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445 他大陸への旅行 4

 残るは、レイコだ。

 レイコは、果たして、何を出すか……。


 いや、旅の路銀としては、私や恭ちゃんが換金した分で十分だよ?

 でも、レイコとしては、私や恭ちゃんから渡されたお金で買い物をするより、自分が入手したお金で買う方が、気が楽じゃない。

 人間誰しも、誰かから貰ったお金で贅沢するのは、あんまり楽しくはないからね。


 そういうわけで、レイコも私達に続くのだけど……。

 やはり、レイコが自分で手に入れた換金物と言えば、コレだよねぇ。


 どん!


 ……そう、魔物素材。

 レイコが、自分の力で手に入れた、高額換金物だ。

 ……高ランクの魔物の、高値で売れる部分……。

 コカトリス、1羽丸ごと。

 とは言っても、リュックに入るくらいの、小さなやつだけどね。鶏くらいのサイズ。

 これって、ここだとどれくらいの値で売れるのかな?


「…………」

 あれ? 副ギルド長の反応が、あまり良くないぞ?


 このコカトリスって、私の脳内ではそう翻訳されているけれど、地球でそう呼ばれているものとは少し違う。

 確かに毒は持っているけれど、石化能力とかは持っていない。

 ただ、かなり珍しい魔物らしいのだ。これを狩った時、レイコがそう言って見せてくれた。探索魔法で探さないと、普通じゃ、まず見つけられないよ、って言って……。


 あの時、稀少価値で高く売れるかも、って言ってたよね、レイコ。

 なのに、副ギルド長の、この様子は……。


「こっ、ここっ、こっこっ……」

 あ~、こっちかぁ……。

 鶏、再来……。


「こっ、こっ、コカトリス……」

 レイコが、失敗した、というような顔で、ちらりと私の方に視線を向けた。……ほんの一瞬だけ。

 ふはは、先程の、紅玉(カーバンクル)ダイヤをリュックに戻した時に私へ向けた、あの呆れたような顔。

 それを思い出して、私が『呆れた顔返し』をしているんじゃないかと思ったな?


 ……勿論、思いっ切り返してるよ、呆れたような顔を……。

 こういう戦いは、きっちりと反撃しておかなきゃね。

 そして、レイコがコカトリスをリュックに戻すべく、手を伸ばすと……。


 がしっ!


 副ギルド長が、両手でコカトリスを掴んだ。

「……」

「「…………」」

「「「「………………」」」」


 ぐいっ!

 ぎゅっ!


 ぐいぐいっ!

 ぎゅぎゅっ!!


「あの、放して……」

 ふるふる……。


 リュックに戻すため、手を放してほしい。

 そう意思表示するレイコに、涙目で、ふるふると首を横に振る、副ギルド長。

 あ~……。


「……礼子、売ってあげて……」

 見かねた恭ちゃんから、副ギルド長への助け船が出された。

 この状況にあまり驚いていないところを見ると、何度かこれと同じ状況を経験したことがあるな、恭ちゃん……。

 まあ、遣り手商人にとって、さすがに二度も連続でチャンスを逃すというのは、精神的に厳しいものがあるか。

 そりゃそうだよね……。


「売ってあげてもいいんじゃないかな……」

 なので、私からも口添えをした。

 いや、さっきの紅玉(カーバンクル)ダイヤの件では、私も悪いことをしたからさぁ……。

 元々、売ろうと思って出した品なんだから、問題ないだろうし。

 それに、余所で売ろうとしても、おそらく同じことになるだけだろうしね。


「……まあ、いいけど……」

 レイコも、半泣きの中年オヤジに縋り付かれるのは嫌だったのか、私と恭ちゃんの口添えの効果か、それともただ面倒臭くなったからなのか、とにかく売却を了承した模様。

 ありがとうございます、ありがとうございます、と涙目で繰り返す副ギルド長、ちょっとウザいぞ……。


     *     *


 ここの通貨をたっぷりと手に入れて、食事のために恭ちゃんお勧めの店へ来た。

 注文は、全部恭ちゃんにお任せ。ここの美味しい地元料理、名物料理を知っているの、恭ちゃんだけだからね。


「副ギルド長さん、面白い人だったね。恭ちゃんの担当なの、何となく分かるよ」

「何よ、それぇ!」


 私の言葉に笑う、恭ちゃんだけど……。

 副ギルド長さんが自分で担当を買って出たのか、それとも誰かがそう命じたのか。

 危険の臭いを嗅ぎ付け、なおかつ恭ちゃんと相性の良い者を選ぶという、とんでもなく見る目と危機回避能力に優れた者が……。


 まあ、そんなことはどうでもいいか。

 事実として、恭ちゃんと合う者が担当になり、この町は無事、危機を回避できた。

 世は全て、こともなし……。


「お待たせしました~!」

 ウェイトレスさんが、料理を持ってきてくれた。

 たくさん頼んだし、飲み物も注文したから、一度では運びきれず、数回に分けて……。


「おお、来た来た……。いい匂い……」

「美味しそう……」

「このあたりの名物料理、『ロック鳥のエール煮、マルソン仕立て』、『ハイオークの香草焼き』、その他諸々よ。

 ちょっと変わったハーブを使うから、味付けが独特で面白いの!」


 ふむふむ……。

 私達が作る地球風の料理や、恭ちゃんの母艦で作られる未来風の料理と較べるとアレかもしれないけれど、完全自然食だからね。

 レイコは、母艦で作られる料理については『美味しいけれど、高分子化合物をエネルギー変換して再物質化したものなんて、3Dプリンターで作られたみたいで、何か……。

 美味しいけど! 美味しいんだけど!!』って言ってたけど、美味しくて栄養があるなら、問題ないじゃん。

 い~んだよ、細けぇこたー!

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― 新着の感想 ―
宇宙船での食料生産に関して少し気になりました。  他の作品で登場している方法として数種有りますね。   ・重力下同様の生産方。(某機動○士シリーズや超時○要塞シリーズが例)   ・食料の元にバイオテク…
ろうきんで、 「料理は9割コピーなら比較的簡単、最後の1割が難しい」 みたいなこと言ってたが、 その9割コピー料理みたいな味、ってコトかな? 恭ちゃんの母艦の料理って。
球形艦にレプリケーターがあるのか? 恭の艦はローダン+スタトレか レプリケーターでスキャンしておけば、いつでも最高の状態の料理が好きなだけ…チン!
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