450 謹慎中②

　小さく開かれた窓から爽やかな風が室内に流れ込んでいる。

　クランマスター室の執務机。いつもの場所で深く腰をかけながら、僕はエヴァからの報告に目を瞬かせた。

「え？　サヤが来たの？　帝都に？　予想より早かったなあ」

「はい。リィズさんが見つけて、今地下の訓練場で模擬戦をしているらしいです」

「？？？　え？　なんで？」

　サヤ・クロミズ。レベル９認定試験を共に受けたレベル８ハンターである。

　確かに帝都に来てみたいとは言っていたような気もするが、行動が早すぎるし、しかもやってきて早々やることが模擬戦とは、意味不明であった。

　さすがレベル８ハンターという事だろうか……そう言えば、レベル９にはなれたのかな？

　リィズ達が迷惑をかけなければいいんだけど……てか、早速模擬戦なんて君達仲良くなるの早いねぇ。

　

　と、その時、クランハウスが小刻みに揺れた。どうやら相当白熱しているようだ。

　一応、やりすぎてもクランハウスが倒壊しないように訓練場を地下に作ったんだが、それでも揺れるんだから高レベルハンターというのは恐ろしいものだ。

　揺れる天井を見る僕に、エヴァが眉を顰めて言う。

「倒壊対策は万全です。うちは高レベルハンターが大勢いますからね」

「アンセムとか分厚い金属の壁を平気で破るからね」

　何でも一刀両断するルーク然り、同じ人間の所業とは思えない。建物を頑丈な建材で作るにしても限度があるからなあ……。

　ハンターを志す前は僕とそこまで変わらなかったはずなのに、差がついたものである。

　しみじみしていると、エヴァが一度ちらりと入口の方に視線を送り、確認してくる。

「会われますか？」

「……いや、サヤには申し訳ないけど、やめておこう。みんなピリピリしてるみたいだし、痛くもない腹を探られたくないからね」

　クランマスター室の入口――開け放たれた扉の前には、十人近い人々が真剣な眼差しでこちらを見ていた。

　服装も年齡も様々な彼らは、謹慎が始まってしばらくしてやってきた僕の監視役だ。探索者協会、各騎士団、遺物調査員など、各機関から送られてきたらしい。

　帝都にきて数年経つが、これまで聞いたことがない対応である（ちなみにエヴァに拒否できるがするか聞かれたが断った）。

「余り近くをうろうろされて、変な噂を立てられても困るんですが……」

「まぁまぁ、そう言わずに。彼らも仕事で来てるんだから、ご苦労さまな事だよ。お茶でも出してあげてよ」

　今もクランマスター室の外から目を光らせている面々に手を振ってあげるが、皆真面目な表情のまま反応を見せなかった。

　ちなみに、交代要員ありで二十四時間の監視だ。さすがに私室にまでは入ってこないが、ここまでの人数でこんなにしっかり監視されるなど、皇帝陛下以上の待遇ではないだろうか？

　何もしないって言ってるし、これまでも何かしたことなどほとんどないというのに、信用がなさすぎる。なんだかずっと幽閉されていたおひいさまの気持ちが少しわかるね。

「クライさんがそう仰るのならば…………どうせ、長くはもちませんからね。謹慎保証金の額が額ですし」

　エヴァがため息をつき、監視役から視線を外す。どうやらエヴァはこの状況を余り良く思ってはいないらしかった。

　確かに、自分のクランのマスターが何も悪い事もしていないのに監視つき謹慎になるなど、余り気分のいい話ではないだろう。処分に抗議しなければ舐められるというのもあるのかもしれないが――まぁ、今回は貸しを作ったという事で大目に見てもらおう。

