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中央都市アルス2

「そうだ忘れてた」


【暗殺者】スキルの中にある気配隠蔽で気配を消し路地裏に入って仮面を取った。

 その時、突然聖剣が人化した。


「仮面、取るの?」

「ああ、怪しまれるからな。それに堂々としてた方が大衆には意外と分からないもんだ」

「そ、なら私もこのまま行く」

「駄目だ、ドレスは目立つ。着替えるなら別だが」

「それは無理」


 聖剣とはいえ、少女の姿になれ言葉を交わせるのなら心があるという事だろう。それに少女の姿をしているが百単位を余裕で超える年数の時を聖剣は過ごしている。所謂ロリババアである。

 ならば、こだわりを持っていても当然だろうな、とソリトは思った。


「この服は鞘だから脱ぐのは無理」

「それ一番駄目じゃねぇか!!」


 予想を大きく外した何て事ではなかった。二度と聖剣を鞘から抜き出すことが出来ないかもしれない。

 ソリトは両手で頭を抱え込み本気でそう思ってしまった。


 ***


 その頃、ルティア達は騎竜が泊まれる宿を基準に聞き込みしながら宿屋を探していた。

 その聞く先々で、ドラゴンに荷馬車を引かせている事を珍しがられる。

 ソリトが滞在する間、合間に聖女としての務めをするつもりでいる。だが、今はソリトの冤罪を晴らすためにも自身の存在は余り知られるのは良くない本当のお忍びだ。

 今回ばかりは余り目立つ行動は避けなければならない。


 唯に今目立っている状況はあまり宜しいとは言えない。


 幸いなことに中央都市は多くの人間が行き交うものの治安の悪さをそれほど聞かない、実際、以前立ち寄り時間をかけて見て行った結果としても、改めてルティアの目から見ても、その通りだと判断できる程だ治安はかなり良い方だ。


 なので、岩壁側に決め込むのもありだとルティアは考える。

 しかし、行商をするとなると話は変わるのではないか。

 かなり名が売れているのなら別に端でも多少は客を集められるだろう。だが、初めての場所での行商となると最初を成功させる必要が重要となるはずで、それだけでその場所での商売を左右することにもなるのではないか、と。


 そうして決めたのは大通りを竜車で数分行けば中心地に辿り着ける宿だ。

 聞いた中では二番目にグレードが低い安宿みたいだ。

 一番安いランチを頼むくらいだ、ソリトとしてもお金を余り消費したくないだろうと思って、ルティアはそこ決めた。


「少し待っててください」

「お腹空いたやよー」

「宿が決まったらすぐに行きますから」

「やよー!」


 ドーラが歓喜で声を上げた瞬間、周囲の視線がルティア達に集まった。ざわざわとドラゴンが喋った事に声を潜めて話す。


「ど、ドーラちゃんご飯楽しみやよねー!」

「何だ独り言か?」

「ドラゴンが話せるわけないよな」


 集まっていた人達が再び歩き始める。何とか誤魔化せたようらしい。

 一安心したと思うと自然と口から安堵の吐息が漏れた。


「ドーラちゃん声抑えてください」

「ごめんなさいやよ」


 それから竜車と一緒にドーラには入口の隣で待ってもらいルティアは宿の中に入る。

 店主がルティアを見て早々、張り付けただけの薄ぺらい笑顔を向ける。営業には良くあることなので気にはしないものの、やはり家族のような自然な対応をしてくれる宿の方がルティアは好きで落ち着く。


「いらっしゃいませ、宿泊ですね」

「その宿泊ではないのですが」


 その瞬間、店主の顔が露骨に一瞬歪んだ。気持ちは察する。

 だが、ルティアとて聖女と言えど一人の女の子。プライベートは眠るだけだったものの好きに寝たいし、休息場所くらいは選り好みしたい。

 ルティアは過信するつもりはない。が、それでも一人で旅をしていた時に様々な人を見てきたから分かる。こういう媚びる人は簡単に他人を売る。宿に問題を抱えた人間が泊まってると分かればすぐにでも口に出すかもしれない。

