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「10年後もお互い独身だったら結婚しようか」と言った高校時代の親友(国宝級イケメン)と10年後に再会して結婚した話  作者: 水嶋陸


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こぼれた本音5


 「……昨日、お見舞いに来てくれて嬉しかった。ぼろぼろの病人姿を見せても引かへんし、親より甲斐甲斐しく世話焼いてくれるし。子どもみたいに手繋いでってお願いしても茶化さんと応えてくれて、朝起きるまでずっと側で見守ってくれた」


 疑い深くて臆病な自分に愛想を尽かさず、何度も手を差し伸べ、歩み寄ってくれた。隣にいるだけで楽しいと笑って、心も体も温かく包み込んでくれた。いつだって莉子の気持ちを汲んで、当たり前に尊重してくれる。


 だからこそ――


 「私、凪には素直に甘えられる。凪が好き。めっちゃ好き。だから他のひとの機嫌取らんと、これからもずっと側におってほしい……!」


 心に纏っていた鎧を脱ぎ捨てると、信じられないほど楽になった。


 凪に強く掻き抱かれ、涙が溢れる。自分からも凪の背中に腕を回してぎゅっと抱き返せば、凪の腕の力が増して痛いほどだった。身じろぎすると、察した凪がすぐに力を緩めてくれる。


 けれど決して離そうとはせず、後頭部に手を回し、愛しくてたまらないといった態度で抱き込んでくる。この時、彼が気を張っていたことに遅れて気付いた。 


 「待たせてごめんな。ずっと強気な態度取ってたのに、緊張してたん?」


 「当たり前やろ。初めて好きになった子で結婚まで考えてるんやで? 絶対外されへん案件やん。そら緊張くらいするわ」


 はー、と長いため息を吐き、莉子の背中から腰の後ろに腕をスライドさせる。二人の間に空いた隙間に片手を滑り込ませた凪は、莉子の濡れた頬に手を添え、指で涙を拭って額にキスを落とす。 


 「お試しの期限切ったのは自分にプレッシャーかけるためやったけど、その前に莉子が好きになってくれてほんまによかった。たぶん今日が人生の最高潮や」


 「ふふっ。大袈裟やな。これが最高潮でよかったら、毎日更新したる」


 「はは。男前過ぎるやろ」


 穏やかな空気が流れる中、またも凪のスマホに着信があった。莉子が不安げな表情を見せたことで誤解してると察し、凪が電話の相手を告げた。


 「え? さっきのは楓さん?」


 名前を聞いて愕然とする。 


 「わざわざ席立つから私てっきり――。誤解するような態度取らんでや」


 「別にそんなつもりなかったけど、勝手に想像してヤキモチ妬いたの莉子やん」


 「くっ……!」


 「まぁ嬉しかったし結果オーライってやつやな。姉ちゃんには感謝せんと」


 ご機嫌な様子で再び莉子の額にキスを落とした凪は、頬にもキスを贈り、そのまま唇を重ねようとした。莉子が咄嗟に手を差し込んで防ぐと、掌に唇が触れた凪は抗議の眼差しを向けた。 


 「……なんで? 今めっちゃいい雰囲気やったやん。焦らす場面ちゃうやろ」


 「っそういう問題やない。私すっぴん部屋着やで? こんな状態ではじめてのキスとか絶対嫌!」


 「は? 初めて? 何それ最高やん」


 「!!」


 アラサー喪女と知られて身悶える。痛恨のミスに打ちのめされてぷるぷる震えると、凪は再び顔を近付け、念を押すように言う。 


 「言っとくけど、女性に処女性とか求めてへんで? ただ相手が莉子やから――」


 「わ、分かったから! お願いやからちょっと離れて! でこの件にはもう触れんとって!」


 「了解。じゃあ初めては全部、これから俺とゆっくり経験してこーな」


 「!!!!」


 両手を顔の横でホールドアップした凪が、警戒心むき出しの莉子を宥めるように笑う。けれどすぐに真剣な眼差しに変わり、腰が砕けるような色香を放って耳に唇を寄せる。 


 「とりあえずはよ体調全快して。大人しく『待て』してた分、たっぷりご褒美貰うつもりやから。よろしく」


 ハスキーな甘い声にゾクッとして、背筋に痺れが走る。再び抱き寄せられた莉子はとんでもない手練れに捕まったと内心慄きつつ、凪の胸に顔を埋めた。



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