表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マシューと《七つの秘宝》  作者: ブラック・ペッパー
第6章 その正義は誰がために
220/234

第22話 面識がある

 読んでくださりありがとうございます。5人はテーベへ到着しました。


――

テーベ

――


 ゴンドラがゆっくりと地面に下ろされる。マシューとレイモンドにとって見慣れた景色が窓から見える。テーベへ帰って来たのだ。


 かつて住んでいた故郷ではあるが、マシューたちがこの田舎町を出たのは最初の出発が初めてでありこうして帰ってくるのはなんだかむず痒い思いがするのだ。


 ゴンドラが完全に地面に下ろされたのを確認した5人は扉を開けて外へ出た。澄んだ空気が5人を包み込む。懐かしい故郷の香りをレイモンドは思い切り吸い込んで満足そうに微笑みを浮かべた。役目を終えた犬鷲たちはアクィラへ戻るため再び思い切り羽ばたき飛び去っていった。その姿を5人は微笑みを浮かべながら見送ったのである。


「……よし、早速地下室へ案内してもらってもいいかい?」


 ゴンドラから出て最初に口を開いたのはニコラである。どうやらかなりマシューの家の地下室が気になっているようだ。マシューはニコラに答える代わりにレイモンドの方へ視線を向けた。それは地下室へ行く前にレイモンドにはやりたいことがあるのではないかというマシューの思いからである。


「その前に俺の家に寄らせてくれ。せっかくだから母ちゃんに会っておきたいんだ」


「ああ、そうか。確かにそれはそうだな」


「悪いね。それじゃあまず俺の家に行こう。案内するよ」


 こうしてレイモンドを先頭にして5人は歩き始めた。ふと、マシューはニコラの様子を伺った。彼は何かを思い出しているかのような表情をしていたのだ。以前ここへ来たことがあったのだろうか。


 そのことを尋ねようか迷っていると先頭を歩くレイモンドがその歩みを止めた。見上げるとそこはレイモンドの家の前である。聞くタイミングを逃したが、特に気にはしない。急いで確かめるようなことでも無いだろう。そう思ってマシューは自分の家へと入っていくレイモンドに続いて家へと足を踏み入れた。


「うんうん、やっぱり自分の家は良いな」


 久しぶりの自分の家にレイモンドは嬉しそうである。この家はマシューも3年ほど滞在していたこともあって同じように嬉しく思っていた。そしてニコラは何かを確かめるように周囲を見渡していた。


「……レイモンド、この家に君と君の家族が住んでいたのはいつからだい?」


「……? 俺が生まれてからずっとこの家に住んでるぜ?」


「……君のお母さんの名前は何て言うんだい?」


「母ちゃんの名前?」


 ニコラは変なことを気にしているようだ。その表情は真剣であり冗談を言っているようには見えない。レイモンドが怪訝な表情をしたその時、家の奥で作業をしていたハンナが帰ってきた。突然の来客にやや戸惑っていたようだがレイモンドを見つけると安心して優しい微笑みを浮かべた。


「なんだい、帰って来たのかい」


「ただいま。近くまで来たから寄ってみたんだ」


「そうかい。……ふふ、なんだか頼もしく見えるね」


 ハンナはそう言って優しく笑っていた。ハンナからすればレイモンドはほんの一月前までは家で一緒に過ごしていた息子である。そんな息子が一回りも二回りも頼もしくなって帰ってきたとなればそれはそれは嬉しいことだろう。


 そしてハンナはレイモンドの近くにいる人を順番にじっと見始めた。……と言ってもマシュー以外知らないのでどんな人物か見ているだけに過ぎない。……はずであった。


「……あら? もしかして、……そこにいるのはニコラかい?」


「お久しぶりです」


 ニコラはそう言って頭を下げた。ハンナは驚きの表情を浮かべていたがそれ以上にマシューとレイモンドは驚いていた。どうやらハンナとニコラは面識があったようである。


「……え? ……ニコラを知っているの?」


「そりゃ知ってるよ。あんたは覚えてないかもしれないけど、ニコラは昔この家に何日か泊まったことがあるんだよ。まあ、それも10年以上も前の話だけどね」


「ええ、その通りです。あの時はお世話になりました」


 ニコラは優しく微笑みを浮かべハンナは懐かしそうに笑っている。どうやらニコラがテーベに滞在していたことがあると言うのは事実のようである。それがどれくらい昔の話なのかは分からないがマシューの記憶にニコラらしき人物がいないために、恐らくマシューが産まれる前後の話なのだろう。


 そんな話があるものなのかとマシューは感心したように小さく何度も頷いていた。……そしてマシューは突然ある可能性に気が付いたのだ。マシューが産まれる前後の時期にテーベへ来ていたのならばマシューが知らないことも知っている可能性があるのだ。


「……ニコラ、もしや俺の父さんのことも知っているのか?」


「……レイモンドの親父さんの名前はリチャードだったな。ならばマシュー君の親父さんの名前はケヴィンさん。……だろう?」


「…………」


 マシューは衝撃のあまり口を開けたまま動かすことができず、ただ瞬きだけが無数に増えた。マシューは父のことが知りたかったのだ。父がなぜ聖騎士に殺されねばならなかったのか。父は何をしようとしていたのか。それが知りたくてこの田舎町を出たのだ。


 それに対する答えを知っているかもしれない人物は案外近くにいたのである。ニコラは衝撃のあまり声を出せずにいるマシューを見て肯定と取り、優しい微笑みを浮かべた。


「何となく、そんな気はしていたよ。……初めて会った時からね。それじゃあ少し昔の話をしようか」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