中央都市へ
スマホ使用料金を払い忘れてて止められてしまうなんてぇ、不覚。
『ホワイトウルフを討伐により全能力が上昇します』
『ヤマアラルを討伐により全能力が上昇します』
『エレキキャトフィを討伐により全能力が上昇します』
『スキル【電流耐性(中)】獲得』
『スキル【金属加工師】獲得』
『スキル【薬剤師】獲得』
『スキル【半人前料理人】獲得』
『スキル【釣り人】獲得』
【電流耐性】
雷系の攻撃に対する耐性を付与。(一段階アップ状態)
スキル効果により【耐性】から【無効】に変化。
【金属加工師】
金属加工技能補正3。(一段階アップ状態)
筋力値5上昇。(一段階アップ状態)
スタミナ5上昇。(一段階アップ状態)
スキル効果により補正4上昇する。筋力値、スタミナ6上昇する。
【薬剤師】
薬の鑑定。
調合補正2。(一段階アップ状態)
液薬調合補正2。(一段階アップ状態)
丸薬調合補正2
スキル効果により薬の効果上昇を追加、調合薬の品質を一段向上する。調合補正、液薬調合補正、丸薬剤補正が3に上昇。
【半人前料理人】
調理補助2。(一段階アップ状態)
料理補正2。(一段階アップ状態)
スキル効果により調理補助、料理補正が3に上昇。
【釣り人】
幸運値5上昇。(一段階アップ状態)
筋力値一割上昇。(一段階アップ状態)
スタミナ一割上昇。(一段階アップ状態)
釣り補正3上昇。
スキル効果により幸運値が6上昇する。筋力値が二割上昇する。スタミナが二割上昇する。釣り補正が4上昇する。
あれから三日後。
ソリトはスキルの獲得やステータスの上昇をさせる事が出来た。スキルに関しては技能系に偏ってはいるものの、ステータスアップに繋がることもあり、レベルとの差がさらに開く事になった
その間に建物の復興が大方終わりつつあった。
理由はドーラが馬車を飛んで引き、材木を森から持ってくる時間が短縮できたことにあった。
そのドーラは順調過ぎる程に育ち。丸かった体形は引き締まったものに変わり、翼も大きく、尻尾も長くスマートになり、白と黒の鱗も頑強なものに変化している。高さは3メートル。この段階で成竜として扱われるようだが、扱われるだけで成長はまだ続くらしい。
かなり餌に苦労したが馬車を飛んで引くには十分な成果だろう。
また一度引かせてみて気に入った事は幸いだった。
それと、レベルの方はこのような感じだ。
ソリト Lv58
ドーラ Lv20
ルティア Lv52
本来なら成竜の段階まで数ヵ月は掛かるらしく、ドーラの成長はかなり早過ぎるという事だ。それほどに成長補正(大)の効果は絶大ということだろう。
ルティアがレベルを開示してソリトはそこまであげていた事に意外だった。ただ、攻撃速度や反射速度の事を考えると素直に頷けた。
ちなみにソリトは成長中に生え変わっていったドーラの鱗をきっちり冒険者に売り捌いた。
お陰で金銭袋は金貨十枚、銀貨五百枚、銅貨六百枚とかなり潤っている。
そして、この間で武器屋の爺さんから蜂針の加工と手解きを受け、ソリト一人でも何とか数ミリ幅で出来るようになった。まだ多少失敗もあり、長さの調整等の方も出来ていないが、後は練習あるのみとなった。
収納ベルトの方は基準として加工した数ミリ幅の蜂針を渡した当日に道具屋が完成させてくれた。
そうして、出立することになった。世話になったということもある、だが、余り大事になる気がしたソリトは村長と街の領主だけに挨拶をしに行ったのだが、村に戻ると村長が村人を集めて村の外で待っていた。それから直ぐに街からも訪れてソリト達を食糧を贈る。
「感謝する」
「いえ、様々な事を協力して頂いたのに、私達にはこれくらいの事しか勇者様と聖女様の力になれませんでした。申し訳なく思います」
恩人扱いされてもソリトからすると困るだけなのだが、ソレを理由に裏で何を考えているか分からないから、世話になったのに感謝をしないというのはどうかと思い、ここは素直に気持ちを受け取ろう、とソリトは決めた。
「いや、その気持ちだけで十分だ」
「その通りです。何事もなく過ごせたのがその証拠です」
「ギュアアア!」
他にも述べれば、ドーラ用に馬車を飛行して引きやすいように御者台を高くし、御者台と馬車内を行き来するために小さな階段を設置等と改造を手伝ってくれたのだ。竜専用の馬車、〝竜車〟とでも呼ぶべきものだろうという事で竜車と呼称することになった。
ドーラも気に入っており、改造して貰ってからは何処へ行くにも竜車で行くようになってしまったくらいだ。
「また来いよ小僧」
「店は良いのかジジイ?」
「冒険者はともかく殆どの街の住人がここに出払ってるから問題ねぇさ」
いや、それはそれで街が問題なのではないだろうか。
「まあ、考えておく」
「なんだ?つれねぇな小僧。聖女の嬢ちゃんは?」
「是非立ち寄らせていただきます」
「だとよ」
「その時は聖女とは別れてるだろうさ」
「強制的に連れてきますね」
ルティアがニコニコと笑顔で告げる。しかし、それは無駄な事が手に取るようにソリトは胸の内に言い収めておく。
「なんですかソリトさん?その無駄と言わんばかりの顔は?」
