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マシューと《七つの秘宝》  作者: ブラック・ペッパー
第6章 その正義は誰がために
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第14話 簡単に騙される

 読んでくださりありがとうございます。残念ながら現実です。


 静かな空間にゆっくりとした足音が響いてくる。ガブリエルは数段の階段を降りマシューたちへ歩み寄ってきたのだ。その間ずっとガブリエルはニヤリと笑っていた。何を考えているのかは分からない。ただただ不気味な表情である。


「組織にとって裏切り者は相応の報いを受けるべきだ。……そうは思わないかい?」


 ニヤリとした表情のままガブリエルはこちらへ歩み寄り、ニコラをまっすぐ見据えそう言った。その目は全く笑っておらず、その表情からは怒りが感じ取れた。ガブリエルの言う裏切り者とはもちろんアンガスのことである。ガブリエルはこの場所で誰にも見られることなくアンガスに報いを与えていたのだ。


「……裏切り者か。あなたがこの世界を裏切っていることはどう説明するつもりなんだ」


「ふむ、見解の相違があるようだ。私は今までこの世界を裏切ったことなどひとつもない。どうせ勝てない戦い。むしろ無闇に戦いを仕掛ける方が裏切りと言えよう。……まあ、こいつを友にするような人間には何を言っても無駄か」


 ガブリエルは呆れたかのように肩をすくめてみせた。騎士団と名乗り帝国を守るために日々戦う騎士でありながら、帝国へ送り込まれるモンスターを時に野放しにする。神聖の騎士団はそんな組織であり、騎士団長であるガブリエルはそんな組織の騎士団長を務めているのだ。見解の相違があるのは当たり前である。


「……なるほど、あなたの言う通り見解の相違があるようだな」


「そのようだな。……さて、せっかく試練の台座まで来てもらったんだ。騎士団長として何も知らない君たちに試練を与えるのも面白い」


「⁉︎」


 マシューたちは全員揃って目を大きく見開いた。それを見てガブリエルは満足そうに下卑た笑みを浮かべてアンガスが磔にされている後ろの壁を親指で示した。


 【暗視クリア】では細かくは見えなかったがどうやらアンガスが磔にされている壁は祭壇のようになっており、台座の上には何かペンダントのようなものが飾られていた。宝石の輝きこそ見えないがそのペンダントの大きさはマシューの持つそれと酷似していたのだ。


「……まさか、あそこにあるペンダントは」


「もちろん《希望》の象徴、虹色の紋章だ。時の勇者の手からこの場所へ戻ってきたその日からずっと動かされることなく我々神聖の騎士団がずっと守り続けた《希望》の象徴だよ」


 マシューは目の前のガブリエルが言うことが信じられない。《希望》の象徴は確かに自分の手にあるはずだ。思わずマシューは収納袋に手を入れ自分の持つペンダントを取り出した。そのペンダントは変わらず青緑色に美しく輝いていた。


「パライバトルマリン。……その色はこの世のものとは思えないほど美しく、何色とも表現することが出来ないほど。故に虹色と形容された。そんな青緑色の宝石とは比べものにもならない代物なのだよ」


「……これが……偽物だと?」


「……人間は愚かな生き物だ。本物かそうで無いかは本物を見ればすぐに分かる。……だが、愚かな人間は嘘でしか無いデータや自分の勝手な考えに引っ張られ簡単に騙されるのだ。真っ赤な偽物を本物と思い込んだ君たちのようにな」


「……」


 マシューは何も言うことが出来なかった。今マシューの手の中にあるペンダントは恐らく偽物なのだろう。ガブリエルの言葉を信じるのであれば、このペンダントに装飾された宝石は青緑色と形容出来、何色とも表現出来ない代物では無い。《希望》の象徴、虹色の紋章として手渡された故に信じて疑わなかったのだ。


 そして目の前にいるガブリエルもそうである。目の前で見ているからこそ確信が持てる。目の前の人物はマシューたちと戦い、そして死んだあの男では無い。あの男もまた騎士団長ガブリエル・クラークとして名乗ったために信じてしまったのだ。しかし残念ながらあの男は偽物であり、本物のガブリエル・クラークは目の前にいるのだ。


「……さて、答え合わせも済んだことだ。私以外にこの場所の秘密を知る人間は必要無い。口を閉ざしてもらうことにしよう」


 そう言ってガブリエルは手にした剣を払った。周囲に血が飛び散っている。恐らくだがアンガスの血が剣にこびりついているのだろう。想像してしまったマシューは思わず顔をしかめた。


「……副団長だけでは飽きたらず、他騎士団の騎士団長である私も殺すつもりか。その結果どれほどの混乱を招くか。……あなたも騎士団長なら分かるだろう?」


「……頭はそれほど良くないらしい。君たちをここで殺しても混乱など起きんさ」


「……何?」


 マシューたちが騎士団長と思われた人を死に追いやったその時、帝都ではそれを知らせるサイレンが響いたのだ。その時マシューたちは帝都にはいなかったためその時の状況を知らないが、ニコラの口振り的にかなり混乱したのだろう。そして神聖の騎士団副団長と深緑の騎士団騎士団長が相次いで死んだとなれば、その混乱は計り知れない。それをニコラは言っているのだ。


 しかしそれを聞いてガブリエルはそれを気にするどころか鼻で笑ったのである。ニコラはまだガブリエルの話を完全には分かっていないのだ。


 人間は愚かである。嘘でしか無いデータや自分の考えに引っ張られ簡単に騙されるのだ。そんな人間に対してならば最早本物である必要は無い。故に混乱など起きようも無いのだ。


「……偽物を使うのか!」


「ご名答。やはり勇者候補。理解はそれなりに早いらしい」


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