第83話 俺の家に美少女が2人いる Ⅳ
「な、なにしてるの!」
「まさやんのベッドで遊んでるっす。このベッド、トランポリンみたいに跳ねるんすよねー」
無邪気な笑顔を浮かべたカエデは、更に二、三度跳ねたあと、顔を布団に押し付けると
「あははは! 男の子くさ!」
と言った。
「なにやってんだお前……」
「へへへ。つい、体が勝手に」
カエデはベッドの上で、ちろりと舌を出した。
これも俺の事が好きな女の子のふりというやつだろう。
演技とはいえ、好きでもない男のベッドに顔を埋められるな。役者根性すげぇ。
「誰が勝手に入っていいと言った。すぐ出てけ」
「それは通らないっすよ。この部屋に入っていいと言ったのは、他でもないまさやんっすよ?」
「俺が?」
「勉強会を始める前に、アタシが『触っちゃ駄目なものとかあるっすか?』と訊いた時、まさやんは言いましたよね? 『特にない』と」
カエデは腕組みをしながら、ベッドの上に仁王立ちをし、不敵な笑みを浮かべた。
「つまり、まさやんの部屋のドアも、このベッドも、触れていいってことっす」
入っていいとは言ってねぇよ。つーか、常識的に考えて駄目だろ。
「屁理屈言うな。今すぐベッドからどけ」
「あぁん」
俺が軽くカエデの腰を蹴とばすと、彼女はくねくねした動きをしながら、床に転がった。
「ここが貴方の部屋なの……?」
「まぁ、一応」
「ふ、ふぅん……」
由姫は俺の部屋に入ると、辺りを見渡した。
「意外と片付いているのね」
「もっと散らかってるイメージだったか?」
「うん。それに、私の知ってる男の部屋と殆ど一緒」
「え。有栖川、男子の部屋、入った事あるの!?」
「ないわよ! に、兄さんの部屋と似てるなーって思っただけ」
あぁ、あの兄貴か。
「へー。アイツ、こんな感じの部屋なのか。もっとグラビア写真とか壁に張ってるイメージだったけど」
「『そういうのは、女子受けが悪いんだ』って言ってた」
そういえばあの兄貴、女の子を連れ込みまくってるヤリチン野郎だった。チンコ爆発しねぇかな。
「ベッドと机と本棚と……あと、小型の冷蔵庫があるくらいかな。あと筋トレ道具があるところも、貴方と一緒……」
由姫は眉をきゅっとひそめると、
「やっぱり貴方、中学の頃から女の子を連れ込んで……」
「してないしてない! 筋トレグッズ=ヤリチンみたいな思考やめて!」
というか、未来のお前が細マッチョが好みって言ったから、筋トレしてるんだぞ!
「つーか、女の子を部屋に入れるの、今日が初めてだよ」
「そう……なんだ……」
「あれ? 昔のアタシ、カウントされてない?」
カエデが(´・ω・`)という表情をしていた。
いや、小学校の時はノーカンだろ。
「あんまりジロジロ見ないでくれ。恥ずかしいんだが」
「この前、私の部屋に入ったんだから、イーブンよ、イーブン」
由姫の部屋? あぁ、この前、お見舞いに行った時か。
正直、あの時はそれどころじゃなかったし。正確には部屋の中には入ってないからね?
「さーて、それじゃあ、そろそろ始めるっすか」
カエデは指をポキポキ鳴らすと、なにやらやる気のある表情で言った。
「始めるって何を?」
「男の子の部屋に入ったなら、やる事は一つでしょう。エロ本捜索に決まってるじゃないっすか」
「いやそれ、男子同士でやるヤツ!」
「女子だってやりたいんす! 有栖川さんもやりたいっすよね? ね?」
オイコラ。由姫を巻き込むな。




