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今日から始める脳梗塞  作者: おっとり魚
第三部 退院、それから
32/61

締めの言葉

 一つ自分にはどうしても理解に苦しんだことがある。

それがいわゆる殉死というものだった。

滅びゆく国に殉じて死んでいく人は、なにを思って命を投げ出したのだろう。

それが今一度民衆の奮起を呼び起こすことを期待したのか。

しかし悲劇の死は後に伝えられはしたが、それで滅んだ国が逆転勝利したケースというものも実際はない。

みんなただ無駄死ににしかならなかったわけだ。

なら新しい国に仕えて命を長らえたほうがいいのではないか? というのは当然の疑問だと思う。


ただこの問題はそうではないらしいということが、ここに至って自分にも少しわかってきた。

これは逆転を狙った行動ではなく、自分が楽になりたいから行っているただそれだけの行動だったんだろうなと思う。

え、一緒にするなって? 確かに怒られるかもしれない。

しかし自分はその境地になってしまったので、言い訳のために続けさせて欲しい。

生き伸びて恥の中生き続けるくらいなら、国でも主君でも、嫌な奴への面当てでもなんでも理由をつけて、自分がただ楽になりたいだけだったんだと思えば、あとのことなんかどうでもよかったわけだ。


自分の死生観は初めて麻酔で眠らされた時、あの無を味わった時にはっきりしたと思う。

そして母親に最期に言ったセリフ「他人の人生は他人の人生だから、あんたが死んだ後まで責任を感じることはない」。

そして「命が一番大事」と言われた時自分の中に生まれた猛烈な反発。

自分には全てが繋がった気がした。

それで自分が一番楽になる方法もはっきりした。

生き続ける辛さより、楽になりたいだけなんだ。

結局自分のために人は行動する。

我を通すということはそういうことで、それ以上の意味は別にないんだろうな。


楽な道をずっと選び続けてきた自分が最期に選ぶ道も、やっぱり楽になることだった。

それがどんな余波を他人に及ぼすかはこの際知ったことじゃない。悪いけど。

死んだあとのことはもうわからない。

自分が見送ってきた人たち、もう死んだ過去の人は二度とこの世に関わることはない。

それは時が過ぎれば過ぎるほどそうだった。

仮に転生していたって、前世の記憶が引き継がれるわけもない。

それはもうただの他人で、創作のように都合よく過去の記憶を揺さぶられることなんてないのだ。

なら自分が死んだ後のことを思い悩んでも仕方ない。

そう思えば今まで楽な道だけを選び続けた結果、自分がツケをためこんで人より早い段階でそれを一気に払う羽目になったことも、納得できないことはない。


というわけでひと足お先に自分は楽になります。

生活保護の理念というものがどういうものかはよくわかった気がします。

実は扶養照会とかその辺の問題は、本当にただの入り口の問答に過ぎません。

その辺は十分柔軟な対応でした。

これは場所や人によってまた違うのかもしれません。

今問題視されているからって感じでもなかったので、やっぱり地域性が出るのかもしれません。


別に自分は制度や役所批判がしたかったわけではないので、そこはお間違えいただきたくない。

ただおすすめできるかと言えばそんなことはないと思う。

楽にお金がもらえる制度だなんてとんでもない。

そんな気持ちでうっかり関われば神経病みますよとは言っておきます。



16年と18年に骨折、20年に脳梗塞と来て2022年はなにがあるかと思っていましたが、まさか「2022年が来ない」とは思っていませんでした。

転生が無理なら未来からタイムマシンがお迎えに来ないかなと思いますが、どうやらそれもなさそうです。

時間移民するには年寄りだしなあ。血液交換すらしていないし。

まあこのがっかり具合も自分にはお似合いだったのかも。

結局凍った鐘は二度と鳴らず、砕け落ちるだけでした。

まあ自分で死に方を選べただけよかったかなと思っておくことにします。


万が一なんらかの大逆転があったら帰ってきます。

その時は大いに自分の恥を晒してわらいものになろうと思います。

乞うご期待。

このままでも十分だって? ほっとけ!




続、笑いの中で終わりたい


 というわけで舌の根も乾かぬうちに、赤っ恥馬鹿が帰ってきました。

本当にあっさり申請は許可されました。

許可まで二三週間かかると言われましたが、結局申請から一週間ほどで完了。

生意気言ってごめんちゃい、てへ。


当然今後長く生活保護の受給という甘い蜜に与ろうなどとすれば、また家の処分の話は現実味を帯びてくるとは思うのですが、一応猶予はもらえたようなので、その機会に一刻も早く生活を立て直していきたいと思います。

まあ就職活動はコロナのせいもあって本当に酷かったりするのですが……それはまあ置いておきます。

時間はもうないと思っていたけど、その時間が得られただけでも十分です。

時間がなくなったらまたページの最初に戻ってくるだけですから、先に腹が決まっただけでもまあよかった。

どのみち五十路もそろそろ見えてきてこの先あと何十年も生きるわけじゃないけど、とりあえず生きていける間くらいは生きていこうと思います。



なんとかマイルドに終わらせようとなるべく言葉を選んではいたのですが、どうしてもメンタルは沈みきっていて、もうなんにも手につかなかったので、支給が決まるまでのたった数日で数百回自分の中で自分を殺す以外の思考は全くできませんでした。

辛うじて集中できたのは本とか漫画を読んで浸る時くらいだったのですが、この時読んでいた本がまた後味の悪い話だったのでさらに凹みました。

昔大地震の後余震に震えながら読んでいた漫画は、お気楽なお色気ギャグ漫画だったのですが、とっくに打ち捨ててあったそれがあの時だけ妙に心にしみたのは覚えています。

あの漫画どこにやったかなあ。有事に備えて常備しとかないと駄目か。



やっぱり他人を非難するより自分が恥をかいているのが一番楽だというのがよくわかりました。



まだまだネタはあるし、さらに出てきそうな問題、あまり笑えない話もないことはないのですが、ひとまず脳梗塞だけの話はそろそろもうなさそうなのでキレイに締められる今のうちにこれにて終わり!

2022年の新たな病気かそのうちあの世でまた会いましょう。

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