第15話 レオルトス王国 内戦終結
ここまで読んでいただきありがとうございます。
あらすじです。
ディオスは、レオルトス王国内戦で裏を引いていたアリストス共和帝国の戦艦飛空艇艦隊を相手にする事になる。ディオスが使った魔法とは?
レオルトス王国 内戦終結
王専用のテントの中でディオスは、フィリティ王の前に、空獄ウィンダロの管理をしていた中佐から聞いた事を話す。
フィリティ王は苦しそうな顔で
「そうですか…。アリストス共和帝国が…」
「陛下…」と側にいる部下が「アリストスは強大な国です。大多数の戦艦飛空艇艦隊を持ち、その規模は…アフーリア大陸全ての戦艦飛空艇を合わせても上です。ここは懐柔策をとっては…」
「懐柔策…」とディオスがその部下を凝視して「無駄でしょう。話では、人質が解放されると国内の事情が大きく変わるのを分かっているからこそ。大艦隊でこの国を爆撃する行動に出ると、そこの指揮官は言っていましたから」
部下はムッと苛立ちながら
「だが、ディオス殿…このままでは、国が蹂躙されるのですよ。そんな最悪な事を避ける為にも、悔しいですが…裏切り者の宰相デオルトとは、温和にした方が無難でしょう」
フィリティは俯き考える。
人質は助けた。
それを諸侯の貴族達にも連絡して、宰相軍から王立軍に加わるという確約は得た。
だが、それで宰相デオルトを倒そうとすると、国がアリストスの戦艦飛空艇の大艦隊によって蹂躙される。
確実に国内の状態が対応出来る前に来るだろう。
宰相デオルトを倒して国が滅ぶか、それとも、懐柔してうやむやにするが…何時かは大変な事態になる。
どう、すればいいか若い王のフィリティには分からない。
そこへ、ディオスが挙手して
「陛下、自分がその大艦隊を止めてみせます」
フィリティは顔を上げる。
周囲の部下は、驚き「無謀だ」「ありえない」『無理だ』とざわめきが広がる。
フィリティはディオスを見つめ
「出来るのか? ディオス殿…」
ディオスは肯き
「手段を問わないなら、幾らでも方法はあります」
部下が「陛下、ダメです。幾ら何でも戦艦飛空艇の大艦隊を止める等、不可能です。出来る所行ではありません」と止めに入るが…。
ディオスは鼻で笑い
「舐められたモノだ。言って置くが、これは確実な事だ。出来るから出来ると言って何が悪い」
フィリティは、ディオスから放たれる重い鬼迫に
「分かった。ディオス殿…アリストスの大艦隊を止めてくれ」
「陛下!」と部下が叫ぶ。
フィリティが息を吸い覚悟を決めた顔で
「いいか、皆の者。これは我がレオルトス存亡の危機だ。今ここで懐柔の策をとっても、何れはアリストスに侵略される。ならば、その禍根を今、ここで断って置くのが後の為だ。皆もディオス殿の実力は知っていよう。七万の軍勢を撤退させ、人質が捕まる攻略不可能な監獄を打ち破り、誰がこれ程の成果をもたらせる? 皆よ。ディオス殿の実力を信じよう。これは王の勅命である」
凜々しく王の如き威厳でフィリティは言葉にした。
若い十代の王は、強気の気迫を放ち、部下達を一蹴させた。
それを見たディオスは、内戦が終われば、この先もこの王なら平和に強く国が続く事だろうと感じた。
ディオスは、テントから出るとクレティアとクリシュナが待っていた。
「腹は決まった。これから向かって来るアリストスの大艦隊を行動不能にさせてくる」
クリシュナが腰に手を当て
「私の時のように台風発生魔法で退却させるの?」
「なぁーに、一つ試したい気象魔法がある。その生け贄になって貰う」
クレティアはクスクス笑い
「かわいそう…」
ディオスはクレティアとクリシュナの肩に手を置き
「二人は、王都の攻略を手伝ってくれ」
クレティアは右腕を上げて
「任せてダーリン。そっちもバンバンやってね」
クリシュナは肯き
「問題ないわ。まあ…気になるとしたら、やり過ぎるアナタの事が一番気がかりね」
ディオスはフッと笑み
「心配するな。上手くやる」
ディオスはクレティアとクリシュナを引き寄せ
「ちょ、ダーリン」
「な、何?」
