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Lv666の褐色美少女を愛でたい  作者: 石化
第三章 ギリシャ

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第百十一話 アテネへ

「そういえば、なんで愛さんの仲間は、ギリシャにいたんですか?」


 アテネへ向かう船の上で俺は尋ねた。


 彼女のホームグラウンドはどう考えても日本だ。

 彼女の仲間というからには、日本にいるのが当然のように思うのだが。


「ああ。二人とも修学旅行に行ってましたから。」


「修学旅行。」


 おうむ返しに返答してしまう。

 学生なのか。それは、なんというか。意外だ。



「二人とも、もう大人なんですけど、留年が多かったですからね。一回くらい行かせてあげようと送り出した時にちょうどあの事件が起こったのです。」


 7年前、か。

 今はギリシャの人々が動き出して、7年前と同じ生活を続けようとして、食い違いが判明して大騒ぎになっているところらしい。

 ヨーロッパは割合ダンジョンの数が少なくて、昔ながらの結びつきも残っている。

 日本のように全域を海で囲まれてどうしようもなくなっている国は少数だ。


 イギリスもドーバー海峡とかあってないようなものだし、ほとんど問題はないと言ってもいい。


 日本さん⋯⋯ 。

 そんな状況なのになんで西日本と東日本に分割されているんですかね。


 まあ、都市に引きこもるしかなくなった中国とかに比べれば全然いいんだろうけど。

 ミクロネシアとかは比べるのも申し訳ないしな。



 中国の方は中華ダンジョンが統一されたから、状況は改善すると思うよ。

 トップが千樹だし、そんなに人を圧迫するような方針は取らないでしょ。

 ⋯⋯ 、千樹は不安かもしれない。

 あの子、英彦山三姉妹の中で一番不安定説あるからな。



 まあ、俺の知ったことではないや。


 とりあえず個々のダンジョンに関してはダンジョンマスターが死んで攻略しやすくなっていると思うので、中国の人々は攻略頑張ってほしい。



 っと、ギリシャの方に話を戻そう。

 時間が動き出して、ギリシャは未曾有の大混乱だ。

 近隣の報道機関などがこぞってギリシャ国内を目指して動いている。


 そんな中、こっそり向かえるのは、やっぱり愛さんの活躍の賜物だ。


 船の手配に、操縦。

 管制されていない港の把握。

 その全てをやってくれていた。

 やっぱりこの人を敵に回してはいけない。


 そう強く実感した。


 現世的な意味でも強くならなくちゃ。


 まあ、サトラが収納しているモンスターの素材を売却すれば、当分はお金に困ることはなさそうだから、金の力で面倒なゴタゴタは避けていく方向で考えようと思う。


 英彦山ダンジョンに入ってから全くもってそういうことをやってなかったからな。

 もっと言うと里帰りしようとしてから一度も素材買取所に行ってない。


 あまりに多くのことがありすぎたから仕方ないよね。


 とはいえここからはそんな急展開の連続じゃないはず。

 まったりとした時間が待っている。そう信じたい。


「到着です。」


 愛さんが停泊させたのは、少し波の荒い岩場だった。


「港は封鎖されているので、ここから上陸してください。」


 正気か?陸まで百メートルくらいあるけど。


「ではお先に。」


 愛さんは海の上を走って行った。


 いやちょっと何その超絶技巧。

 俺、ダンジョン以外だと二分の一の力しか出せないんですけど。


『仁、掴まってて。』


 サトラが俺の体に手を回して横抱きにする。


「頼む。」


『任せて!』


 なんかもうサトラに抱えられるのも慣れたな⋯⋯ 。

 いや、近いしドキドキはするんですけどね。

 サトラが可愛すぎるから仕方ない。


 サトラが踏み込む。


 後ろで船が大きく揺れて、レンさんとナルデが文句を言っている声が聞こえたような気がするけど気のせいだろう。二人はLv200超えているんだし。


 そういえば俺も200は超えてたな⋯⋯ 。


 冷静に抱きかかえられる必要なかったのでは?


 あまりにもサトラの動作が自然すぎて違和感がなかった。



 慣れって怖いね⋯⋯ 。




 ●


 愛さんの探し人はスマホを持って行かなかったそうだ。


 なんでも、連絡が来てとんぼ返りさせられないようにってことらしい。


「二人ともアイドルですから。」


 なるほど?

 知っているのかもな。

 とはいえ7年前にアイドルだったとして、俺が覚えているはずもない、か。


 ダンジョンが生まれ生活が変わって大変だった頃だ。


 その二人も、7年静止していたと聞けば戸惑うだろうな。



「ところで、愛さん、迷わないですね⋯⋯ 。」


「最後にどこにいたかくらい把握しています。今ならナルデさんもいますし。」


「そういえば。」


『ふふん。私の「探求」にかかればそれくらいお茶の子さいさいだよ。何一つとして心配はいらないさ。』


 ナルデのそれはかなりフラグっぽいんだけど、大丈夫かな。


 まあ、彼女がここまで言うんだ。


 信用しよう。


 ⋯⋯ 。



 人混みの全員が大混乱している街で、ナルデの力はほとんど意味を成さず、最終的に、サトラが特徴を聞いて、二人を抱えて来た。



 うん。ナルデも頑張ってたのはわかるから、からかうのはやめておこう。


 真っ赤になっている彼女にこれ以上恥を突きつけるのはよくない。


 俺は慈愛の心で彼女を見た。


『むう。』


 ナルデはむくれてぷいとそっぽを向くのだった。



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