幽玄の王 第94話 緊急事態 その1
次話を読んでいただきありがとうございます。
ダンジョンの意味、そして、覇遵の復活、それぞれが繋がり始めて、レイ達は…
レイ達は小宮から事情を聞いて帰る途中だ。
車両に乗るレイ達に小宮が
「レイ、すまねぇ…オレ達がどうにかできる問題じゃあねぇ。お前達に任せるしか…」
レイは微笑み
「はい。小宮さん。ありがとうございます」
小宮は微笑み
「良いって事よ。お前の亡き親父さんからも…よろしくって頼まれているしな」
レイは肯き
「本当に、何時も…色々とありがとうございます。アレスおじさん」
小宮は久しぶりにレイが小さい頃に呼んでいた名を言われて嬉しげに
「また、何か相談したい事があったら来なよ。レイ!」
「はい」とレイ達は出発した。
それを見送る小宮と妻の花奈が
「あの子なら…きっと」
夫の小宮も肯き
「ああ…やってくれるさ」
◇◇◇◇◇
レイ達を乗せた大型の車両は急いでレイの家があるマンションへ向かう。
目的は、ドミネーターのグラファラスとオルフェウスだ。
レイ達が乗る車両は、VIPを乗せる用の大型高級車だ。
その席でディオスと息子のティリオは隣り合わせで座って二人だけで話し合っている。
「ティリオ、この場合は」
「父さん、ここは…ここで」
「なら、ここは?」
「そこは、そこで補える」
と、二人して端末を操作して何かの設計をしている。
おそらく、外と内から探すためのシステムを構築しているのだ。
ジェインとオウガにルリもいて、ルリの隣にレイが座っている。
ジェインが
「まさか…こんな事になるなんて」
オウガは
「運が良いのか…対処する方法が…」
ルリが
「聖帝様、一つ…聞いてよろしいでしょうか?」
ディオスが端末から顔を上げて
「なんだい?」
ルリが真剣な顔で
「ディオス様は、覇遵が復活すると…言って、この話を…」
ディオスとティリオはルリを見つめて、ティリオが
「ボクは、これと似たシステムを知っている。そして、それが…関係していると確信している」
ディオスが
「あの四人、ミカボシ、スクナ、アテルイ、ハジュンが関わっているなら…当然だ」
ルリが
「ディオス様が、ゴーストトリガー・プロジェクト…という存在を追ってコーレル時空まで来た事は知っています。そして…レイ様や…シロッコ様、ジン様のような事が起こり…」
ディオスが
「その全てが、裏で糸を引いている。これはカンではない、確信だ。覇遵の復活がヤツ等の目的だ」
レイが不安で外を見ると…「んん?」と声を漏らした。
隣にいるルリが
「どうしたのです…え?」
ジェインもオウガも外を見て
「はぁ? なんだ。この数の宇宙戦艦は?」
と、ジェインが驚きの声を漏らす。
レイ達がいる惑星の空から膨大な数の宇宙戦艦や時空戦艦の艦隊が降りて来る。
それは、惑星の空を覆い尽くす程の幾千億もの時空戦艦と宇宙戦艦だ。
そして、レイ達が乗っている車両の両脇に武装した人型機動兵器、全長15メートルのマキナ達の部隊が包囲する。
レイ達の乗る車両の上にも飛行するマキナ部隊が覆い被さる。
そして、レイ達が乗る車両にある端末が緊急事態の回線を開き、緊急事態の放送を始める。
そこに出て来たキャスターが伝える。
「現在、コーレル時空には…コーレル時空に対して…最悪の事態を起こす勢力が入り混んでいる可能性があります。これに対して、コーレル時空の各星間国家、お呼び、銀河連邦国家により評議会は、コーレル時空に緊急事態宣言を発動し、コーレル時空にいる全てのソルジャーであるSランクからDランクまでの最上位から最下位のソルジャーに、緊急招集命令を発動しました」
その放送は、コーレル時空が…戦闘態勢、戒厳令下に入ったと言う緊急放送だった。
◇◇◇◇◇
レイ達を乗せた車両が、レイの自宅があるマンションに到着すると、マキナ部隊がレイのマンションを完全包囲していた。
レイが車両から降りると、部隊の隊長が現れて
「レイ・フィリックス・神崎様ですね」
と、敬礼する。
レイが
「どういう事ですか?」
隊長が
「貴方を保護せよ…と」
レイが顔を引きつらせて「ええ…」と
ディオスが来て隊長に
「事情の説明を」
そこへ事務次官の男性が来て
「聖帝ディオス様ですね。一緒に行動しているのは分かっていましたので…ご到着を待っていました」
と、告げて持っていたアタッシュを開き
「ディオス様。コーレル時空と超越存在の連合で交わされている協定にあります。非常事態救援の申請をお願いしたいのです」
「えええ!」とディオスは驚き、事務次官の男性が差し向けた端末を手にすると、そこにはコーレル時空全ての評議会委員達のサインが入った契約データがあった。
事務次官の男性が
「どうか、この事態の解決に…聖帝ディオス様のお力をお貸しください」
と、頭を下げる。
「ええ…」とディオスは驚愕する。
ルリが
「ちょっと待ってください! こんな事態! 横暴です」
そこへ別の車両、ギルド協会の会長ゴウと鵜飼が乗った車が来て、ゴウ会長が
「この事態、急ぎ過ぎではないかね」
鵜飼が
「越権行為が過ぎると思います」
隊長が厳しい顔で
「今まで、ソルジャーの領分という事で、甘くしていたが…今回は、もう…限度です。シロッコ殿、ジン殿の誘拐、それ以前に…ソルジャー病の重症を防げなかった事、今の今までソルジャーという立場を重んじていたからこそ、傍観していましたが…」
事務次官の男性が
「もし、このまま…レイ様まで…失うとなったら…コーレル時空は二百年前の悲劇を繰り返すだけです。ご理解を」
「兄さん」と妹のスイの声がして、レイがそちらを向くと、隊員達に保護される母アカネと姉のアスカに妹のスイの姿があった。
隊長が
「ご家族も…保護しております。一緒に…」
ディオスが
「いやいや、ちょっとこれは…ゴウ会長の言う通り、急ぎ過ぎです。もう少し」
と告げていると、レイ達が乗ってきた車両の影から、アテルイとハジュンの二人が姿を見せた。
隊長が「戦闘態勢!」と叫ぶ。
一瞬で、その場が争いに変わった。
アテルイは、レイの家族へ飛ぶ。
ハジュンは、曼荼羅の結界を構築して、レイ達が乗ってきた車両を爆発させた。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
アナタに幸せが訪れますように…
次回 緊急事態 その2