 他を当たろうそう思ったのだ。


 ソリトの事を考えれば、仕事として客のプライバシーを守秘する義務を全うする宿の方が良いし、冤罪の身なれば尚の事ではないかと今になって思い付いた。


 そこでここより少し値は張ってしまうのだが以前訪れた時に宿泊した宿にしようと考えた。

 そこなら中心地にも近く、守秘義務を必ず守ってくれていたし、宿で問題が起きてもこちらが被害者であれば適切に対応してくれる。そして何より温かい宿なのだ。


 自分の知っている中での孤児施設にお金の殆どを寄付しているも、ずっと聖女としての事しかやってこなかったので日数にもよるが七日は宿泊出来ると思う。


 ここの宿店主には来て早々申し訳ないが出ることにした。

 しかし、何もしないわけにはいかない。

 ドーラの事も考えてここで食事することにした。


「えっと食事だけをしたいのですが大丈夫ですか?私の馬というか騎竜がお腹を空かせていてこの宿の入口付近で止まってしまいまして」

「は?……え、ええどうぞゆっくりなさってくださいませ」


 その言葉と笑顔とは裏腹に苛立ち、怒りの感情が強くなる。

 迷惑だから早く食事をして出ていってくれ、内心で思っているのだと思う。

 こっちが無理を言っているのは理解している。仕方のないこと。ルティアはドーラに食事を持って食べたらすぐ立ち去る事にした。


「ここに泊まるの?」

「いえ、ここでは食事をするだけです」

「ごはーん」


 宿の目の前だと邪魔になるため食事をしている間だけでも小屋を貸して貰えないか尋ねると良いということで行くと、すぐに幽体離脱して少女の姿を取った。


 改めて宿に入り、食堂スペースで食事を注文した。

 多めに頼んだもののドーラがそれで足りるか心配だ。


「でも、食べさせ過ぎても駄目なんでしたっけ」

「食べちゃダメなんよ?」

「そうですね。ソリトさんに怒られます」

「やだー」

「私もです。だから足りなくても少し我慢しましょ」

「はーい」


 ドーラのこういう子どもらしい部分を見ると、ルティアは同じ施設で育った年下の子を世話をしていた時と同じように面倒を見てあげたい気持ちになる。


「お待たせしました」


 だからだろう、違った意味で放っておけないソリトが今どうしているのか突然気になった。

 出された料理を食べながらルティアはそんな事を考えていた。


「あるじ様のごはんのほうがおいしかったやよ」


 食べ終えてルティアの指示のもとに宿に向かっていながら幽体離脱したまま肉体を動かして食事をしていたドーラは精神体の状態でルティアの隣に座りながら肉体を動かし竜車を引きながら小声で不満な感想を溢す。