二人を抱き締めて
「終わったら祝杯だ」
クレティアとクリシュナは呆れ、共にディオスの背中に手を回して
「はいはい、分かったわよダーリン」
「ええ…そうね」
翌日、レオルトス王国は一気に形勢が逆転する。
それまで宰相軍に従っていた諸侯の軍隊は、一斉に宰相軍から離脱、王立軍になり、宰相軍を攻める。
それに合わせて、フィリティのいる王立軍は一斉に王都を目指し、反逆者デオルトの討伐に向かう。その進攻を加わった諸侯の軍隊が後押しする。
王都、宰相がいる王宮で
デオルトが王の執務室で机に座りながら「クソーーー」と机を叩いた。
「アルディル殿!」
デオルトは隣にいる大鎌を持つ乙女を睨む。
彼女がアリストス共和帝国からデオルトを支援するように派遣された者だ。
「何でしょう」とアルディルは淡々と口にする。
「これは、どういう事かな! 人質は脱獄が不可能な監獄に閉じ込めてあると言ったではないか!」
デオルトの声が荒い。
アルディルはフーと息を吐き
「どうやら、完璧ではなかったようですわね」
「ふざけるなぁぁぁぁ 後、ちょっと所でフィリティを倒せたのだぞ! この失態をどう責任を取るつもりだ」
アルディルは、肝の小っちゃい男ね…と見下し視線で
「落ち着いてください。こうなった場合に備えて、本国から艦隊が来ます。それによって方がつくでしょう」
「到着までに王都が、私が殺されたらどうなる!」
デオルトは必死だ。
アルディルは冷静に淡々と
「その前には必ず到着しますから、ご安心を…」
まあ、どうせ…お前が死んでも代わりは幾らでもいるけど…と思っていた。
「クソ、クソ、クソ…」
デオルトは頭を抱えて伏せた。
そんな姿にアルディルは…こんな小さい男だったなんて、はっきり言って失敗ね。
まあいいわ。どうせ…艦隊によってこの国は蹂躙され、一から建国しなければならない。それまでの傀儡には使わせて貰うから…と、考えていた。
ディオスは、別の飛空挺に乗りアリストス共和帝国のある方向の西の海岸へ向かう。
艦橋で正面を見据えるディオスに、ヴァルドの部下リカルドが近づき
「ディオス殿…」
「ん…艦隊の位置が掴めたのですか?」
「はい、今から全速力でその艦隊が迎えられる海岸まで向かいます。到着は二時間程です」
「そうなると…艦隊はどの程度まで接近しているのですか?」
「恐らく、海岸から二十キロ程度には…」
「そうですか。分かりました」
「どこまで我々は接近すれば…」
「海岸付近にいてください。そこから先は自分が行きますので…」
「了解しました」
「ああ…それと、クレティアやクリシュナ…いえ…陛下の部隊の方は?」
「連絡によると、王都の近くに到着したそうです。これから、王都の攻略に入るかと…」
「そうですか…」
ディオスは、脳裏に…王都が落ちるまで時間が掛かるだろう。自分の方が先に終わったら…王都に向かおうと考える。
その理由は、支援者の女の事だ。恐らく、瞬間移動のような魔法が使えるという事は…。
ディオスは、目的の海岸に到着する。飛空艇の艦橋から、遠見の魔法を使って最大望遠で海上を見ると…二十キロ先に、戦闘飛空挺の艦隊が見える。
その数、凡そ三十艦だろう。
途轍もない大艦隊に隣にいて同じ遠見をしているリカルドが
「ディオス殿…なんという数でしょう。あんな大艦隊が…」
リカルドは唾を飲み込む。
ディオスはフッと笑み
「都合がいい。あれ程の大艦隊が行動不能になれば、アリストスも手を引くしかないだろう」
ディオスは、飛空挺の甲板に出て、リカルドが
「ご武運を…」
ディオスは手を上げ、ベクトの瞬間移動で消えた。
ディオスは、ベクトの瞬間移動を駆使して、一分近くでアリストスの大艦隊の中央に来る。
「さて…」とディオスはパンと両手を叩き合わせ気持ちを高めた。
アリストス共和帝国の戦艦飛空挺の大艦隊の旗艦では、あのバランの街を爆撃しようとした戦艦飛空艇の艦隊の艦長がいた。
艦橋で艦長は双眼鏡を片手に先にあるレオルトス王国を見つめる。
そこに同じく士官していた者が近付き
