第84話 俺の家に美少女が2人いる Ⅴ
「わ、私は興味ない。そんな馬鹿馬鹿しいの付き合ってられない」
ですよね。まともなのは俺だけか? ってなるところだった。
「んー……」
カエデは人差し指を自分の口に当てながら、小さく首を傾げると。
「でも……まさやんが、どんな性癖をしているのか、知りたくないっすか? 胸の大きい女の子が好き―とか、年上のお姉さんが好きーとか」
「っ……」
「興味あるっすよね? 一緒にまさやんの秘密を暴きましょうよ」
クソガキ顔で、カエデは由姫の顔を覗き込もうとする。
「ど、どんな女の子が好みかくらい知ってるわよ! だって、生徒会室で自己紹介する時、私に告は……」
そこまで言って、由姫は口をぱくぱくさせると
「あぅ……」
彼女の顔からぼふっと湯気が噴き出した。
「分かってないっすね。男の子の好みっていうのは、コロコロ変わるものなんすよ。男子三日会わざれば、刮目して見よってことわざを知ってるっすよね?」
「知ってるけど」
「あれは男の性癖は三日あればすぐに変わるっていう意味っす。Aちゃんの事が好きだったとしても、数日後にはBちゃんの事が好きになったって事もあるんすよ」
それはそうかもしれないが、ことわざは関係なくね?
「うちの中学校でもあったっす。年上の近所のお姉さんが好きだった憲明くんっていうのがいたっす。純愛が好きで、今度お姉さんにラブレターを送るんだーって」
怪談を語るような口調で、カエデは言う。
「しかし、ゴールデンウィーク明けの学校。彼はNTRでしか興奮出来ない悲しき姿になっていたっす」
なにがあった! 憲明くん! え!? 近所のお姉さん、寝取られちゃった!?
「というわけっす。まさやんがいつまでも、同じ女の子が好きってわけではないっす。だから今こそ、エロ本で好みの女の子を調査する時!」
何故、そこまで熱く語れるんだ。
「好きにしろ。エロ本なんて持ってないしな」
「えー? エロ本を持ってない高校生とかありえないっすよ」
そう言ってカエデは部屋を探索しはじめた。
馬鹿め。こんなこともあろうかと、手は打っておいたのだ。
カエデの言う通り、エロ本はたしかにあった。タイムリープ前の中学の俺が買ったやつがな。
だがそれは全て、父さんの部屋に避難済みだ。
「じゃあまず手始めに。よっと」
カエデは俺のベッドの横にある小型のタンスを横にずらした。
ふふふ。そんなところに何もない。あったとしても、落とした十円玉くらいだ。
「たしか、この辺りだったはず……」
カエデはタンスのあった場所の壁をコンコンと叩く。ん? 何をしているんだ?
「あ。あったっす」
カチッという音がしたかと思うと、五十センチ程度の大きさの隠し扉がギィと音を立てて開いた。




