第百二話 ステータスを見返そう
地中海の海は、ギリシャが停止しているからなのか、ダンジョンが生まれる前と変わらない姿を保っているらしい。
確かに、海のところにも停止空間が広がっているようだし、そこに入れば停止するってことは、かなりの魚が囚われてるってことになるな。こちらと違って境界線もないわけだし。
そんなことを思いながら地中海を眺めていると、海の上を黒い線が微妙な円を描いているのを見つけた。
あれは⋯⋯ ?
『あれは、時間停止のなかに入った魚が停止して、それが積み重なって見える線だね。』
不思議そうな顔をした俺に気づいたナルデが解説してくれた。
『国の海までこんなに汚すとは。ますます許せない。』
ナルデの怒りが伺える。
普段は飄々としているのに、ギリシャのことになると熱くなるんだな。
結構その辺りは好感が持てる。
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クラーケンが出てくることもなく、無事、クレタ島に到着した。
必要な物資の買い出しを行いつつ、さらなる情報収集を行うらしい。
世界最高の情報屋と、技能で「諜報」を所得している愛さんがいるんだから、俺たちがそちらを気にする必要はないか。
それより、ステータスと持ち物の確認を行ったほうがいいだろう。もちろん買い出しは手伝います。
サトラの収納にたくさん食料を入れておこう。念のために、自分たち用のも買わないとね?
とりあえず、俺はこんな感じだ。
名前 直方仁
Lv 182
職業「異世界主人公(召喚予定なし)」
技能「鑑定」「言語伝達」「威圧耐性」「超回復」「加速」「精神力」「料理」「西国無双」「一心同体」「気配察知」
称号「異世界主人公」
中華ダンジョンを越えてレベルが上がったけど、新しい技能は身に付かなかった。
ほんとただのレベリングダンジョンだったな、あそこ⋯⋯ 。
確か俺、英彦山ダンジョンに入る前のレベル、120とかだった気がするぞ⋯⋯ ?
一気に60も上がってる。
格上扱いの相手とたくさん戦った上に、経験値も美味しかったのが原因だな。
職業補正を乗っければ、レンさんのも合わせてLv455相当みたいだけど、この前の龍鳳みたいに、Lvを参照してくる敵もいるはずだから、安心はできない。なんとかサトラに並びたいが、まだまだだ。
でも、背中は見えてきたように思える。
必ず追いついてみせるからな。
あと、「西国無双」の力が強くなっているのを感じる。ひょっとして、西国って距離加算の概念なのかな。
もしかしたらずっと西に向かって移動しているだけで無限に強くなったりしないだろうか。
⋯⋯ バグ技を見つけてしまったようだ。現代は移動が容易だからな⋯⋯ 。余裕ができたら試してみよう。
一度でも東に行ったらリセットになっちゃいそうだから、そこだけ注意しておこうか。
獲物は変わらず雷切と紅葉刃の二刀流だ。
どちらも特殊能力が強すぎるから、別のに変える必要性は感じない。
一つの武器を極めていくのが、強くなる道だって聞いた。
もし、職業乗り換えシステムとか転職神殿とかが存在するのなら、変えることも視野に入れなければいけないだろうが、ついぞそんな噂は聞いたことがない。
聖剣とかそういう枠の強武器を手に入れるまではこれで十分だろう。
続いて、サトラである。
名前 トライヘキサ
Lv 666
職業「槍使い」
技能「縮地」「槍捌き」「水魔法」「火魔法」「収納」「人柱力」
称号「血槍姫」「魔物の敵」「ダンジョン踏破者」「滅ぼせしもの」「中華ダンジョン最強種」
やはりレベルは固定されているようだ。俺よりもたくさんの手強い敵を倒していたんだから、いかに格下と戦っても経験値が少ないからって、レベルアップしないはずがないんだよなあ。
それでしてないんだから、何か外的な要因があると考えるのが自然だろう。
やはり、血槍姫の称号が怪しいと見た。
そういえば称号の欄をよく見ると、「逃亡者」が消えて、代わりに「中華ダンジョン最強種」が増えてるな。
米軍から追われなくなったことにより逃亡者が消えて、中華統一ダンジョン決定戦で、サトラが一番強いことが証明されたので、「中華ダンジョン最強種」がもらえたのだろう。
最強種ってそんなモンスターみたいにと一瞬腹が立ったけど、よく考えたら、そりゃそうだわ。俺たちは英彦山三姉妹の眷属として戦ったもんな⋯⋯ 。眷属はだいたいモンスター。間違いない。
ところで、このシステム、あの女神が管理していたわけではないのね。
彼女がカヤノヒメに捕まった後も、ちゃんと称号やレベルが反映されている。
ふーむ。疑問だな。
真の黒幕とかいそう。
いなくていいんだけどな⋯⋯ 。
全自動で動くシステムとかであってくれ。
最後にレンさん。
名前 レン ワールド
Lv 201
職業「英雄」
技能「限界突破」「鼓舞」「カリスマ」「炎魔法」「鑑識眼」
称号「女神の加護を受けしもの」「世界を導くもの」「ダンジョン踏破者」
ついに二百の大台を突破している。
例外を除いたら名実ともに世界最強の冒険者はこの人だろう。
ほんと、うちの職業が暴れて申し訳ないです⋯⋯ 。
でも、元のレベル自体も結構肉薄してきたな。
レンさんを抜かす日も近いのかもしれない。
嬉しいような、寂しいような。複雑な感じだ。
とりあえずこんなところかな。大きな変更はないと考えてもいいだろう。