実際その通りなので、ソリトは無視する。
「じゃあ、世話になった。聖女、俺は隠れてるから竜車はお前が引いてくれ」
「……………はぁ、分かりました。また無視されました全くもう」
プルトの街とカールトン村以外の中央都市や国ではソリトの悪名が拡がっているだろう。ゆえにルティアが竜車を引くことになった。
「ぶつぶつ呟いてないで出発だ、付き纏い協力者」
「ついに聖女が消えてしまいました!」
「そんなの良いから御者台行け、付き纏い協力者聖女」
荷車の方に回ってソリトは荷物を乗せる。
「待ってください」
「ギュアアア」
早く行こうと訴えるようにドーラがソリト達を見て鳴くと、御者台に乗ったルティアの頭の上に顔をぽすっと軽く乗せた。
「ドーラちゃんよろしくお願いしますね」
「ギュア」
「よし行くか」
「あ、勇者様少し宜しいですか?」
街の住人側から少し身成りの良い服を来た壮年の男性がソリトの前に出て来た。
「私はプルトの街の領主を任されている者です。【調和の勇者】様にこれまでの事に対して感謝を。ありがとうございました」
「滞在する理由があったからいただけだ。忘れろ」
「いえ……あ、それで勇者様これを」
そう言って領主は一つの巻物をソリトに手渡した。
「ん?これは」
「商業通行証です。これがあれば各領主の地域での通行手続きの省略に通行税を払うことなく入ることができます。きっと役に立つ事と思います」
「商業か」
いっそのこと金銭を稼ぐ為に竜車を使って各地を回る行商をするのも良いかもしれない。ただ悪評の広がった状況では、かえって悪影響になりかねない可能性がある。
「俺が貰っても行商には不便だ」
「この通行証は後ろ楯を示すものでもあります」
信じて良いものか正直悩むソリト。
プルトの街もカールトン村も群れからの襲撃からソリトが被害を最小限に抑えたのは、村人や冒険者達が見ている為確かだろう。
だが、こんなことをすればクレセント王国内で敵視されかねない行為だ。それこそ村人や街に被害が出ることだってあるかもしれない。
住民、村民の気持ちを汲んでのものだとしても危険だ。
「どうか勇者様を障害から少しでも守らせてください。これが今私達ができる最大限のものです」
「どうなっても知らないからな」
「皆、覚悟の上です」
そこまで言うのであれば、善意として受け取って良いかもしれない。ソリトも警戒を緩めて受け取ることにする。
「なら、ありがたく使わせてもらう」
「お気をつけて」
「ああ」
「ソリトさん準備出来ましたよ」
「これからもできる限り支援させていただきます」
「忠告する。無茶は止めろ」
「ありがとうございます」
頭を下げて見送る街の領主、街の住人達や村長、村人達をよそにソリトは荷車に乗る。
「途中吐くなよ」
「吐きません!」
竜車で材木を運んでいる途中で、ルティアは荷車の揺れに耐えられず何度か乗り物酔いになり何度か吐きな程にダウンすることがあった。
ソリトは顔は余り出せない。ゆえに御者台にはルティアが必然的に乗ることになる。無理をさせると悪化して時間を食うので合間に休憩を挟むつもりではあるし、ソリト自身も引くつもりだ。それでもルティアが協力関係でいたいのであれば乗り物酔いを克服してもらわねばならない。
「ギュアアア」
早く引きたいのかドーラは翼をパタパタさせ始める。
「とりあえず、協力関係でいたいのなら慣れろ」
「……が、頑張ります。ドーラちゃん出発です」
「ギュア!」
元気よくドーラは鳴き、翼を広げて飛行しながら竜車を引き出す。
それからゴトンゴトンと走っていき徐々に引く速度を早くして楽しくなってきたドーラが高速で引き出してしまい、結果…
「うっ……もうだめです……きも…うっちわるいです」
三十分経過した辺りでルティアがダウンしてしまった。一度荷車を止め、ルティアを横にさせてソリトが御者台に座り再び進む。
その間、ソリトは行商の事について考えていた。
するにしても何を売るかにもよる。出来ることは薬、裁縫。他には多少金属加工も可能で、村や街などによれば冒険者の武器を研磨することも出来る。
いっそのこと一つや二つと絞らず手広くやっても良いかもしれない。【孤高の勇者】はそれを可能とする反転スキルだ。相性としても問題ないだろう。
ただ正直言って、考え始めたばかりで、ソリトの中で行商が成功する見通しは立っていない。
「やってみるしかないか」
結局のところ【天秤の聖女】を探すために各地を回りに回るはめになるだろう。
せっかくの竜車だ利用しない手はない。
そしてソリトは行商をやるだけやってみることにした。
その道中で、クロンズ達が王都を出発したという話を聞いた。
彼等がどうなろうとソリトはもうどうでも良いが、遭遇しないことだけは願うことにした。
「何故ソリトさんは気持ち悪くっ……うぅ」
「昔から酔ったことがないから知らん」
「なんとも……羨ましいです」
「いつか慣れる」
「……治したら」
「駄目だ、慣れろ」
「ソリ……鬼畜」
「一応誉め言葉として貰っておく」
このようなぐだぐだな感じでソリト達の竜車の旅が始まる事になった。




