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453 代 行 1

「じゃあ、とりあえずセレスが戻るまで、私達がセレスの任務を代行しよう」

「「……え?」」

 う~ん、さすがにこれだけじゃあ、レイコと恭ちゃんにはピンと来ないか……。


「セレスが戻るまで、代わりに歪みの監視任務を引き受けるんだよ。

 恭ちゃんの母艦のセンサーなら、セレス程の早期発見は無理でも、ある程度の大きさになれば歪みを発見できるでしょ。重力異常とか何やらを検知して……」

「あ、うん、できると思う……」


「そしてレイア、歪みが発生すれば、さすがに介入できるよね?」

「歪みが発生し、その時空域の担当者が不在であれば、たまたま居合わせてそれに気付いた者が緊急対処することに関しては、問題ない。……というか、担当者に対して大きな貸しとなり、皆に称讃される。

 ……但し、どうしてそんなところにいたのか、ということに関して説明を求められることになる」


「あ~、それについては、何とか誤魔化して、押し切ろう。

 何、かなり大きな貸しになるだろうから、セレスも文句は言えないよ」

「確かに、そうなった場合、こちらが圧倒的に優位。……問題ない」

 うむうむ。


「……しかし、あんなに進歩した生命体なのに、緊急時の備えがないって、変じゃないの?」

 あ~、恭ちゃんが疑問に思うのも、無理はないか……。

 でも、その疑問に対する完璧な答えがある。

「それは……」

「「セレスだから!!」」

 レイコと、ハモった……。


 でも、これだけじゃあ、説明不足か。

「不老不死の一族には、少子化問題や老後の心配はないでしょ。

 だから、病気や怪我をすることがなく、敵対するような……、いや、敵対できるような(・・・・・・・・)ものもいない、ほぼ万能と言えるようなセレス達にとっては、緊急事態とか万一の場合とかは気にするようなことじゃないんだよ、多分……。

 まあ、『歪み』を発見した時だけは、爆発的に一気に拡大する前に対処しなきゃならないから慌てるみたいだけど、アレも『私達に、慌てているというニュアンスを伝えるためのお約束的表現』に過ぎず、セレスが本当にパニクっているというわけじゃないのかもしれないし……」


 そう言って、チラリとレイアの方を見たけれど、表情の変化なし。

 まあ、個人差……『個体差』もあるだろうから、レイアもセレスのことを勝手にあれこれ言うわけにはいかないのかもね。

 そもそも、レイア自身も少しポンコツっぽいところがあるしなぁ……。

 原住生物わたしたちに合わせるために、知能レベルを落としすぎてるのかな?


「なる程……」

 うん、恭ちゃんはセレスとの付き合いが短いから、あのポンコツ具合をまだよく理解していないのだ。

 セレスは、地球の管理者に頼まれたからというだけの理由でレイコと恭ちゃんをこの世界に転生させてくれて、チート能力をくれて、その後も色々と配慮してくれているのだから、ふたりにとっては、本当に感謝して敬うべき『女神様』に相当するんだよねぇ……。


 いや、それは、私にとっても同じか。

 前世で私が死んだのは地球の管理者かみさまのミスであって、セレスには何の落ち度もない。

 ただ、私達のために色々と尽力してくれているだけなのだ。

 そして、何より……。


 セレスは、私と友達になってくれた。

 レイコと恭ちゃんにとっても、友達みたいなものだ。

 ……ならば、友のために力を貸すのは、当たり前のことだ!


 我らはKKR改め、KKRC……、いや、それだとファルセットが可哀想か。

「我ら、KKRFC……」

「……あったわね、そういうグループが……」

「あ、私達KKRのファンクラブ、って名乗っていた、ストーカー達……」

 レイコと恭ちゃんが、何やら古い話を思い出したみたいだ。


 ……そういえば、いたなぁ、大学の時に……。

 イカン、嫌なものを思い出してしまった……。

 そして、なぜレイアは『どうして私が入っていないの?』という圧力を込めた目で私を見ているんだ?


 そういうことは気にしないんじゃないのか? ただの下等生物のグループ名だぞ?