「さっさと事件が解決すればいいんですけどね」

「え？　何かあったの？」

「……ご存知なかったんですか？　現在、各機関が躍起になって原因究明のために動いているみたいですが――」

　のんびり尋ねる僕に、エヴァが目を見開き、教えてくれる。

　エヴァの話を総括すると、昨今帝都では神隠しの事件が頻発していて、国がその調査のために動いているらしかった。

「ああ、そう言えばルシアもそんな話してたね」

「調査が進むにつれてかなりの人数が消えている事がわかったみたいで……さすがに異例の事態だと」

　それはそれは……本当にご苦労様だな。僕が謹慎処分じゃなかったらまたガークさん辺りから面倒な依頼が来ていたかもしれない。謹慎でよかった。

　という事は、急に監視役がやってきて僕をやたら険しい目で見るようになったのは、僕がまた余計な事をしでかさないか見ているって事か。

　頼まれたって動かないよ！

「余りにも不可解な点の多い事件なので、神が関わっている懸念もあるとかで皆、警戒しているらしいです。ここは【星神殿】の跡地ですから」

「神……？　いや、それはないと思うよ」

「！？　何故わかるんですか？」

　僕の答えに、こちらを監視している人達がざわつきはじめる。

　聞き耳を立てていたらしい。いや、知ってたけどね……彼らがいるのは僕が余計な事をしないか見張るためだし。

　わかるのは妹狐にスマホで確認したからだが、それを正直に話すわけにもいかない。

　妹狐は食いしん坊だが一応幻影だからな……僕はとんとんと人差し指で机を叩きハードボイルドに言った。

「謹慎中だってそれくらいはわかるんだよ。まぁ、ルシアが動いてるならすぐ解決するでしょ」

　監視役がにわかに慌ただしくどこかに連絡しているのを見ながら、僕は欠伸をした。

　ルシアは僕より一万倍は優秀だし友達も多いからな。おまけにルークやリィズと違ってルシアには弱点らしい弱点がない。

　むしろこの事件、彼女で解決できなければ相当な大事だろう。

　あ、でも、もしかしたら事件が解決したら、謹慎も解かれてしまうかな……そう考えるとこの時間も貴重に思えてくる。しっかりだらだらしておかないと。

「どうでしょうね。かなり情報が錯綜しているみたいなので……」

「錯綜……？手がかりが全くないとかじゃなくて？」

「ないっていうよりは、ありすぎるらしいです。帝都中におかしな噂が広まっているらしくて――深夜に路地裏を歩いていると首をぶら下げたモンスターに攫われるとか、夜寝ていると突然部屋の扉がノックされて応じると闇の世界に引きずり込まれ二度と帰ってこられないとか……ほとんどは根も葉もない噂だと思うのですが、騎士団からも注意勧告が」

　なるほど、確かに帝都内で神隠しなんて起こったら騒ぎにもなるだろう。注意勧告まで出るとなると尚更だ。

　事件の首謀者が捕らえられるのも時間の問題だろうな。

　しかし根も葉もない噂、か……。

「なんで根も葉もない噂だってわかるの？」

「なんでって……遭遇した者が二度と帰ってこられないなら、誰が噂を広めてるんですか」

「…………エヴァ、君頭いいね」

　まったくその通りであった。全滅しているのならば噂が広まるわけがない。

　まぁ僕はノックされても絶対に応じないし、深夜に路地裏を歩いたりしないからどっちみち関係ないけどね。

　僕の称賛に、エヴァが微妙な表情をする。

「…………恐縮です。これまで聞こえていなかった噂が爆発的に増えているみたいで、市民達も怯えているようです。私もその手の情報は常に抑えるようにはしていたんですが…………把握できていませんでした」

　確かにエヴァって何を聞いてもすぐに答えてくれるよね……本当に働き者だ。情報屋とかでも食べていけるのではないだろうか？

「噂の出どころも不明、その噂と神隠しの関係性も不明で、どの機関も未だ原因の究明には至っていないようです」

「帝都の調査機関って優秀なところばかりなのに、そりゃ大変だねえ。人が消えるなんてすぐに分かりそうなものなのに……」

　多分調査している機関ってのは僕の監視をしているそこの人たちが所属している機関なのだろう。監視の人たちをちらりと見ながらしみじみと言う。

　教育機関も充実し実力至上主義が蔓延しているゼブルディアの人材レベルはかなり高いと言われている。誰でもなれるハンターは玉石混交だが、国家所属の人間に無能はいないはずだ。