「何をそんなに見ているのですか?」
「いや…またしてもこのような事態に巻き込まれたと思ってな」
「艦長、これはあの時のような極秘任務ではありません。正式な本国の命令です。ですから…」
「だがな…他国を侵略しようなど…。良い気分ではない」
「これは侵略ではありません。支援です。現レオルトスを治める宰相殿の正式な申し出です」
「言葉を変えた侵略には、変わりない」
「艦長…」
「なんだろう。もしかしたら、また…あの魔導士が来てとんでもない事になるかもなぁ…と期待がある」
「艦長、あの時は偶然です。単騎で気象をコントロールする魔導士なんて存在する筈がありません」
「分からんぞ。世の中は広い。そういう…ん」
艦長は双眼鏡に、人影を捉えた。その人影は先頭を行く戦艦飛空艇の頂上にいた。
艦長は青ざめる。
「まさか…」
ディオスは、戦艦飛空挺の大艦隊の先頭にある戦艦飛空挺の上に来た。
そして、右手を掲げ
「さあ…氷河に凍り付いて貰おう」
ディオスを中心として幾つもの魔法陣が重なり魔法陣の球体を形成する。
「大氷流降臨魔法」
”ダウンフォール・アイス・タイフーン”
球体の魔法陣から光りの筋が空に昇った。
三十艦の大艦隊の周囲を怪しい積乱雲の雲が包み、巨大な台風の目のような状態を形成する。
艦隊旗艦の艦橋では、士官達が
「艦長大変です。艦の風石の魔力が異常な数値を示しています!」
「他の艦達も同様に風石の魔力異常に襲われています!」
艦長は、魔法を発動させたディオスを睨み
「やりおった!」
と、驚きの声を漏らす。
三十艦の遙か上空、大気と宇宙を隔てる間にある-50度以上の大寒波が、大艦隊の頭上から叩き落ちる。
三十艦が一斉に大寒波に圧されて、降下を始める。
艦橋では
「風石の魔力異常で、浮力が維持できません!」
「艦外の気温。ウソだろう…。-50度です。外に出れば一瞬で氷になります!」
浮力を奪われ、落ちる艦。艦長は
「全員、対ショック体勢で構えろーーーー」
三十艦は浮力を失い、海上に着水、その後…空から降臨する大寒波が海上を一瞬で凍結させ、着水した艦達を氷に呑み込む。
三十艦全てが寒波と氷に飲まれ、そこに艦隊を呑み込んだ氷原が誕生した。
「う…」と旗艦の艦長は外を見つめ、完全に氷に埋め尽くされた艦の状態に項垂れ
「他の艦の状態は?」
士官の一人が
「現在、全艦から氷に閉じ込められたとして、救難信号が発せられています」
「分かった。本国に連絡しろ…」
「何と…」
「そのまま、ありのままをだ」
ディオスは艦隊が埋まる氷原の上に浮かび、満足そうな笑みで
「完成度も、規模も申し分ないな」
ご満悦で、ベクトの瞬間移動を使って戻る。
海岸にいる乗ってきた飛空挺の甲板では、リカルドをその他の部下が、海上先にある氷原を目にして呆然としている。
そこへディオスが現れ
「ふぅ…終わった。どうですかな…?」
と、リカルド達に尋ねると、リカルド達は驚愕の視線でディオスを見つめるだけだ。
ディオスはんん…と唸り
「すみませんが。王都へ向かって頂きたい。クリシュナとクレティアの手伝いがしたい」
「はぁ…分かりました」
リカルドは、ただ驚愕するだけしか出来なかった。
王都、王宮の王執務室では、デオルトがソワソワしながら、部屋の隅から隅へ行ったり来たりしている。
広いホールのような執務室を行き交う様を目の前にするアルディルは「はぁ…」とため息を漏らし
「少し、落ち着かれては、どうですか…」
デオルトは立ち止まり
「落ち着いていられるか! ワシの…この国の王となる野望が潰えるかもしれんのだぞ」
苛立つデオルトにアルディルは頭を振り
「なんて、情けない男…」
と小声でポツリ漏らす。
「何か言ったか」
デオルトが聞いた。どうやら、しっかり伝わっていないらしいので
「いいえ、艦隊の到着が待ち遠しいなぁ…と」
「そ、そうか…」
誤魔化した。
デオルトが苛立ち部屋を歩いたり止まったりして
「おい。まだ」
アルディルの腰にある魔導通信機のベルがなる。