 それに、『レイア』はRかLか、分かんないぞ……。

 まあ、多分本当の名は下等生物わたしたちには発音できないから、とかいって、私達にも発音できる適当な呼び名を名乗ってくれているのだろうけど……。


「じゃあ、KKRFCR……、って、長いわ!」

「語呂も語感も悪いわね……」

「もう、『KKRと愉快な仲間達』でいいんじゃない?」

「「…………」」


 あからさまに不服そうな顔だな、ファルセットとレイア……。

 ま、そりゃ私だって不服に思うよ、ふたりの立場なら……。


「まあ、そういうわけで、張り切って行こ~!!」

 うん、ここは勢いで流しておこう。


     *     *


 あれから、数日後。

「恭ちゃん、監視体制の方は?」

「うん、母艦の数を増やしたし、大きめの搭載艇を全部出して、高感度センサーで磁場や重力変動、空間異常とかを常時監視してるよ。

 あと、人間がいない地域には、不可視フィールド発生装置を持たせたロボット兵を派遣してる。

 魔物の状況とかも少しは調べられるかも……」


 恭ちゃんの母艦には、作業用や戦闘用のロボットをたくさん積んでいるものもあるのだ。

 意思があるように見えるほど高度な判断能力があるわけじゃないけれど、言われたことはきちんとやってくれるので、『歪み』の有無や魔物の分布状況くらいは調べられる。

 勿論、セレスみたいに広範囲を精密に調査することはできないし、『歪み』の発見も遅れる。

 そしてたとえ『歪み』を発見できても、レイアに頼まないと何もできない。


 あ、レイアは、あれからずっとお店(ここ)にいる。

 そして、私達に用意させた高価な食べ物や飲み物を大量に消費したり、店員や護衛、お客さん達に色々なことを根掘り葉掘り聞いたりと、やりたい放題だ。

 ……まあ、何かあった時のためにここにいてくれると助かるし、いくら暴飲暴食しても、太ることもお腹を壊すこともないだろうから、好きにさせているのだけど……。

 お菓子代、馬鹿にならないんだよ。コイツ、すごく高価たかいのばかりを、大量に食べやがるから……。


 魔物の増殖にしても、増えた分を全て狩ってバランス調整、なんてことはできないし、さすがにレイアもそんなことに手を出すのはルール違反らしい。

『歪み』に関することじゃないから、その地の管理者以外が勝手に手出しした、という扱いになるとかで……。


 私達も、そこまでは手出ししない。

 セレスも、自然災害とかによる人間の大量死が予想される時には、事前に少しアドバイスをしていたみたいだけど、『歪み』以外では自分が直接手を出したりはしていなかったらしいからね。

 ……但し、怒って神罰を与えるのは、別。

 何だか、女神よりも女悪魔の方が近いんじゃないのか、それって……。


 まあ、とにかく、衛星軌道上から戦艦の主砲で薙ぎ払い、とかをやると、周囲一帯がクレーターと冷えて固まった溶岩に覆われた死の平原になっちゃうから、それは自重。

 魔物のバランスが崩れたのはセレスのせいではあるけれど、そこは地元の人々(じもピー)に頑張ってもらおう。


 勿論、私達も少しはお手伝いするし、セレスが戻ってきたら、その分、何かお詫びの救済措置を要求してあげよう。

 迷惑を掛けた人達には、それくらいの謝罪はさせてもいいだろう。

 戻ってきたら……。


 ……戻ってくるよね?


「ここにいた分身体が戻らなくても、別の分身体が派遣されてくるから、問題ない」

 私の表情から考えていることを察したのか、レイアがそんなことを言ってきたけれど……。

 違う!

 そういう問題じゃないんだ!


 大元のセレスティーヌは同じだから、そこから新たに作られた分身体は、同じなのかもしれない。

 もし記憶とかが共有されていたとすれば、その分身体は、私との会話やエピソードの記憶があるのかもしれない。

 そして、同じ顔で、同じ表情で、前回の話の続きをするのかもしれない。

 ならば、それはあの(・・)セレスと同じだ。


 ……その理屈は分かる。

 分かるけれど……。

 でも、やはりそれは、私の友達の(・・・・・)セレス(・・・)じゃない。

 セレスじゃないんだ……。

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― 新着の感想 ―
レイアがセレスに成り代わる……すこしでも上位存在になる。もしくは留まりたい……ため連絡を取っていない。そして、同様の理由で魔物の増加と種の変更にも関与している。とか(~~)……「おいしいものを食べられ…
分身体に関してはテレポート理論な気がしなくもない、量子テレポートは一度原子を分解して転送先で再構築するので復元された存在は同じ人間だろうかと言う哲学的な問いだ。 分解された時点で複製された自我は転移先…
ケンタッキーフライドチキン?
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