　そんな優秀な人材が集まっても原因がわからないとは……本当に帝都の中での出来事なんだよね？　ゼブルディアは比較的治安のいい安全な国のはずなのに、本当に最近、色々起きすぎだ。

　ハンターの仕事が多くていいとでも思うべきだろうか。

　そこでエヴァが不思議な事を聞いてきた。

「調査してもおかしな噂ばかりで全く原因がわからない。消えた人々も見つからない。人の仕業とは思えない奇妙な特徴も幾つか見られる。クライさんならどうしますか？」

「え…………？　…………何もしないで誰かが解決するのを待つ、かな」

「…………」

「じょ、冗談だよ。うーん、そうだな……」

　半ば本気の答えにエヴァが眉を顰め、僕を凝視する。なんだろうか、凄い圧力を感じる。

　僕は腰をかけたまま脚を組み換え、エヴァが入れてくれた紅茶を口に含んだ。

　どう考えても、優秀なメンバーがこぞって調査して何もわからなかった事を僕がどうにかできるわけがないのだが…………そうだな。

　クランを作る前、僕は《嘆きの亡霊》と共に幾つもの死線を潜ってきた。潜ってきたというか、正確に言うと状況に流されていただけなのだが、意外な事に、それらの修羅場の中にはこういう膠着した状況を僕が打破したパターンもある。

　僕は人差し指を立て、ハードボイルドに言った。

「そういう時はさ、自分が事件の被害者になればいいんだよ。今回の場合は神隠しに遭ってしまえばいいんだ」

「！？」

　監視役の人たちが僕の結論に目を見開き、こちらを凝視する。ふ、この答えは予想外だっただろう。まぁ僕なら二度とごめんだけどね。

　目を見開いたエヴァは、ごくりと唾を飲み込むと、恐る恐る確認してくる。

「えっと…………それは、どうやって？」

「…………」

　ごもっともな疑問に、僕はにっこりと笑みを浮かべた。

　それはほら、何もしないで誰かが解決するのを待っていると大体、巻き込まれるから。

「さ、攫われた後は、どうするんですか？」

「…………」

　僕は先ほど浮かべた笑みを全力で維持し続けた。

　それはほら、何もしないで誰かが解決するのを待っていると仲間たちが助けてくれるから。

「ちなみに聞いた話によると、その手の作戦は既に騎士団で提出され、手当たり次第に噂を試したそうですが、誰一人として消えなかったらしいです。そうですよね？」

「は、はい。その通りです。何しろほとんど糸口がない状態で……」

　エヴァが監視役の方を見ると、軽鎧姿の青年が情けない表情で答える。

　あ、はい。そうですよね。僕でも簡単に思いつけた事を彼らが思いつけないわけがない。

「神隠しの被害者のほとんどは戦闘技能を持たない一般市民、そうでなかったとしても学生だとか新人ハンターばかりで、高レベルハンターや帝都で高い役職にある影響力のある人はほとんど被害にあっていないそうです。消えた人々の情報をまとめ傾向を分析した結果――まるで神隠しがターゲットを選んでいるかのようだ、と。そうですよね？」

