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アカシック・アーカイブ  作者: 夙多史
全知の公文書編―Admission
33/159

FILE-31 Second Mission

 探偵部としての二回目のミッションは辻斬り犯の捕縛に決定した。


 学院警察と連携し、協力することになった特待生ジェレーターが囮となって犯人を誘き寄せる作戦だ。

 囮は新入生であれば誰でもいいのだが、いざ狙われた時に対応できるのは特待生ジェレーターくらいである。

 とはいえ、その特待生ジェレーターの大半は協力を拒否した。自分が狙われるならその時に返り討ちにしてくれる、そんな連中ばかりだったからだ。

 探偵部の面子以外で残ったのは三人だった。


 第十三位のオレーシャ・チェンベルジー。

 第八位の孫曉燕ソン・シャオイェン

 そして、第四位のグラツィアーノ・カプア。


「正直、六人も協力してくれるとは思わなかった。学院警察を代表して礼を言う」


 ルノワが恭弥たちに頭を下げ、個別の指示は追って出すということで会議は解散となった。


「お、大将たち出てきたぜ」

「すみません、結局気になってしまって……」


 職員棟一階のロビーで土御門と白愛がソファに座って待っていた。二人ともそわそわした様子だったので理由を聞くと、職員棟の居心地が悪いからだそうだ。恭弥にはよくわからない。


「そんで大将、どんな会議をしてたんだ?」

「ああ、それは――」


 外部に情報を漏らすことは避けるように口止めされているが、同じ探偵部の部員である二人には話してもいいだろう。


「――という内容の会議だった」

「あたしたち探偵部の初仕事よ! まあ、ミッションは二回目になるけどね。いきなり危険な仕事だから、九条さんとチャラ男は安全な場所でオペレーター役をやってもらうわ。他の連中に手柄を取られないように万全を期さなきゃね!」


 恭弥とレティシアでざっくり説明すると、土御門と白愛はなにか心当たりがあるように顔を見合わせた。


「辻斬りの犯人が……」

「忍者の女の子……?」


 二人とも「まさか」と言うような表情をしている。


「なにか知っているのか?」

「知ってるっつうか、なあ大将、その女子って『なになにでござる』みたいな喋り方だったりしないか?」

「いや、そこまでは聞いてないが」


 ルノワ警部から伝えられた犯人の情報は外見と使用魔術だけである。


「実はさっきそれっぽい女子に会ったんだよな。ござる口調で、刀を二本差してて、青っぽい黒髪で、結構なかわいこちゃん」


 土御門が思い出しながらその女子生徒の特徴を列挙した。最後のはいらなかった。


「そんな悪い人には見えませんでしたけど」

「だよなぁ。辻斬り犯って人を斬り殺してるんだろ? 確かに二重人格でもなけりゃそんな感じにゃ見えなかったなぁ」


 二人が違うと思うのなら人違いなのかもしれない。それでも一応恭弥は記憶の片隅にだけ残しておくことにした。


「つか、見たっていや幽崎の野郎を見たぜ」

「他の特待生ジェレーターの人たちと一緒に出てきていました。あの人も呼ばれていたのですか?」


 きゅるるるぅ。


 妙な音が緊張した空気の中に響き渡った。

 全員が会話をやめてそちらに振り向く。音の発信源は両手で腹部を抑えているフレリアからだった。


「そんな話よりー、お腹が減ったのでティータイムにしませんか?」

「お嬢様、あなた先程なにをむしゃむしゃしていたかお忘れですか?」

「ビスケットですー」

「緊張感を壊してしまい申し訳ありません。どうぞ、続けてください」

「アレク、どうして謝ってるんですー?」


 ある意味、探偵部の面子で一番の大物はフレリアかもしれなかった。なんの話をしていたのか一撃ですっ飛ばすほどマイペース過ぎる彼女に仕えるのは大変そうだ。


 レティシアが、こほん、と咳払いをする。


「まあいいわ。詳しい話は後よ。まずは探偵部の申請を承認させてこないとね」


 そう言うと、レティシアは職員棟のどこかに部活の申請書類を提出しに行った。



 辻斬り犯の捕縛。

 ミッションスタートは今夜。


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