「はい…」とアルディルは通信機を取ると、通信の内容を慎重に聞いて
「ええ…そう。分かりました」
「どうした!」とデオルトが焦って尋ねる。
「艦隊は」
「艦隊は来ない」
別の方から声がする。その場所は部屋の中心にある王の執務机からだ。
そこのイスに悠然と大胆不敵にディオスが座っていた。
ディオスにアルディルは警戒の視線を向け、デオルトは
「キサマは、何だ!」
と、ディオスを指さす。
ディオスは鼻で笑い。
「そうですな。王立軍を援護する為に艦隊を行動不能にした者です」
「な、なんだとぉーーーー」
デオルトは唸る。
ディオスは、アルディルを見つめる。
アルディルもまた、ディオスを見つめる。
二人は同時にお互いの中にある渦を捉える。
ディオスはフッと笑みを向け、アルディルはディオスを睨む。
「キサマ! どこから入った!」
デオルトがウルサく叫ぶ。
「はぁ…」とディオスはため息を漏らし「うるさい」
”ウインド・ウェイブ”
風の魔法を唱え、突風でデオルトを吹き飛ばし、「ゴフ」とデオルトは壁に衝突して項垂れて黙る。
静かになった所でディオスは、アルディルに
「お前が、アリストス共和帝国の支援者か…」
アルディルはディオスを警戒で睨み
「だとしたら、どうするつもり…?」
「動いて貰っては困るので、ここで足止めをする」
「へぇ…」
ディオスとアルディルは睨み合う。どちらが先手を打つか、それとも…ただ、足止めをするか…二人の間に様々な思惑が交差する。そこへアルディルの通信機が鳴り
「はい…」とアルディルは取ると「はい。はい…。了解しました」とアルディルは通信機を閉じディオスに持っている大鎌を向け
「命拾いしたわね。今度まみえた場合は、覚悟しなさい」
「ああ…分かった」とディオスは返事を返す。
アルディルは壁で項垂れるデオルトに
「デオルト様。申し訳ありませんが…私は撤退します。後は、ご自分でお解決してください」
デオルトは立ち上がり手を伸ばして
「待て、待ってくれーーー」
「では、ごきげんよう」
アルディルは大鎌で円を切ると、そこの空間が切れてアルディルを呑み込み瞬間移動して消えた。
デオルトは膝を崩して項垂れる。
その姿を滑稽だなという視線でディオスは見つめる。
デオルトは、ハッと顔を上げディオスを見つめて駆け付け
「頼む! ワシを逃がしてくれ!」
「はぁ?」とディオスは驚きと呆れで眉間が寄る。
「ワシを逃がしてくれたなら、望みの額の報酬を用意する」
ディオスは「フ…」と息を吐き
「オレの話を聞いていなかったのか? オレは王立軍側だぞ」
「いいか、ワシはこの国で一番の宰相となった男だぞ。そんな凄い男がこんな所で死んで良いはずがない。それは、後々にこの国の損失となる。だから」
フッとディオスは嘲笑い
「分かった分かった」
デオルトは明るい顔をする。理解したと思ったのだろう。だが…。
ディオスはイスから立ち上がりデオルトを見下しながら
「いいか良く聞け、オレもお前も、タダの人だ。その価値も値段も全く同じだ。平等だ。故にお前にもオレにもそんな国に損害を与えるような掛け値さえない。分かるな」
ディオスは、ドンと机に両手を置いてデオルトに気迫の篭もった顔を寄せ
「これは、お前が起こしたツケだ。お前がそれ程の逸材なら、こんな事には成らなかった。いいや…成るはずがない。だが、成った。つまり、お前はここまでの男だったのだ。それだけ、ただ…それだけだ」
「ワシは宰相だぞ!」
「元な…いいや、今は裏切り者のクソ野郎だ」
「頼む! ワシを助けてくれ」
ディオスの胸ぐらに掴み掛かり乞う。
「オレは、お前を殺さない。ただ…ここで、王立軍がお前を捕まえに来るのを待っているだけだ。お前の処分は王立軍が決める」
「うああああああああ」
デオルトは、発狂してディオスから一歩離れた次に腰にある魔導銃を取り出し、ディオスに向かって発砲する。
火炎の弾丸がディオスに迫る。だが、弾丸がディオスに触れた瞬間、別の方向へ散らばる。ディオスはレド・ゾルの魔法を纏い弾丸を散らせる。
