第27話 サンダーバード現る
読んでくださりありがとうございます。いざ修羅の国へ。まずは嵐馬平原を抜けなければいけませんね。
こうして嵐馬平原を進み始めた4人だったが、すぐに足を止めることになる。進行方向にバイコーンの群れが見えたからである。一体ずつならば問題なく対処出来るが群れとなると話は変わってくる。
「……どうする? 迂回するかい?」
「その方が良さそうだね。……あんまり遠回りはしたくないけど、あそこにある傾斜をぐるっと回るようにして進もう。そうすればバイコーンの群れには気付かれないはずさ」
マシューの提案に3人は頷いた。もちろん4人が協力して戦えばバイコーンの群れに遭遇したとしても負けることは無い。それでも群れとの遭遇を避けるのはその戦いで必ず消耗してしまうからである。これから4人は修羅の国へ向かうのだ。不必要な消耗はなるべく避けるべきである。
マシューたちは遠回りを承知で傾斜を使ってやり過ごすことにした。この動きに気が付かれてしまうと何の意味もない。気付かれないように4人は慎重に時間をかけて進んでいた。だが後ろから1頭のバイコーンがこちらめがけて猛然と迫って来たのだ。流石に迫って来ているバイコーンを対処しない訳にはいかない。
一番バイコーンに近いのはレイモンドである。レイモンドは銀の大盾を構えてバイコーンの突進に備える。もうバイコーンは目の前まで迫っていた。
激しい激突音が辺りに響いた。レイモンドは盾を構えたままであり、バイコーンは銀の大盾があった場所から斜め後ろに弾き飛ばされた。正面から待ち構えるのではなく少し左に逸れて構えることによりバイコーンの突進の軸をずらしたのである。
弾き飛ばされたバイコーンは無防備である。ウェイトソードを振りかぶるマシューになす術は無い。思い切り振り下ろされたウェイトソードはバイコーンの首を抉るように斬りさった。勢いよく噴き出てくる血と対照的にバイコーンは全く動けなかった。討伐完了である。
「……討伐完了だね」
バイコーンの討伐を確認したマシューはそのままの流れで討伐の証の採取を始めた。バイコーンの討伐の証は角である。だが角付近はかなり硬く採取には時間がかかる。マシューは最初から採取用のナイフではなくウェイトソードを使ってバイコーンの頭を落とすようだ。戦闘で抉れた深い傷を上手く使ってマシューはバイコーンを切断しようとしている。そんなマシューの姿を見ながらレイモンドは首を傾げていた。
「このバイコーンはさっき群れでいたバイコーンのうちの一頭か?」
「どうだろう。さっきの群れのうちの1頭かもしれないし、たまたま1頭で行動していただけかもしれない。そのどっちかを判断するのは難しいんじゃないかな。……レイモンドはなんでそれが気になったんだい?」
エルヴィスは一頭だけバイコーンが迫って来たことはそれほど気にならなかったようだ。もちろんエルヴィスの言う通り目の前にいるバイコーンが群れの中の1頭かどうかを知る術はなく気にする必要も無い。故にエルヴィスは特に気にも留めていない。だがレイモンドはまだ首を傾げていた。
「群れのうちの1頭ならなぜこいつだけ迫って来たのか。たまたま1頭だけで行動していたのならなぜこいつは俺たちに迫って来たのか。……それが分からないんだよな。……何かから逃げていたのか?」
「……なるほど、レイモンドのその判断は正しそうだな」
エルヴィスのその呟きが聞こえたレイモンドは視線を上に上げた。視線の先には悠然と羽ばたきながらこちらへ近づいて来るモンスターたちの姿があったのである。バイコーンはこのモンスターたちから逃げていたのだ。
「マシュー、レイモンド。僕たちでサポートするから君たちは全力で戦ってくれ」
杖を構えながらエルヴィスはマシューとレイモンドにそう呼びかけた。2人は振り向く代わりにハンドサインで了承を伝えた。群れで現れたサンダーバードに対して視線を外すのは危険である。少しの動きも見逃すまいと2人は気を引き締めた。
「……サンダーバードが3体か。ちょっと厄介だよな」
「見たことがあるモンスターとは言え戦闘するのは初めてだな。レイモンド、サンダーバードの特徴を教えてくれ」
「サンダーバードは基本的に群れで生活している。性格はかなり好戦的で獲物を見つけたら逃がさないほど執着心があるらしい。雷属性の魔法によって遠距離から攻撃してくる上に鋭いクチバシを使った接近戦も得意と言う厄介なモンスターだよ」
レイモンドの話を聞きながらマシューはサンダーバードをじっと見ていた。鷹のように鋭いクチバシは刺さるとかなり痛そうであり、纏っている雷から雷属性の魔法を使うことは間違い無さそうだ。エルヴィスたちのサポートがあるとは言え無傷での討伐はかなり厳しそうである。せめて消耗は最小限にとどめたい。マシューは短く息を吐くと集中力を高めた。
「行くよ。……【速度支援】!」
後ろからエルヴィスの声が聞こえた。聞こえてくる名前からエルヴィスが発動させた魔法がどんなものかは分かる。声が聞こえたと同時にマシューはサンダーバードめがけて突撃を仕掛けた。サンダーバードは魔法で対応しようと3発ほど放ってきたが速度の上がったマシューはそれらを全て回避してみせた。
「悪いけどすぐに討伐させてもらうよ。【火纏】」




