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「意外と好かれてる?」

「ヘイヨー! 先輩くん元気かヨー! あ、あ、杏ちゃんは元気ダゼ! チェケラッ!」


 杏ちゃんから電話があったのは、その日の夜のことだった。

 しかもなぜかエセラッパー風の、凄まじい勢いで。

 プールで一日遊びまくってこちとらけっこう眠いってのに、このコの体力は無限なのか?

 俺が小学生の時ってこんなだっけ?


「はいはい、元気だよー。どうかしたの杏ちゃん?」


「うぉおぉおい! ノリ! ノリが悪いぜ先輩くーん! バッドだぜメーン! つーかなにヨ? そんなツレない感じでイイノーッ? お姉ちゃんが今なにをしているか教えてあげないヨーッ?」


「KWSK」


「ふふーん、そうでしょうともそうでしょうともー」


 エセラッパー調をやめると、それ見たことかとばかりに得意げに杏ちゃん。


「なんとびっくり、お姉ちゃんは今お風呂に入ってるのです。つまり今だったらどれだけ騒いでも勘付かれる恐れはないわけで……」


「うおおおおお風呂ぉぉぉぉっ!? もっともっと! そこんとこもっと詳しく! 渚ちゃんがどこから体を洗うのかとか、そもそもお風呂の構造はどうなってるのかとか、あ、あと水音なんかも聞こえると最高なんですがががががっ!」


「う、うん……ちょっと先輩くんさすがにそれはキモい」


「おっと失礼、感情がたかぶりました」


「いやいやたかぶりすぎでしょ男の子……」


 あまりにも前のめりすぎたのだろうか、あの杏ちゃんを引かせてしまった。

 いかん、今後渚ちゃんと恋人つき合いをしていく中で、最も重要なキーパーソンとなる彼女の心証を悪くするのは非常にまずいと焦っていると……。


「ま、いいか。それぐらいの人でないとあのお姉ちゃんの相手は務まらないだろうしね」

 

 杏ちゃんは海より広い心で許してくれた。

 いいコ、とてもいいコ。


「ゴホン。ともかくそんなわけで、今ならけっこう声を大きくしてもお姉ちゃんにバレる必要はないと。んでね、あたしが教えたかったのはお姉ちゃんが今日、やたらと日焼けを気にしてたってこと」


「ん? なんで? 日焼けすると何かまずいの?」


「はああーっ、わかってないなあ先輩くんはあーっ」


 オーマイガッ、とばかりに煽ってくる杏ちゃん。


「あのね、女の子にとって白い肌ってのはステータスなの。美白こそ勝者なの。日に焼けた肌が健康的でいいよねなんてゆーのは、女心のわからない男どもの戯言なんだよ」


「そ、そういうもんなのか……」


 日焼け部分と白い部分のコントラストがエロくて好きなんだけどとか思っててすいません。


「まあ先輩くんあたりは日焼け部分と白い部分のコントラストがエロくて好きなんだけどとか思ってそうだけど」


 なんだ君エスパーかっ!?


「とにかくこの世のたいていの女子にとって、紫外線は天敵なの。でもね、お姉ちゃんは今までそんなの気にしたことなかったんだ。日焼け止めも何もせずにあの肌の白さを保ってるのが驚きなんだけど、とにかく何もしてこなかったの。でも今回はきっちりばっちり日焼け止めを塗ってた。んで家に帰ってからも腕を裏返して表返して確認してるの。あれたぶん、お風呂の中でも同じことしてるんだと思うよ。足とか、お尻とかさ。それってなんでだと思う?」


「えっと……なんで?」 


「先輩くんに好かれたいからだよっ」 


 それぐらい別れよとばかりの即答。


「マジで? そんなことある? 『東中学校の氷姫ひがしちゅうのこおりひめ』と名高い難攻不落の渚ちゃんが、俺如き塵芥ちりあくたのような存在に?」


「……うちのお姉ちゃんもだけど、先輩くんもたいがい自己評価低いよね。まあおっけ、じゃあまず、状況証拠を揃えてみようか」


 ええと、渚ちゃんは今までまったく見てくれを気にすることなく、私服は親に買ってもらったものをそのまま着ていたが、最近では杏ちゃんに色々聞いて、おめかしを勉強するようになっている。水着のチョイスも杏ちゃんによるものだ。

 日焼けを気にするようになったのもここ最近。んで、渚ちゃんに起こった最近一番の変化は、俺とつき合い始めたことだ。

 となると……。


「お、おお……っ、たしかにっ! たしかにそうなるのかもっ!?」


 俺は思わず声を荒げた。


「渚ちゃんって、けっこう俺のことを気に掛けてくれてるのかもっ!?」


「とゆーか、これ以上なくわかりやすいベタ惚れ状態だと思うんだけど……」


「そ、そこまで言っていいんですか師匠っ!?」


「誰が師匠か。まあでも、そこそこ自信は持っていいと思うよ? あの人、感情が表に出ないから勘違いされやすいけど、実はけっこう……おっと、誰か来たようだ」


 どうやらお風呂から上がった渚ちゃんが近づいて来ているらしい。

 杏ちゃんは電話を終える旨を告げると、最後に数言。


「あのね、先輩くん。これはまだ気が早いかもしんないんだけど……」


 と前置きした上で。


「あんなめんどくさい人とつき合ってくれてありがとね。あんな性格じゃあ一生彼氏も出来ないし結婚だって出来ないと思ってたからさ、あたしはけっこう嬉しいんだ」


 ヒヒヒと笑うと、杏ちゃんはこう言った。


「これからも末永く、よろしくしてあげてね」






 ~~~現在~~~




「……なぁるほどね、あんただったか。急に兄貴が変わったきっかけは」

 

 話を聞いたちひろが、ジト目で杏ちゃんを見た。


「へっへーん、あの日一日でだいたいの人間関係は把握したからね。先輩くんの自己評価が低いのもわかったし、お姉ちゃんのは言わずもがな。もたもたしてて泥棒猫に盗られるのは癪だもん」


 いったい何の話をしているのかはわからないが、ちひとろ杏ちゃんがバチバチと火花を散らしている。

 渚ちゃんはくーくーと寝息を立てていて。

 ルーはひとり、うつむいていた。

 正座をして、握った拳を膝に当てていた。


「そうか……やっぱり……、あそこがターニングポイントであったのだ……」


 微妙に聞き取りづらいぼそぼそ声で、何かを後悔しているようだった。

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