 最初からその状態で竜車を引けば良かったのではと思ったルティアだったが、ドーラが言うには幽体離脱の状態だと動かすのはとても疲れるとのこと。

 それは捨て置き、ドーラには言っておかないといけない事が出来た。


「そんな事言ったら駄目です。作ってくれた方に失礼です」

「……ごはん」

「………きっと、ソリトさんも同じ事を言われたら悲しむでしょうね」

「あるじ様悲しむの?」


 その人に対して作ったのに、誰かの方が美味しいと比較されて食べられれば何のために作ったのか分からなくなると思う。

 そして、ソリトもそれは同じはず、と思ったがソリトの場合『は?作った料理が美味しくない?じゃあ次から飯抜きな』と寧ろこちらを言いそうな気がしてきたルティア。


「きっと大丈夫です。ソリトさん根は優しいですから」


 と言ってみたが、以前のソリトがどういう人だったのかは人伝でしか知らない。だからという訳ではないが、元の彼に戻ってほしいとは考えていない。

 何かのきっかけで傷付いた、壊された心は、壊された物を元の形に戻すのと同じように、根底は同じでも少し違ったものに変わってしまうのだ。

 唯にルティアは素っ気なく口は悪いけど根は優しい今のソリトのまま心を開いてほしいと思っている。


 無視と雑な対応をされるのは嫌なのでそこは絶対改善させる事も視野にいれて。


「うがー!ルティアお姉ちゃんだけあるじ様の事分かっててずるいやよー!」


 子どもの突発的なわがままだろう。それでも何故だかそう言わなければと思いドーラに言った。


「ずるくありません!」


 暫くして中心地、正確には観光区と呼ばれているエリア付近にある以前ルティアがお世話になった宿に到着した。

 宿の中にドーラと共に宿の中に入る。

 すると、カウンターから男性のドレスコードのような正装の黒服を着た一人の女性が出迎えてくれた。


「いらっしゃいませ、当宿へお越し……もしかして癒しの聖女様でございますか?」

「はい!お久しぶりです、チヤさん」


 覚えててくれていたとは思っていなかったので、嬉しさで自然と自然と声が弾んだ。


「まさか覚えててくださっているとは」

「それはこちらのセリフです。チヤさん相変わらず硬いですね」

「仕事ですから。そういう聖女様は変わられましたね」

「そう……ですか?」


 ルティアとしてはそこまで変わったようには感じないが、他の人、今だとチヤ。彼女から見るとルティアは変わったように見えるらしい。


「それで泊まりたいのですけど、二部屋空いてますか?」

「二部屋…ですか?そちらの子とだけなら一部屋でも大丈夫だと思いますよ」

「その、実は男性の同行者がおりまして」

「護衛でも雇われたのですか?」

「そのようなものです」


 申し訳なく思ってしまうが、今の状況にチヤを巻き込むことは余りしたくないルティアは、いつか分かるかもしれないとしてもソリトの事は伏せることにした。

 すると、チヤはルティアから視線を少し外す。護衛がいないのに護衛を雇われたのかという問いに肯定するような返答をしたので、疑問を抱いたのだろう。


「………畏まりました。丁度二部屋空いてます」


 踏み込む事なくチヤは業務の話を進める。


「延長するかもしれないのですが、とりあえず三泊でお願いします」

「三泊ですね」

「ありがとうございます。それとドラゴンを泊めたいので、小屋の一部屋を追加で」

「畏まりました」

「やー、ドーラもこっちが良いんよー!」

「へ?」

「ドーラちゃん、ソリトさんを迎えにいきましょう!チヤさん後でまた伺います」


 チヤの返答を待たずドーラと一緒にルティアは宿を後にした。


「ドーラちゃんが入るには小さいので仕方ないんです」

「やだーあるじ様と一緒に寝るんよー」

「だ……」


 ズドン!!

 駄目です。そう言おうとした時、中心地に来る時に通ってきた大通りの方向から、かなり離れているにもかかわらず大きな音と振動が響いて伝わってきた。

 周囲の人達も動揺の仕草を見せる。


「まさか」


 その方向の付近にはギルドがあり、近くにはギルド管理の闘技場がある。

 もしかするとソリトが何かしらに巻き込まれたのかもしれない。そんな予感がしたルティアはその方向に直ぐ様向かうことにした。


「ルティアお姉ちゃん?」

「ドーラちゃん、体に戻って音の方に連れていってください」

「?急ぐんよ?」

「急ぎです」

「わかったやよ!」


 ドーラが幽体離脱を解除してルティアの目の前にドラゴンの姿で現れる。

 宿の前にいたドラゴンが消えたと思ったら、突然違う場所に現れた為に周りを騒がせてしまった。

 謝罪をして、すぐにルティアはドーラに指示する。


「お騒がせして申し訳ありません!ドーラちゃんお願いします」

「はいやよー」


 ドーラの背に乗ってルティアは音の響いてきた方向に飛んで向かった。

どうも翔丸です。


ルティア視点を試験も兼ねて書いてみましたけど、どうしたか?

良ければ感想お願いします。


それと投稿は続けますが、私情事で暫く書くのが難しくなって普段より遅くなってしまいます。

ご了承ください。

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― 新着の感想 ―
[一言] 聖女って仕事何気に出来る系ですね。 元々が癒しの聖女なのも有りますが信望も厚そうですし。 彼女を敵に回した愚王とアホ勇者の末路が本当に楽しみですわ。
[一言] 楽しみに待ってますので、プライベート優先でこれからもお願いします!
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