464 危 機 2
「……というわけで、再び搭載艇で例の森の上空に来たわけだけど……」
「まあ、小型艇だと今回の状況に適した武器がないし、母艦だと大きすぎるから、他に選択肢がないのよね……」
レイコの説明台詞に、コクコクと頷く恭ちゃん。
ファルセットは、こういう話には加われないので、黙ったままだ。仲間外れみたいで、ちょっと申し訳ないな……。
そして今回は、レイアが付いてきている。
何か面白そうだから、だってさ。
ただ、上空から攻撃して魔物を大量に処分するだけだよ? 前回の間引きよりつまらないと思うんだけどさ。
レイアが何を面白いと感じるのかが、よく分からないんだよねえ……。
「1頭ずつちまちまとやるのは大変だから、群れとか集落的なものがあったら、掃射とか大口径の砲で一発とか、効率的にやろう。
そして魔物がリポップするかどうか、センサーで見張っていてね」
「了解! 母艦で改良したセンサーと解析システムを搭載したから、ちゃんと分かるはずだよ!」
恭ちゃんから、元気な返事が。
「うむうむ。では、高度を下げて、目標をスキャンしよう。
試射に使用する武器は……」
「小口径のビーム砲を使うよ。ビームの拡散範囲も強度も自由に変えられるし、パルス状にも撃てるし、木々に当たっても着火しないタイプだから安心だよ」
「……完璧の母!!」
素早く掃討できて、自然環境をあまり破壊しない武器。
うんうん、恭ちゃん、分かってくれてるなぁ……。
私とレイコは恭ちゃんが出した船の詳細を知っているわけじゃないから、そのあたりは全て恭ちゃん任せだ。武器の選択や、設定、照準、発砲とかも……。
まあ、殆どは自動的に行われて、恭ちゃんは最後の発砲許可を出すくらいだろうけどね。『ファイエル!』とか言って……。
くそ、『いつか言ってみたい決め台詞シリーズ』のことごとくが、恭ちゃんに奪われる……。
あ、レイコの奴、私を見て苦笑してやがる。
多分、私が何を考えているかを予想しやがったな……。
お互いを理解し過ぎているというのも、アレだよなぁ……。
「また、増えてる……。
じゃあ、まずは小集団に試し撃ちをするよ。口径10センチくらいの小型砲で出力は弱め、パルスモードで一発だけ撃ってみよう。
ええと、この小集団を選択して、自動追尾モードにして、やや拡散させて集団が攻撃範囲内に収まるようにして、と……。
艦載コンピュータ、目標集団の中心部を狙って、全体がパルスの攻撃圏内に入ることを確認したら、攻撃許可を求めて!」
『指示された条件を満たしています。攻撃命令をお願いします』
おお、流暢な喋り方だ。
自我のない、命令されたことを遂行するだけの自動機械に過ぎないらしいけれど、充分に『機械知性体を愛する人』の恋愛対象になれそうな感じだぞ。
声は、勿論女性のものだし。
これ、女性の声の方が通りやすいし聞き取りやすいからなんだよね。
「よし、パルス1発のみ、……発射!」
キュン!
軽い音がした。
本当は無音らしいけれど、発射したことが分かるように、わざわざ艦橋に効果音を流しているらしいんだよね。
まあ、確かに音がしないと実感が湧かないよねぇ……。
……で、攻撃成果は……。
「あれ?」
「ん?」
「……」
メインスクリーンに映し出された、恭ちゃんに攻撃目標として選ばれた、不運なオークの小集団。
それが、パルス攻撃を受けて壊滅、……していない。
それどころか、無傷。被害なし。
「えええええええっ! そんな馬鹿な!
艦載コンピュータ、出力を上げて、再度攻撃用意! 威力はさっきの2倍、パルスモード! 攻撃目標はさっきと同じ!」
『攻撃準備完了。命令をお願いします』
「よし、攻撃!!」
キュン!
恭ちゃんの素早い指示で、再度攻撃が行われた。
さっきは適当に見ていたけれど、今回は全員がメインスクリーンに映し出された着弾地点を凝視している。
そして……。
「「「着弾しない……」」」
私達の声が揃った。
ファルセットとレイアは、無言。
ビーム武器の光線は、視認できるようわざと色を付けているけれど、パルス攻撃はそれでも見えないのだ。
光速で飛ぶ極小時間のパルスなんか、いくら多少色がついていようが、視認できるようなものじゃない。連続照射モードなら見えるのだろうけど……。
で、とにかく見えないパルス波の着弾を見ようとしていたわけだ。主に標的が吹き飛ぶシーンを確認することによって。
……しかし、標的である魔物達は全て無傷。というか、攻撃を受けた様子すらない。
そして木々や草とかも、強力な攻撃を受けて吹き飛んだ様子が全くない。そよ風が吹いた程にも揺れてさえいない。
「砲の故障?」
「ううん、それはないよ。そうそう故障するようなものじゃないし、もし故障したなら、その旨表示されるから。
そして発射されなかった場合、効果音は流されないし、音声でもすぐに報告が来るし、直ちに別の砲がセレクトされる。
そういうのがなかったということは、ちゃんと発射されたということだよ。
なのに、着弾した様子が全くないということは……」
「ということは?」
「バリアやシールドとかで防がれたか、エネルギーを相殺とか中和とかで、無効化された……」
「「…………」」
恭ちゃんの説明に、無言になる私達。
「……いや、だって、前回の間引きの時は問題なかったじゃん!
魔法も科学装備も爆裂ポーションも、みんな普通に使えたじゃん!
どうして、今回は……」
「それって、前回効いたから、じゃないかな……」
え?
レイコが、何か言い出した……。
「前回、明らかにこの世界のレベルを超えた攻撃によって増加中の魔物がたくさん間引かれた。
これに対処するため、この世界の常識を超えた邪魔が入った場合、それを阻害するための対策が自動的に取られるように設定されている、とか……」
「「…………」」
「レイア、そういうことって、考えられる? セレスがやりそうなことかな?」
セレスと同じくらいレベルを下げて思考能力が制限されているレイアなら、セレスが考えそうなことが分かるかも。
立っている者はクララでも使え、という格言もある。
せっかくこの場にいるのだから、レイアの考えを聞いてみると……。
「分からないわよ!
私はセレスと同じような存在ではあるけれど、分岐元の本体の能力、年齢、知識量、そして個性は大きく異なるし、分岐してから個体として得た経験や知識量もまた、大きく異なる。
セレスはかなり前から存在しているのに対して、私という個体は分岐したばかりよ。
だから、セレスが何を考え、どんな措置を講じているかなんて、分かりっこないわよ!」
「「「あ、やっぱり……」」」
私達の言葉が揃った。
いや、そんなことじゃないかと思ってはいたんだ。
本当だよ……。