「！？　ど、どこでそれを――」

　探索者協会からの監視役がぎょっとしたようにエヴァを見る。エヴァさんの情報網が強すぎる。

「皆が躍起になって調べているのに、それを嘲笑うかのように消える人は増え続けているそうです。帝国は…………宝物殿が発生している可能性も視野に入れていると」

　宝物殿が発生、か。こんな町中でそんな事ある？　常識的に考えればありえない。宝物殿は人里離れた場所に発生するものなのだ。

　特に、帝都は屈指の人口を誇る大都市、マナ・マテリアルは宝物殿を顕現する前に帝都の人々に吸収されてしまう事だろう。

　しかし、宝物殿までは考えすぎだと思うが、さすが国の機関が複数協力して調べているだけの事はある。

　この短時間でそこまで調査分析するなんて――僕がその事件に関わっていたらきっと初日に消えていただろうな。運悪いし。

　ところで、監視役の人たちがさっきからこちらを見ているのは何なのだろうか？　まさか僕のアドバイスを期待してたりする？

「……まぁ、僕から言える事はないかな。謹慎中だし」

「！？　ま、まぁ、それはそうなんですが……」

「それに、そこまでわかっているなら後少しで解決できるんじゃないかな。国の機関が幾つも協力して事態の解決に取り組んでいるんだし、神が関わっていないんだから楽勝でしょ」

　さすがの僕も神の幻影が関わっていたら即帝都から逃亡だったのだが、そこの部分だけは否定されている。

　原因がなんなのかは知らないが。神が関係していないのならば、このクランマスター室はほぼ安全だ、多分。

　そこで僕はナイスアイディアを思いつき、指をぱちんと鳴らした。

「ああ、そうだ。せっかくサヤが来てるんだから手伝ってもらったらいいんじゃない？　サヤの能力は正直、かなり凄いよ。レベルだって高いし、彼女の『さらさら』は、今回の事件の解決にぴったりだ。うん、それがいい！　決まり！」

　さらさらが何なのかはまだ良くわかっていないが、なんだってできると言っていたサヤならば問題ないはずである。

　そして、事件が解決すれば僕の謹慎も緩和されるだろう。仕事してはいけないはそのままで外出くらいは許可されるのがベストだ。

　今のところなんの問題もないが、この謹慎が長く続いたらさすがの僕でも暇になってしまうかもしれないし……。

「…………他国のハンターに解決されたらそれはそれで問題が起きそうですが…………はぁ。わかりました、とりあえず話してみます」

「頼んだよ。ルシア一人じゃちょっと心配だったし、それで駄目ならその時はまた考えるから。…………これくらいなら何かやった内には入らないよね？」

　

　一応確認すると、監視役の人たちに目をさっと逸らされる。どうやらぎりぎりOKのようだな。

　エヴァが冊子を机の上に置いて言う。

「お役に立つかはわかりませんが、一応、現時点でわかっている情報をまとめておきました。ルシアさんが来たら渡しておいてください」

「んー、ありがとう。助かるよ。エヴァって本当に人がいいよね」

「…………恐縮です」

　本当にありがたい話だ。クラン運営だけでも手一杯のはずなのに、ルシアにまで気を使ってくれるなんて。

　僕にエヴァの給料を上げる権利があるなら上げるんだけどね（ちなみに権利は本人が持ってる）。

　冊子にチラリと視線を向けると、僕はもう一度大きく欠伸をして、スマホを取り出した。

§　§　§

　報告を終え、クランマスター室から退出する。

　謹慎中の《千変万化》を監視するために各機関から派遣されてきた者達が戸惑い混じりの表情で話し合っている。

　その間に流れているなんとも言えない空気に、エヴァは眼鏡を押さえため息をついた。

　おそらく、クライの態度が余りにもレベル８とは思えないものだったからだろう。

　監視役達がやってきてから、クライは掛け値なしに何もやっていなかった。

　クランマスター室に閉じこもり、宝具を磨いたり本を読んだり、昼寝をしたりしているのみ。監視をつけられるという不名誉な対処にも文句一つ言う事なく、時には監視役にお茶でも出してあげてよなどと言い出す始末。事件を調べるのは疎か、何ら生産的な事をする気配もなく、彼の立場を知らなければ、監視役達もきっとクライをただの怠け者と断じていただろう。

　