「あああああ、ああああぁぁぁぁぁ」
デオルトは、弾丸を連射するもその全てはディオスに当たらず逸れた。
魔導銃は全ての弾丸が発射し尽くされカチカチと空の音を鳴らし、デオルトはその場にへたり座り
「おああああああああ」
伏せて大泣きする。
それは自分の終わりを嘆いて、後悔する姿だ。
それが数十分続くと、ズンズンと王の執務室に震動が伝わる。
どうやら、王立軍がこの王宮まで迫っているようだ。
ワアアアアアアという掛け声も壁伝いに聞こえる。
終わりが近くなって来たとディオスは感じていると、泣き叫いていたデオルトが顔を上げ、涙で崩れた顔でディオスを見つめ
「頼みがある」
「何だ。自死の手伝いはしないぞ」
「妻と子がいる」
「ああ…で」
「その者達だけは、助けてくれ」
ディオスはビックと体を震わせ
「何処にいる」
「国の北の海岸、ホルボットという街の近くにある隠れ城にいる。二人だけは、この国から逃がしてくれ」
「逃がした後に、頼る所はあるのか?」
「妻の実家が、アーリシア大陸の隣、ユグラシア大陸のバルナハ国にある。そこの貴族が妻の実家だ。妻の実家に逃がして欲しい」
ディオスはデオルトに近付き跪いて、デオルトの肩に手を置き
「不肖、ディオス・グレンテル。確かにその命を受けた。必ず、妻を子をその国の実家まで届けよう」
「感謝するディオス・グレンテル殿。これでワシは、潔く、う」
ズッとデオルトの腹部から大鎌の切っ先が飛び出る。
ディオスはデオルトの背後にいる貫いた大鎌の主を睨む。アルディルだ。
「ごめんなさい。やっぱりアナタは生きて王立軍側に渡せませんので、死んでください」
ディオスはエンテマイトの高震動を纏い、一閃をアルディルに向けるも、アルディスは素早く大鎌を抜き、空間を切る瞬間移動で消えた。
デオルトは倒れ血の海が広がる。
ディオスは脈を取るも絶命していた。
部屋の壁に掛かっている大布を取り出し、そっとデオルトに被せながら目を閉じさせた。
その直ぐに、扉が破られそこから、ヴォルドとクレティア、クリシュナの三人と数名の王立軍の兵士達が現れ
「裏切り者、デオルト! 覚悟ーーー」
ヴァルドが雄叫ぶも、ディオス以外誰もいない状況にキョトンとして
「でぃ、ディオス殿…なぜ、ここに?」
クレティアがディオスの元に来て
「先に突入しているなら連絡してよダーリン」
クリシュナも近くに来て
「宰相デオルトは?」
ディオスは布を被せた遺体を指さし
「ここだ。最後は支援者の裏切りにあって殺された」
クレティアはその布を捲り、死んでいるデオルトを確認すると
「はぁ…裏切り者は、最後に裏切られて死んだのか…。当然の報いかもしれないわね」
と、呟く口調は何処か悲しげだった。
こうして、二年に及ぶレオルトス王国の内戦は、終結した。
奪還された王都では、王宮のベランダから王フィリティが民衆に向けて言葉を発し、民衆が歓喜に叫び、フィリティ王、バンザーイと口にしていた。
戻ってきた王座にフィリティが座り、力を尽くしてくれた部下達を前に
「皆の者、私は皆の尽力によって再びここに帰還する事が出来た感謝する」
労いの言葉を口にする。
それに部下達は、畏まり跪いていた。その中にクレティアもいた。
その様子を入口の角に隠れて見つめるディオス、それにクリシュナが
「どうするつもりなの?」
と、尋ねた次にディオスは「行くぞ」とその場を後にした。
この数時間前、ディオスはクレティアに
「クレティア…お前の好きにしろ」
「え、どういう事? ダーリン」
「この国は平静を取り戻した。クレティアはこの国の剣聖だ」
クレティアは複雑な顔をして…
「ダーリンはどうして欲しい」
ディオスは苦しそうな顔でクレティアの頬に手を伸ばし撫でながら
「……来て欲しい。だが、それはオレのわがままだ。だから…」
「剣聖クレティアーノ・ヴァンス・ウォルトよ」
王座でフィリティがクレティアに呼びかける。
「は、陛下…」
「今回の事は、汝が助力を導いてくれなければ、無理だった。感謝する。褒美を取らせたい。何なりと言え」
