第26話 象徴があった場所
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嵐馬平原
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何度目かの転移でもう慣れて来たらしい。転移してすぐはいつも気を失っていたマシューだが、今回は意識を持ったまま転移出来たようだ。前方から強い風が吹きつけている。そして目の前にはだだっ広い平原が広がっていた。間違い無い。ここは嵐馬平原である。
「……ここが嵐馬平原かい?」
「あぁ。そうだよ。……ここが嵐馬平原だ」
「とりあえず無事に着いて良かった。……それで? どこをどう進めば修羅の国へ辿り着けるんだっけ?」
「ええと、……あそこに黒い雲が渦巻いているのが見えるかい?」
「あぁ。見えるよ」
「それじゃあその前に川が流れているのは?」
「それも見える」
「ここからは確認出来ないけど、川には2つ橋がかかっているんだ。そのうちのここから見て左側にある橋を渡ると黒い雲が渦巻く場所にたどり着くことが出来る。……だが、今はあそこには行かない」
修羅の国への道を説明するのに試練の台座は使いやすいのだ。あれほどまでに存在感を放つものはあまり無いからである。こう説明することで上手く2人に橋を認識させることが出来た。修羅の国へ行くためにはそこから横道に逸れなくてはいけない。
「なんだ、その場所に行くんじゃないのか。……あの雲はかなりの存在感があるんだが、あの場所にはいったい何があるんだ?」
「試練の台座だな。黄金の林檎を手に入れた時とほぼ同じような場所だよ」
「へぇ……。それじゃあマシューたちはあそこまで行って試練に打ち勝ち象徴を手に入れたと言う訳だな。……ちなみにあの場所にあった象徴って教えてもらうことは出来るのか?」
そう言ってエレナはマシューに期待の眼差しを向けた。別に隠すようなものでは無い。マシューは素直に収納袋へ手を入れ蹄鉄の鎧を取り出した。マシューもこれを見るのは久しぶりである。重厚感ある鎧に刻まれた蹄鉄の模様が何とも言えぬ風格を漂わせていた。
「……それが象徴か」
「あぁ。《幸運》の象徴、蹄鉄の鎧だよ」
「《幸運》……。なるほど、マシューがあれほどまでに幸運なのはこれが理由か」
エルヴィスはそう言うと大きく頷いた。象徴はそれを持つだけで相応の効果を発揮するものである。それ故に《七つの秘宝》とも呼ばれているのだ。マシューが《幸運》の象徴であるこの蹄鉄の鎧を手に入れたのはエルヴィスと出会う前。つまりエルヴィスは《幸運》の象徴の恩恵を得たマシューしか知らないのだ。
「あれほどまでに?」
「エレナも知ってるだろう。マシューは中級回復魔法が覚えられる本で【解呪】を習得したことで君を石化から救ったのさ」
「確かにそうだったね。……中級回復魔法にはそれなりに種類がある。その中でピンポイントで【解呪】を習得するのは結構難しい。習得する魔法の種類はほぼランダムと言われているから運によるものが大きい」
「なるほど、それでか。最初エルヴィスは俺たちに幸運な人たちって言っていたな」
「……よく覚えているね。確かに僕は最初君たちが幸運そうに見えたから攻略の同行を頼んだのさ。でも今は違う」
そこまで言って少し恥ずかしくなったのだろうか。エルヴィスは少し目を上に逸らした。マシューとレイモンドはエルヴィスの次の言葉をじっと待っていた。
「今は一緒にいたいと思う仲間だよ。修羅の国に一緒に来てくれると分かった時それは嬉しかったさ」
そう言ってエルヴィスは照れくさそうに笑った。それを聞いたマシューはレイモンドの様子を伺った。レイモンドはエルヴィスを茶化すように肩をすくめてみせた。
「そう思っていなきゃ困るぜ。これで仲間と思ってないって言われたら俺たちだけでさっさと修羅の国へ向かうところだったぞ。なぁ、マシュー」
「そうだね。もう俺たちは4人で行動してるパーティなんだからそう思ってもらわないと困るよ」
そう言いながらマシューは微笑んでいた。マシューは全員をかけがえのない仲間だと思っている。そしてそれをお互いに思う必要が無いとも思っているのだ。かけがえのない仲間である基準は人それぞれ。マシューのことをそう思っていなくても、自分がかけがえのない仲間だと思っていれば充分だ。そう思っているのだ。
だがそれはそれとして、仲間と思っている人から仲間だと言われるのは嬉しいことなのである。故にエルヴィスの言葉はマシューにはとても嬉しく思われたのだ。こんな仲間とずっといれたならばそれはとても幸せだろう。そうマシューは思うのだ。
ふとマシューはエレナがユニコーン像の方を見ているのに気付いた。何かあったのだろうか。
「エレナ、何かあったかい?」
「何かが動く気配がしたんだ。……気のせいかな」
「動くと言うと、……モンスターかもしれないな。早くここを動いた方がいいかもしれない。マシュー、さっきの話の続きを聞かせてくれ」
「あぁ。さっき確認してもらった橋だが、それを渡らずに川沿いを進めば横道があるようだ。そこから進むと修羅の国の辺りまで行けるだろう」
「……となるとあそこの森を通過する感じだね。どんなモンスターがいるか分からない。何が起こっても大丈夫なよう気配を探りながら進んで行こうか」