　各騎士団を始めとした著名な機関から送り出された監視役は二十四時間体制でクライの監視を行っていた。

　現在帝都中でまことしやかに囁かれる神隠しの噂。その対処で人手も足りないだろう状況でのこの監視の数。エヴァには帝国側の思惑がはっきりと見えた。

　そう……《千変万化》の影響力を弱めるという思惑が。

　功績をあげすぎて報酬を払えないなんて単純な理由などではない。

　単純に、《千変万化》はやりすぎたのだ。探索者協会が帝国側に配慮せざるを得なくなる程に。

　クライ・アンドリヒは最近帝都で発生してきた大きな事件のほとんどに関与し、それを解決してきた。

　だが、それらは本来、一ハンターが解決するような規模のものではないのだ。

　本来ならばそれを解決しなければならなかった国家機関があり、そして各機関への評価は《千変万化》が事件を解決するたびに低下している。

　国民の目も厳しくなってくるし、何か起こるたびに事態への解決をハンターに頼っていては国としての評価が落ちる。ひいては国力の低下に繋がりかねない。

　それは、トレジャーハンターの優遇政策を打ち出し優秀なハンター達の聖地と呼ばれる程になったゼブルディア故の問題とも言えた。

　といっても、本来ならば優秀なハンターは多ければ多い程いいものだ。

　優秀なハンターと共に働けばそれに学び、引き上げられるように他の者達のレベルも上がっていくはずだからだ。それは、帝国側がハンター優遇政策を取っている理由の一つでもある。

　《千変万化》というハンターの唯一にして最大の問題点を一つあげるとするのならば、クライ・アンドリヒに付き合ってもクライ・アンドリヒのような能力はつかなかった点になるだろう。

　災厄の如くあらゆるものを襲う限界ギリギリの試練は確かに、それに巻き込まれた人々の能力を大きく上げたが、それで《千変万化》に匹敵するような人材は生まれなかった。

　未だに『千の試練』はそれを受ける者にとって想定外であり、大多数の人にとっては恐れるものでしかなかった。

　多分、皇帝の護衛依頼を出していた段階では、まだクライは帝国にとって、極めて有能なハンターに過ぎなかったはずだ。だが、予言騒動から始まるユグドラ攻略成功、コード攻略成功の三つの大きな戦果によって、評価が変わった。

　これ以上その力を借りるのは影響が大きすぎる、と。

　探索者協会から謹慎保証金として提示された莫大な額は探索者協会単体で出せるものではない。それが、《千変万化》の評価を示している。

　今回の事件の解決には国の威信がかかっている。帝国は《千変万化》以外のあらゆるものを使って今回の事件を解決するつもりだ。

　難しい表情で話し合っている監視役達をちらりと見る。彼らについては、本来ありえない理由でマスターを謹慎処分にされたエヴァとしては思うところもあるが、同時に同情の余地もある。

　エヴァが報告した通り、未だ帝国機関はどこも神隠し事件の解明には至っていない。クライは「帝都の調査機関って優秀なところばかりなのに、そりゃ大変だねえ」などと皮肉めいた事を言っていたが、調査機関は決して無能ではない。《千変万化》がおかしいのだ。

　監視役は何もしない《千変万化》に違和感を感じつつ、内心ほっとしているだろうが、エヴァは知っていた。

　その青年にとって、何もせずに事件を解決するなど容易い事だ、と。　

　何もしないよう、部屋から出ないように監視していたなど、何の安心材料にもならない。

　エヴァは今回、彼らにできるだけ情報を与えるようにクライと会話を交わした。だがこれ以上は無理だ。

　後はクライが謹慎に飽きる前に彼らが解決してくれるのを祈るのみである。

「サヤ・クロミズは地下の訓練場です」

「ッ…………協力に感謝する」

　強張った表情で会釈をして散開する各機関のエリート達。

　その姿を見送ると、エヴァは最後にクランマスター室を振り返り、上機嫌にスマホを弄り始めているクライを確認した。

　部屋から出もしない男と、組織だった調査で事件の解決に動いている帝国。

　果たしてどちらが勝つのか、エヴァには予想もつかない。