クレティアは暫し迷った後
「陛下、アタシは…行きたい所があります」
フィリティはフッと笑み
「そうか…分かった。汝は我が国の剣聖だ。国の為に尽くして欲しいが…そうだな。褒美に自由を与える。何処へでも行くがいい」
「ありがとうございます陛下!」
ディオスとクリシュナは飛空艇の空港にいた。
一隻の飛空艇がその滑走路に下りていた。オルディナイトの飛空艇である。
ディオスが連絡を取って帰還に呼び寄せたのだ。
その飛空艇へ向かう途中、クリシュナが
「本当にいいの?」
ディオスは無言で、静かに飛空艇へ向かう。その背中に
「ダーリン」
クレティアが後ろから呼びかけた。ディオスは止まり後ろを振り向き
「やっほーーーい」とディオスにクレティアが抱き付いた。
「お待たせダーリン。さあ、帰ろう」
ディオスはクレティアを抱き締め
「ああ…そうだな。帰ろう」
クリシュナはホッとした顔をする。
「ディオス殿」そこへフィリティが声を掛ける。
その隣には護衛としてヴォルドとリカルドに部下達がいる。
フィリティはディオスに近付き
「この度の汝に対する功績に表彰と褒美が与えられない代わりに、剣聖クレティアーノを貴方へ。どうか…私の剣の師匠をよろしくお願いします」
クレティアはディオスから離れ、ディオスはフィリティにお辞儀して
「陛下、自分は何時でもクレティアとクリシュナと共に国の危機に、助力に参ります。ですが、その時、国の危機が貴方様が原因でない事を」
「分かっています」とフィリティは肯き微笑む。
「まあ、その心配はしておりませんが…」とディオスも微笑む。
ヴァルドがディオスに
「ディオス殿、暴れ馬のような妹でありますが。末永く可愛がってください」
「義兄殿。国の状態が落ち着いたらご連絡ください。三人でクレティアの父母達のお墓参りに行きたいと思います」
「その時は大歓迎致しますぞ」
ヴァルドとディオスは固く握手を交わす。
ヴァルドがクレティアに
「クレティア! お前は直ぐに武器を欲しがるクセがある。それでディオス殿を困らせるな! いいな!」
釘を刺すヴァルドにクレティアは、ひゅ~ひゅーと鳴らない口笛をして誤魔化す。
ディオスとクレティアにクリシュナの三人はフィリティ達一団に手をに振りながら飛空艇へ向かい、その三人に向けてフィリティ達も手を振って見送った。
ディオス達を乗せた飛空艇は浮上して、アーリシア大陸へ向かうが…。
飛空艇の船長にディオスが
「船長、行って欲しい場所がある」
「はぁ…かまいませんが…」
そこにクレティアが
「え、何処に行くのダーリン?」
ディオスは神妙な面持ちで
「クレティア。約束がある。これだけは見逃して欲しい」
ディオスはデオルトと約束した妻子を逃がす事を話すと、クレティアは呆れ
「もう…ダーリン。何て事を約束したのよ」
「裏切り者だったヤツが、最後に発した本心だ。オレはそれを見過ごせない」
そこにクリシュナが来て、クレティアが
「ねぇクリシュナ、知ってたダーリンが」
それを聞いたクリシュナはフゥ…とため息を吐き
「はいはい。分かりました。私はつき合います。クレティアは?」
「まあ…そうだね。デオルトには罪はあるかもしれないけど、その家族には罪はないかもね」
ディオスは肯き
「では、向かうとしよう。船長、お願いします」
「了解しました。進路、北海岸、ボルボットへ」と船長は進路を向けた。
「あ、そうそう」とクリシュナが「約束通り、事態が終わったから祝杯を挙げない?」
「そうしよう。ダーリン!」とクレティアはディオスの手を取り引っ張る。
「ああ…展望席へ行こうか」
と、ディオスはクレティアとクリシュナに連れられ、祝杯をする為に展望室へ向かうのであった。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
アナタに幸せが訪れますように…
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