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Lv666の褐色美少女を愛でたい  作者: 石化
第四章 アメリカ+

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第百二十一話 リン・ワールドの依頼

 

 大西洋をひとっ飛びすれば、もうアメリカだ。

 軍事基地があるというデラウェア州のドーバーに俺たちは降り立った。


 遠巻きに武装した兵隊たちが囲んでいる。

 威圧感よりも、びくびくとした怯えを感じた。


 それだけこっちの実力が上がったということだろう。

 俺もワンチャン、銃弾くらいなら見てから避けられるようになった気がするもん。

 今更普通の軍隊に負ける気はしない。

 いやもし原爆とか、高性能爆薬とかそういうので攻められると流石に打つ手はないけど。

 今の所そんなことをするつもりはないようだ。

 ただ、こちらを警戒しているだけのようだ。


 まあ、こっちが向こうを恐れる理由がないのと同じように、向こうはこっちを恐れる理由がある。

 特に米軍はサトラの実力を理解しているみたいだからな。

 彼女に暴れられたらどうしようもないことはわかっているのだろう。


 サトラはそんなことしないけどね。


 サトラの望みは、とても嬉しいことに俺と一緒にいること、だ。

 俺の望みも同じだから、満ち足りているというよりない。



『ようこそ。歓迎します。』


 とても歓迎しているとは思えない声音で俺たちを迎えたのはリンさんだ。

 レンさんによく似た顔立ちの、ショートのレンさんとは打って変わって長い金の髪をした女性だ。



『リン、久しぶりー!』


 レンさんがすぐに近づいて抱きしめた。


『ちょっと姉さん。任務中。』


『早く有給取ってよね。』


『姉さんの方が一応任務扱いなの、とても納得がいっていないんだけど。』


『行動力の差だよ。』


『はあ⋯⋯。』


 リンさんは頭が痛いとでもいうように頭を押さえた。


『まあ、いいわ。とりあえず、あの時はごめんなさいね。こちらとしても任務だったんだけど、いきなり襲っちゃったりして。』


 そのままこちらに歩いて僕とサトラの前に立つ。

 意思を込めた視線が俺たちを射抜く。

 姉には頭が上がらないようだけど、きちんと軍人としての職務を全うしようという責任感にあふれた、まっすぐな目だ。


 リンさんの襲撃って、三週間くらい前だったっけ。

 なんか色々あって、それだけしか経ってないことが信じられない思いだ。


 彼女が大学で襲撃してきたことを思い出す。


 学費を払いに大学に行ったら、強そうな軍人であるリンさんに襲われて、サトラの力が封じられて。でも、俺の異世界主人公の能力のおかげで、サトラの力になれた。そんな出来事だったと覚えている。

 俺としては実は感謝している。

 あれがなければ、サトラに守られてばかりいる自分に自己嫌悪を抱いてしまっていてもおかしくなかった。

 あれのおかげで、俺もサトラを守れるんだと、そういう自信がついたと思う。

 だから、トータルで見たらプラスだ。


 でも、お礼を言うかと言われると別問題なんだよな。

 完全にサトラを殺そうとしてきたしな⋯⋯。


「謝罪はいらないけど、貸し一つってことで。」


『なるほど。』


 リンはニヤリと笑った。

 ちょっとあくどいことを考えていそうな顔だ。

 ひょっとしてミスった?

 どんどん貸しを積み立てられるパターン?


 そいつは嫌だな。

 早めに貸しは取立てよう。


『じゃあ私も貸し一つってことで。』


 黙っていたサトラはいきなりそう言った。

 何やら耳打ちしたらしきナルデがこちらもあくどい顔で離れていくのが見えた。入れ知恵したな?

 うーん。こっちの貸しは高くつきそうな予感。

 間違いなくナルデの方があくどい。


『はい⋯⋯。』


 リンさんもそれに気づいたのか。返事は弱々しいものだった。


『はいはい。突っ立ってても仕方ないし、とりあえず話を聞きに行こう。』


『そうですね。案内しますから、こちらへ。』


 レンさんに言われてリンさんは切り替えたようだった。

 再び凛々しい表情へ戻る。


 レンさんもリンさんもやっぱり一筋縄ではいかない相手のような気がするな。

 ●


 応接室のようなところで、詳しい話を聞くことになった。

 さすが世界の警察のソファ。ふかふかである。


 さて、ここでリンから説明されるのはンガイの森の話だ。


 ウィスコンシン州、リック湖のほとりにある森で、かなり深いが、一応保養地としての利用もあった場所らしい。


 五大湖周辺にダンジョンが湧き出してからは、そういう人も減ったが、最近はダンジョンの入り口が固められ、周辺の安全性が確認されたらしく、少しは出歩く人も増えていた。


 そんな時である。


 ンガイの森で怪しげな人魂めいた炎、それに、不気味な笛の音。さらには巨大な生物の足跡のようなものを見たという報告が入った。


 一件程度なら、見間違いということで処理もできるが、もう何件も降り積もってくると流石に無視はできない。


 仕方なく、その辺りを立ち入り禁止区域に指定し、軍が調査に乗り出した。

 だが、調査隊のほとんどが帰ってこない。

 Lv120ほどの猛者でさえ、遺体すら見つからない。


 どう考えても異常事態。

 おそらくは、高難易度のダンジョンが地上付近まで進出してきたのだろうと思われる。


 これ以上は犠牲を増やすだけだということで、軍最強のレンさんを推す声が上がり、現在彼女が監視しているトライヘキサにも協力させようということになったらしい。


 なんの権利があってサトラの行く末をお前たちが決めてるんだと言いたいところだが、正直、未発見のダンジョンの話は燃える。


 行ってみたい。


『そのおいたを命じた奴には私がたっぷり灸を据えると約束しよう。』


『お手柔らかにお願いします。世界最高の情報屋さん⋯⋯。』


 リンさんは疲れた顔で、そう言った。

 ナルデを止めるような元気はなさそうだ。


 リンさんが中間管理職に見えてきて可哀想に思えてきた。

 おかしいな⋯⋯?


 まあ、頑張ってほしい。

 それとちゃんと貸しは返して欲しい。





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― 新着の感想 ―
[一言] そして今回の件でまた貸しが増えると……給料とか報酬とかでるのかな?
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