456 間引き 2
「視認した! ゴブリン3匹ね」
レイコが、対象を見つけたらしい。
なぜ、目が悪いレイコが一番最初に……、って、目は今の身体を造る時に治してもらったって言ってたな、確か……。
だから、今掛けているのは伊達眼鏡だと言っていたけれど、セレスに作ってもらったのだろうから、望遠機能くらい付いていてもおかしくないか。
もしかすると、相手の戦闘力が表示されたりして……。
「レイコは手を出さないでね。私と恭ちゃんが練習するから……」
「了解!」
レイコは既に魔法で魔物を狩りまくっているから、練習は後回しでいいだろう。
……練習というのは、勿論魔法の練習ではなく、恭ちゃんから貰った科学装備の方ね。
もう、レイコには魔法の練習をする必要はないからね。
私は科学装備の練習をした後、ポーションによる戦い方の練習。
恭ちゃんは、同じく科学装備と、私が大量に渡している戦闘用ポーションを使った戦い方の練習。
結局、科学装備とポーションは3人共通で、レイコだけがそれにプラスして魔法が使えるわけだ。
「……礼子だけ、ズルい……」
恭ちゃんが何やら少し拗ねているけれど、別に本気で言っているわけじゃない。軽い冗談だ。
恭ちゃんは、他者を羨んだりはしない。
親が金持ちだったり、自分が病弱だったり、頭が良かったり。
そういうのは全部、カードゲームで最初に配られた手札なんだってさ、恭ちゃん曰く。
その、最初の手札から如何に上手く勝利を掴むかが腕の見せ所、ってことらしい。
まぁ、確かに……、
チュン!
あ。
チュン!
「ああっ、私の分を残してよ!」
恭ちゃんが、ゴブリン2匹を瞬殺した。最後の1匹は、私が貰うよ!
チュン!
外した……。
もいっちょ……。
チュン!
よし、命中! ミッション・コンプリート!
……いや、まだまだ続けるけどね。
無駄なエネルギーを使わないよう、対象が消滅するような高エネルギーは投入しない。
ただ、対象を貫通するよりやや弱い程度の出力があればいい。
あまり強力だと、対象を貫通してその後ろにまで攻撃が届いてしまい、無関係のものまで殺傷したり破壊したりしてしまうからねえ。
音も、わざわざ相手に気付かれるような大きな音を出す必要はないから、自分と仲間達に発射したことが分かる程度の、ごく小さな音だけでいいし……。
一応、ビーム武器の射撃練習は、恭ちゃんの母艦内の射撃訓練場でみっちりとやっている。
その他の色々な装備の使い方の練習もね。
だからこれは、今から訓練するのではなく、最後の総仕上げの実地演習みたいなものだ。
なので、私も恭ちゃんも、あまり大きく外すことはない。
……いや、勿論、百発百中というわけには行かないけどね、勿論……。
「香ちゃん、この距離で外すのは、ちょっと……」
「うるさいわっ! 恭ちゃんは、母艦でずっと練習してたんでしょうが、私の何倍も……」
それに、今使っているのは遠距離からの狙撃用ではなく、護身用の近距離武器だ。なので、しっかりと保持するための銃把もないし、狙いをつけるための照門や照星も付いていない。
これは、本当に咄嗟の自衛用に過ぎないのだ。だから、悠長に狙いをつけたりせず、抜いてすぐに腰だめで撃つか、相手に向けて腕を突き出すようにして撃つんだよ。
形も、拳銃型ではなく、一見武器には見えないやつだし……。
タイプ1、だったな、確か……。
タイプ2が拳銃型で、タイプ3がライフル型だっけ。
いや、ビーム武器だから螺旋状の溝なんか施されていないし、現代地球の拳銃にも螺旋状の溝はあるから、小銃型のビーム武器を『ライフル型』と呼ぶのは如何なものか、と思わないでもないのだけど……。
……い~んだよ、細けぇこたー!
「さ、次行くわよ、次!」
「「アイアイ、マム!」」
レイコの指示に、素直に返事する私と恭ちゃんであった……。
* *
「えい!」
どか~ん!
「とりゃ!」
どこ~ん!
「やめんかっ!!」
レイコに怒られた……。
いや、遊んでいるわけじゃないよ? 私も恭ちゃんも、真面目にやっているんだ。
……ただ、爆発性ポーションが入ったガラス球とか、恭ちゃんの母艦製の手榴弾とかを投げるのに、私と恭ちゃんは圧倒的に向いていなかった。ただ、それだけなのだ……。
投げた爆発物が、思った方向に飛ばない。
自分達も被害を受けそうな、至近距離にしか飛ばない。
時々、振りかぶった時にすっぽ抜けて、後ろへ飛ぶ。
……主に、レイコがいる辺りに……。
「私を殺す気かっ! ……と言うか、わざと狙ってない?」
「「…………」」
「ふたりとも、投擲武器は使用禁止!! 投げていいのは、治癒ポーションと閃光手榴弾だけ! それも、後者は絶対に後ろに飛ばさない! いい? 分かった?」
「「は~い……」」
……まぁ、私の爆裂ポーションは、投げなくても目標地点に創造すればいいだけのことだ。
恭ちゃんのアイテムボックスの中にある分は、封印指定かな。
でも、恭ちゃんは超小型の擲弾筒……発射されるのは実体弾ではなく、着弾すると爆発するエネルギー弾……をたくさんアイテムボックスの中に入れているから、それを使えばいい。
というわけで……。
「……次行こ、次!!」
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