真実 0
愛しのテアへ――
元気にしているかしら?
きっとそうね、と思いながらペンを取っています。
あなたのことだから、毎日のようにピアノを弾いていると思う。
きっとその音につられて、あなたのお父さんは現れたのじゃないかしら。
そう、あなたがこの手紙を呼んでいるなら、もうお父さんと出会ったのだと思います。
その時にと、モーリッツさんに頼んでおいたから。
本当は……、テアには、私の口から話しておくべきだと迷いました。
だけど、できなかった。
知らない方が、二人共に守ることができる。そう思ったから。
これまでちゃんと、お父さんの名前を教えなくて、ごめんなさい。
テアはそれを一度も聞かなくて、私はそれに甘えていました。
それがちょっと寂しかった……、なんて言ったら罰があたっちゃうわね。
口にはできなかった代わりに、ここに書き残しておきます。
あなたの父親は、ロベルト楽団の団長、ロベルト・ベーレンスです。
それ以外のことは、全部話してきたつもりだから、これ以上の惚気話は必要ないかしら?
とっても優しい人だから、テアにとっても素敵な父親になってくれるはず。
私に新しい世界を見せてくれた人だから、きっとテアのことも、導いてくれるわ。
そこでテアがもっと幸せであるように、祈っています。
二人の幸せを、いつでも、いつまでも、私は、願っています。
テアと、彼がいてくれたから、それだけで、私は幸せだったから。
愛してるわ、テア。
愛しています、あなたを、ロベルト。
二人のことを、誰よりも、愛してる。
カティアより――




