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Lv666の褐色美少女を愛でたい  作者: 石化
第三章 ギリシャ

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第百九話 ダンジョン脱出

 クロノスのダンジョンは、脱出するのも結構な手間だった。

 サトラ以外は全員消耗していたから、ミノタウロスの波状攻撃がきつかった。

 最短距離で来たから、全員掃討していた訳でもないんだよな⋯⋯ 。

 そのおかげでクロノス戦前の消耗が最小限で抑えられたから仕方なかったと思おう。


 とはいえ、一階層上がるごとにlv50も下がっていくから、上がれば上がるだけ楽になっていった。


 ボス倒したら強制的に転移させてくれてもよかったんやでとは思う。


 ひょっとして、もしかしてこのダンジョンのボス、クロノスじゃなかった?


 もっと先があったりした?


 もういいよ。クロノス倒したんだし許してくれ。


 Lv1000の敵とかいないよね?流石にいないはず。10層のことはよく調べてないけど。

 ⋯⋯ うん。気にしないことにしておこう。


 ダンジョンの外に出る。

 日は眩しい。


 一日経ったのか?


 まあ、そのくらいだろう。

 広かったけど、ナルデのナビで最短ルートを進めたからな。


 それにモンスターとの戦闘もそんなに苦戦しなかった。


 他の人の攻略話を何度か聞いたことはあるけど、やっぱりレベル的に無理なものは無理ってことが多い。


 基本的にダンジョン、地球人がクリアできるように作られてないからな⋯⋯ 。

 サトラみたいなイレギュラーでもいなくちゃとてもこうはできない。


「どうにもギリシャの時間停止は解けたようです。」


 調べ物をしていた愛さんが報告してくる。

 よかった。やっぱりクロノスが元凶だったようだ。


『ようやく、私の故郷が、元に戻った⋯⋯ 。』


 ナルデは目に涙をにじませている。

 ずっと一人でなんとかしようとしてきた彼女だ。

 喜びと感慨はひとしおだろう。


『私からお礼と感謝を。なんならしばらく力を貸してもいいわよ?』


 おっとこれは依代に権限した感じのアテナ様だな。


 ナルデと雰囲気が全然違うから戸惑う。


『ゼウス様たちも力を取り戻すでしょうし、問題ないわ。』


「なるほど?」


『知りたいことがあればなんでも答えてあげるわ。ナルデの探求を元に知恵の女神である私が調べればわからないことなんてないわよ?』


 自慢げに胸を張るアテナ様。


「じゃあちょっといいですか?」


『もちろん。』


「サトラの、過去ってわかります?」


『ええもちろん。東京に落ちてきてあなたと行動している。その前はアメリカ軍によって宇宙ダンジョンの攻略に当たらされていた。ここまでが、ナルデの知っている情報。』


「俺もだいたい知ってます。」


 サトラは明言していなかったけど、状況を考えたらそういうことなんだろう。


『知りたいのは、この前よね。』


「はい。」


 そう。どうしてサトラがアメリカ軍に拾われたのか。それまで何をしていたのか。

 アメリカ軍に対する嫌悪感を見るに、アメリカ国民だとは思えない。


 サトラの話す言葉は英語ではなくもっとマイナーな言語だ。


『その辺りの記録は米軍でもほとんど抹消されているかな。私も調べたけど見つけられなかった。』


 レンさんが口を挟む。

 なるほど。

 アメリカ軍の最高戦力としてそれなりに高い地位にあるレンさんが言うのなら、その通りなんだろう。


 それほど秘匿したい何かがあるのか。


『私ならわかるわ。彼女がそれまでどうやって生きてきたのか。』


 ナルデの中に入ったアテナが言う。


 ⋯⋯ すっかり忘れてたけど、それ、ナルデ曰くクロノスが知っているかもしれないって言う情報じゃなかったっけ。いいのか?

 自前でわかっているっぽいけど。

 世界最高の情報屋として虚偽の申告と自力での情報提供はどちらの方がポイントが高いのか。

 判断が分かれるところだ。



『クロノスの権能を回収できたからね。わからなかったこともわかるようになってるの。』


 伏線回収が完璧になった。


 ならいいか。


「教えてくれ。」


『後悔するかもしれないわ?』


「それでも俺は知りたいんです。」


 サトラがあれほど話すのを嫌がる過去。もう忘れてしまった過去。

 そこにサトラがこうなってしまった理由が存在している。


 なら、俺はそれを知りたい。彼女の全てを知りたい。


 そしたら初めてサトラのことを完璧に理解できると思うから。


『想いは変わらないみたいね。』


 アテナ様は仕方ないと言う風に、かぶりを振った。


『わかったわ。話しましょう。』




『サトラが発見されたのは、太平洋の洋上よ。』


 アメリカ沿海警備隊に引き上げられた彼女は、ひどく衰弱していたと言う。

 だが、その体に秘めた力は今と変わらず化け物じみていて、ひどく怖がられてしまう。

 そのまま研究所に収容され、戦闘力を見込まれて宇宙に送り込まれた。


『なんで、彼女がそこにいたのか。それは、ミクロネシアの大量死と関係があるわ。』


 そう。ダンジョンが現れたのと前後して、地球では異変が起こっていた。

 その一つはこのギリシャの時間停止であり、もう一つは、ミクロネシアと呼ばれる島々での大量殺人である。

 まだギリギリ生きていた人工衛星が捉えたその映像は世界中を恐怖させた。



 風光明媚な南の島々が、鮮血で赤く染まっていたのだ。


 そこには死骸が積み重なり、無限と言えるほどにポタポタと血を流していた。


 ダンジョンの話が広まるにつれ、凶暴なモンスターが現れたのだろうと言う話が広まり、訪れる人はいなくなり、人の住まない領域となっていった。

 だが、不思議なのはとても広い範囲でそれが起こっていたこと。

 そして、外傷らしき外傷がなかったことだ。


 ただ、あり得ないものを目にしたような恐怖に引き歪んだ表情を一様に浮かべた皮膚からじんわりと血を流す死体の山。

 その光景は人を狂気に陥れる力があり、俺が見たのもその数日だけだ。

 あとは、徹底的に規制された。


 あれは、本当に、ダンジョンのせい、だったのだろうか。


『あの大量死の理由はサトラの存在を考えに入れると説明できる。』


 アテナは、ゆっくりと続けるのだった。





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[一言] とりあえずレンはいらない
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