその状況を暴くだろう。つまり実質的に、情報開示をした相手は俺とサトラの二人のみということだ。


「別にどこにも話さないよ。」


 愛さんから聞かれたらちょっと話してしまうかもしれないが、あの人はノーカウントにしていただきたい。こちらが話す気が無くても、簡単に情報を引き出されてしまいそうだ。


『上にもですか?』


 疑り深くリンさんは聞いてくる。


「上?」


『とぼけますか。まあ、いいです。そういうことにしておきましょう。』


 リンさん確実に何かしらの誤解をしていると思うんだけどな⋯⋯。

 よくわからないからスルーでいいか。


 軍用車は窓がないから景色が見えない。

 それでいてアメリカは広いくて、時間がかかる。


 銃社会とダンジョンが融合した結果、かなりの無法地帯になった場所もあると聞くから、窓がないのは仕方ないだろう。

 いきなり銃弾が飛来したら怖すぎる。



 それでも退屈なものは退屈である。


「ナルデ。何か面白い話はない?」


『よく聞いてくれたね。とっておきのがあるんだけど聞きたい?』


「もちろん。」

『あるところに双子の姉妹がいました。』


 ナルデはちらりとリンさんの方を見ながら話し始めた。


『双子はとても仲が良く、いつも一緒に遊んでいました。

 お姉ちゃんと甘える妹と、それを猫可愛がりする姉の様子は、近所では有名でした。

 妹はアイスクリームが大好きでした。

 二人でアイスクリームを買ってもらうと、姉に必ずねだるのです。姉は妹のことが大好きでしたから、当然分け与えました。彼女もアイスクリームは好きでしたが、それより妹の笑顔の方が好きでした。』


 レンさんがうんうん頷いている。ひょっとして⋯⋯?

 リンさんの方を見ると真っ青な顔になっていた。


『ナルデさん、もうやめませんか?』


『いいじゃんいいじゃん。懐かしいし。』


 姉妹の会話に納得を得る。

 ナルデの技能「探求」の力だろう。

 そして幼少期のことを語られるのは恥ずかしいものだ。

 レンさんは全くそういうこともなさそうだけど。


 リンさんには効果抜群だったようだ。


 そうして、リンさんとレンさんの幼少期が道中ずっと語られることになった。

 幼い頃の失敗など、思い出したくないことが多かったようで、リンさんは瀕死のダメージを受けている。⋯⋯うん。俺も最後におねしょした日を昔話として語られるとダメージでかいのは間違いないから、同情する。


 目的地に着いた時、リンさんの印象は、お堅い軍人から、甘えん坊の妹にすっかり変わってしまっていたのだった。



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