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転移魔法無双  作者: まるせい


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4/5

第4話 勇者、財宝部屋に転移する


「無事に成功したみたいだな」


 一瞬、身体がふらついたのは魔法が成功したことの他に、魔法で魔力をゴッソリ使ったからだ。


「これが、魔力を消費した疲労か……」


 肉体は疲労していないはずなのだが、頭がフラついてくる。


「それでも、賭けてみる価値はあったな」


 先程まで遠くを飛行していた魔王城が目の前にある。

 俺はステータス画面を開いた。


 名 前:龍河勇輝

 性 別:男

 年 齢:18歳

 称 号:転移者・異世界人・勇者・神の加護を得し者

 体 力:5/5

 魔 力:101/201

 筋 力:5

 精神力:10

 敏捷性:7

 守備力:5

 幸 運:10

 SSポイント(ステータススキルポイント):0

 所有スキル:『転移魔法』


 俺がいきなり魔王城に足を踏み入れることができたのはこの『転移魔法』のおかげだ。

 異世界召喚の特典ということで、最初の段階でもらったポイントを使い自由にカスタマイズすることができた。


 剣聖の称号を得て無双する方法もあったし、賢者の称号を得て無双する方法もあったのだが、これらは得てもすぐに最強になるわけではない。


 チート性能があろうともそれ以上の強敵に遭遇してしまえば詰みだし、初見では見破れないトラブルも多々存在しているはず。

 そうなった時、確実に自分の身を守る方法として、俺は『転移魔法』を選択した。


「1回の転移で魔力消費100はでかい。この世界の神級魔法で消費が112だったからな」


 説明を見ると一撃で街を吹き飛ばせる魔法が神級魔法なので、転移一回の魔力はそれに匹敵しているということ。あまり乱発できないようだ。


「とりあえず、今後はいつでも魔王城に来られるわけだし、一旦帰るとするか……」


 こうしている間にも魔王城は空を飛んでいるようで城に向かっているらしい。


 城では兵士が俺を探しているので、戻って事情を説明する必要があるのだが……。


「それにしても、魔王城の割には門に見張りも立っていないのか?」


 余程攻め込まれない自信があるのか、生き物の気配がない。


「……とりあえず、少し中の様子を見てから戻るとするか?」


 転移魔法はタイムラグなく一瞬で逃げることができる。転移魔法が発動できる条件は目視で確認できた場所までなので、もっと中まで入ればこの先が楽になるかもしれない。


 俺は魔王城に足を踏み入れた。




 柱の影に身を隠しながら移動する。

 魔王城というくらいだから、相当おどろおどろした建物を想像していたのに随分と綺麗な造形をしている。


「もしかすると、割と話が通じるのではないか?」


 魔王がいい奴で人間が醜悪なパターンも想定しておかないといけないと考えながら道を進んでいると……。


『勇者が召喚されたらしいぞ』


『魔王様及び四天王様は人間の状況を探っていて忙しいらしい』


 三又の槍を持つ大型の魔物と二本の剣を持つ巨大な魔物が話をしているのを発見した。

 魔物はこちらに気付くことなく会話を続ける。


『勇者が姿を現した瞬間、襲いかかるって話だろ? 不足の事態に備えて全軍待機しているらしい」


(それで、全然魔物が見当たらなかったのか)


『それにしても、今回の魔王様は用意周到すぎるよな』


『人間風情、まともにぶつかれば俺たちが負けるわけないのにな』


『挙句、俺たちに財宝部屋への通路を守るように命令だろ? こんなところに敵がくるわけないだろうが!』


『確かに、魔王城はこれまで誰も立ち入ったことがない難攻不落の空中要塞だからな』


(もう立ち入ってるんだけどな)


 俺は内心でツッコミを入れながら魔物の会話を聞き続ける。


『あの財宝部屋には勇者が魔王城に到達するために必要なアイテムの他にも、使われたら厄介なアーティファクト級のアイテムが押し込められてるんだろ?』


 魔物の視線の先には階段があり、その奥には巨大な扉が存在していた。


 魔物はこちらに気付くことなく会話を続けているので、俺は柱を移動してそちらへと向かう。


(これは頑丈そうな扉だな)


 おそらく破壊するのは不可能に違いないのだが……。


(鍵穴でかいな)


 巨人が開ける仕様になっているからか、扉がデカければ鍵穴もでかい。


 後ろを見ると魔物がやる気なさそうに雑談をしている。

 いけると思った俺は、扉にある禍々しい模様の部分に足をかけよじ登り、鍵穴から中を覗き込んだ。


(よし、これで条件はクリアした)


『ん?』


『どうした?』


『いや、財宝部屋の前で何かが動いたような?』


『馬鹿いえ、鍵は魔王様が持っているし、何かがいたならわかるから気のせいだろ』


『だな。もしかして疲れてるのかもしれん』


 転移で扉の先に移動した俺は、魔物の声を聞きながらホッとため息を吐くのだった。

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