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最弱職のイレギュラー  作者: 華藤丸也近
第2章 俺以外の“転生者”
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第22話 偽装された死

「でも、助け出すとしてどうするつもりよ? この街の衛兵はニルちゃんを血眼になって探しているんでしょう?」

「ああ。だが、あいつは数多くの魔法適性と未知数の魔法の知識と経験を持っている。自棄を起こして暴走する可能性もあるし、魔法で隠れている可能性もある。個人的には後者を選択してくれていると良いんだが……」


 さすがに、暴走しているとは考えにくいけど……俺の時もあるし、絶対にありえないとは言えない。

 でも……ニルが魔族だってバレていて、衛兵が探し回ってるって事は少なくとも街にまだ潜んでいると考えているんだろう。

 だったら、外に逃がさないように正門は警備しているだろうし、衛兵もうろついていて簡単には動き回れないはずだ。

 だったら……ニルはどこにいる? 

 考えろ。ニルは頭が良い。冷静なニルだったら魔法で蹴散らすような真似はしないはずだ。

 だったら、コルトの言ったような後者。隠れている可能性が高い。

 でも、隠れているってどこにだ? 

 魔族と知られていても安全で、かつ見つからないような場所と言ったら?


「とりあえず、あてずっぽうにはなるが探してみるしかない。私は住宅区、お前はなるべく人にバレない方が良いから路地や裏道みたいな人の目が届かないようなところを探してくれ。あとお前は商業区あたりだな」


 コルトの指示の下、俺は路地や裏道などの担当、むっくんは商業区担当、コルトは住宅区を担当する事になった。

 むっくんは人間への擬態能力があるとして……問題は俺だ。

 いくら、人に見つかりにくい路地や裏道を探せと言われても100%誰かに見つからないなんて事はない。

 

「なあ、俺はさすがにこの格好で外を歩き回る訳にはいかないぞ?」

「心配ないわよ。策はあるわ」


 そう言ってむっくんは俺の頭に手を置いた。

 その手から俺の体に何か温かなものが流れ込んでくる感覚がする。

 何だ? 俺は何をされているんだ?


「ハイディング!」


 むっくんがそう唱えると俺の体は足先から瞬時に消えて自分の目からも自分の存在が見えなくなっていた。

 これはまさか、潜伏の魔法?


「相手に見えないようにする闇魔法の潜伏よ。アタシくらいになれば敵感知にもかからず、なおかつ魔波も感じさせないわ。永続的な効果ではないから自動的に失われるものだけど。少なくとも日が暮れるまでは持つはずよ」

「驚いたな。本当に魔波も何も感じない」


 コルトは目を大きく見開いて感心している。

 コルトが何も感じないなんて言うくらいだから、このまま外に出ても問題なさそうだな。


「ありがとうございます。これなら安全に探せそうですね」

「いえいえ。これくらいは当然よ。シロちゃんやコルトちゃんの知り合いなら、アタシのお得意様になる可能性だってあるじゃない?」


 さ、さすがは商売人だ。そこまで考えているなんて。

 でも、それが100%でない事はむっくんの振る舞い方で分かる。

 会った事もないニルの事を本気で心配してくれている。俺達の仲間を自分の仲間であるとも思ってくれている。

 ここまで思える人なんてそうそういない。


「じゃあ、手分けして探すぞ。だが、周りをキョロキョロとあからさまに探すのは怪しまれるから、あくまで自然にな」

「ええ。心得ているわ」

「ああ。大丈夫だ」


 

 コルトから指示を受け、俺達もそれに答える。

 ニルを探して衛兵達はかなり張り詰めた感じになっているはずだ。少しでも怪しい行動をとれば、標的にされるのは俺達かもしれない。

 コルトはそこまで問題にならないにしてもむっくんや俺が怪しまれたら最悪だ。


「話し合いは終わりだ。日が暮れる前にまたここで落ち合おう」

「ええ」

「分かった」


 そう言うとコルトはこの場にあった階段を駆け上がり、部屋を出た。

 どうやらここはどこかの建物の一室のようだ。

 むっくんも俺を抱きかかえて部屋を出る。そこは俺が昨日見た、むっくんの作業部屋に繋がっていた。

 コルトは早々にニル捜索に取り掛かったようで、宿を飛び出して行く。

 

「俺達も行きましょう!」

「ええ……そうね」


 俺も宿を出ようと、むっくんに声を掛けるがさっきまでと違って何だか声に覇気がない。俺の顔を見つめてなんだかソワソワしている。

 何だろう? 何か言いたそうだけど……。


「これはね、コルトちゃんにも話した事なの。でも、確信が持てないから混乱させるような事は言わない方が良いのだけど」

「混乱……って事は、ニルに関係する事ですか?」


 俺が問い掛けるとむっくんは黙って首を縦に振った。

 ニルに関係した何か? それもむっくんが話す事を渋るほどの事って……一体何なんだ?


「昨日、シロちゃんとコルトちゃん、慌てて宿を飛び出して行ったじゃない? 何か、商業区の方で誰かが死んでたっていう話」

「え? はい。帰って来た時にそんな話しましたね」


 何でここでその話が? そういえばむっくん、俺がこの話をした時に何だか不思議そうにしていたけど。


「アタシはこう見えてもアンデットキングだから、死ぬ事に対して誰よりも敏感に感じやすいのよ。人の死の瞬間とか特にね。アタシの場合、この街での人の死に関しては凄く敏感なのよ」

「……確かに、アンデットモンスターってそういうの感じやすいって話を聞いた事ありますね」


 まあ、主にゲームの話なんだが。


「だからね、アタシ。昨日、シロちゃんからその話を聞いた時、おかしいと思ったわ。今まで自分の感覚を疑った事なんてなかったから」

「…………え? まさか」


 むっくんが言おうとしている事は何となく察した。

 いや、でも……そんな。


「ええ。私の感覚では少なくとも、昨日人が死んだような感覚はしなかったわ」


 予想通りの言葉がむっくんから告げられる。

 むっくんの話が正しければ、あの場でパイソンさんは死んでいないって事になる。

 でも死体はあったし、結界も張られてた。死んで時間が経っていたから、結界が感覚を邪魔して感じ取れなかっただけなのかもしれないけど。


「コルトちゃんからは、結界も張られていたし死んで時間が経っているとも話されたわ。けど、アタシのこの力はそんなの関係ないんだもの。どんなに重厚な結界を張っても、人間には効果があってもアタシには通じない。人の死を感じ取れる能力っていうのはそういうものだから」

「じゃ、じゃあ……むっくんの話だと、昨日は誰一人死んでいないって事ですか?」

「ええ。少なくとも、街の中ではね」


 あまりにも信じられない話に、俺は呆然として固まってしまう。


 だとしたら、俺達が見たパイソンさんの死体は!? あれはどう説明する!?

 まさか、パイソンさん以外の死体? パイソンさんだと思うように細工した?

 いや……それだと、そもそものむっくんの証言が崩れてしまう。

 パイソンさんの死体ではない。けれど、他の誰かの死体でもない。

 作り物だとしてもあれほど人間を忠実に再現なんて出来る訳が……内臓の生々しさにまで力を注ぐ必要なんてない。

 仮に作り物だったとして、パイソンさんが死んだように見せかけるにしても殺し方があまりにも残酷過ぎる。

 じゃあ……あれは一体? 何だったんだ!?

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