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「では、本日はよろしくお願いします」

「お願いしますっ!!」

 私に続いて、元気に王様達に挨拶する、恭ちゃん。

 レイコとファルセットはメイド姿の使用人バージョンなので、黙って後ろで控えているだけ。


 私は、自由巫女・お金持ちバージョン。恭ちゃん……サラエットは、商家の娘・お金持ちバージョンの服装だ。勿論、アクセサリーも高価なヤツ。……この世界では、だけどね。

 今日は招待客としてあちこちを案内してもらうのだから、一応、招待主である王様の顔を潰さないだけの服装をしなきゃね。


 王様側は、王様、宰相様、王太子の、いつものトリオに加え、10歳前後の男の子と女の子が、ひとりずつ。

 男の子の方が、少し身長が高いみたいだ。ということは、女の子より年上かな?

 この年齢だと、女の子の方が成長が早いからね。


 他に、文官らしき人がひとりと、護衛の兵士……王族警護の近衛兵かな……が5~6人いるけれど、まあ、護衛は黒子と同じで、いないものとして扱う(・・・・・・・・・・)、というものだから、員数外だ。

 さすがに、幼い王子様や王女様を、護衛も付けずに部外者に預けたりはしないか……。


「第四王子のヴィトリーと、第六王女のエルレイアだ……」

 ふたりとも、如何にも(・・・・)な王子様と王女様だよ。

「おおおおおおお!!」

 食い付きがいいな、恭ちゃん……。

 うん、知ってた……。


「王子殿下、王女殿下、本日はよろしくお願いいたします」

「うむ、任せるがよい!」

「お任せくださいませ!」


 あああ、精一杯背伸びした返答、可愛い!

「尊い……、ぎゃっ!」

 とりあえず、不審者みたいな顔になってる恭ちゃんの足を踏みつけて、と……。


「では、参りましょうか。

 陛下、見学のご手配、ありがとうございました」

 そう言って、王子と王女の先導で、後ろに黒子の護衛達を引き連れて出発しようとしたところ……。


「……待て! 案内をする息子と娘は決めたが、私と宰相、そしてこの者達も一緒に行くぞ。状況を把握して、以後に備えたい……」

 そう言って、王様が宰相様と王太子、文官らしき男性を手で指し示した。

 おお、『恭ちゃんから世界を護る会』のメンバーが増えるぞ! 助かるなぁ……。


「大歓迎です! 一緒に、世界を護りましょう!!」

 ……どうしてそんなにドン引きなんだよ、王様達……。


     *     *


 とにかく、何やかやで、王城見学ツアー一行が出発した。

 先導役は王子殿下と王女殿下で、ふたりで恭ちゃんを挟むような位置取りで、先頭に。

 その両サイドやや後方に、護衛がひとりずつ。

 下働きの平民がいる場所とかもあるだろうから、ま、当然の護衛位置か。


 私とレイコ、ファルセットは、両殿下と恭ちゃんの後ろ。

 殿下達の説明は十分聞こえる位置。

 文官さんも、私達の側にいる。

 ……多分、案内役の王女と王子が恭ちゃん(サラエット)の質問に答えられなかったり、案内のルートを間違えたりした時のお助け要員か何かなのだろう……。


 更に後ろが王様達で、その側面と後方に護衛。

 ま、王位継承順位が低い末弟まってい末姫すえひめ様よりも国王陛下と王太子を優先して護るのは当然か。

 それに、そもそも王城内なんだ、そんなに危険があるわけじゃない。

 どうせ、主要な見学先には前もって別の護衛を配置しているだろうし。

 正規の装備を身に着けた者も、そこで働いている者にふんした者も……。


 王女と王子が、王様からどこまで説明を受けているのかは分からないけれど、おくすることなく、そして相手が平民だからとあなどることもなく、楽しそうに、元気に案内してくれている。

 ……これは、もてなすべき主賓は恭ちゃん(サラエット)であり、他の3人(わたしたち)はオマケだということ、そして恭ちゃん(サラエット)が大事なお客様だということは教えられているけれど、ヤバいこと(・・・・・)は一切知らされていない、ってトコかな……。


 でないと、もっと不愉快そうか、あるいは逆に怯えてオドオドした態度になるはずだ。

 いくら王族とはいえ、この年齢で、全部知っていてこの自然な態度ができるなら、地球の俳優関連の賞を総ナメにできること間違いなしだ。


     *     *


 私達4人を含めて、総勢15人の大所帯。

 その集団が、ぞろぞろと城内を練り歩く。

 ……まるで、大病院の院長回診(大名行列)だな……。


「ここが、第一特別厨房だ」

 王子様が、得意そうに説明してくれた。

「……何が特別(・・)なんですか?」

 そして、尤もな質問をする、恭ちゃん。


「うむ。ここは、我々王族や大臣達の食事を作る厨房なのだ。ここと第二特別厨房で作られた食事はランダムに配膳され、父上とヴァイス兄様が同じ厨房のものを同時に食されることは、決してない」

「おお、食中毒や毒殺とかで上層部が一挙に全滅、というのを防ぐためですね!

 それ以前に万全の態勢を取っていながらの、更なる用心! さすが王宮ですよね!!」


 目をキラキラさせての恭ちゃんからの賛辞に、鼻をピクピクさせて自慢そうな王子様。

 いや、別にアンタの手柄とちゃうやん……。

 まあ、お子様の可愛い態度なので、微笑ましく見守ってあげるだけだけどね……。

 料理人達は、事前に指示されていたのか、王様達の来訪にも拘わらず仕事の手を止めず、緊張した様子ながらも調理を続けている。そして包丁を持つ手が震えていたりはしていない。

 ……さすが、プロだねぇ……。


     *     *


「ここが、兵士達の訓練場だ」


「ここが、文官達の仕事場だ」


 幼い王子様による案内と説明が続き、……恭ちゃんの口から質問が放たれた。

「あの~、武器庫や宝物庫、非常脱出用の隠し通路とか、王女様の私室とかは……」

「「ていっ!」」

 私とレイコの手刀(チョップ)が、同時に恭ちゃんのアタマに叩き込まれた。


「そんなのを平民に見せてくれるわけがないでしょ!」

 うん、レイコが指摘した通り、そんなトコを部外者に見せる王族はいない……、って、王様達、ちょっと顔色が悪くなってるよ……。

 怒らせたかな? 恭ちゃん、少しはわきまえてよ……。

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― 新着の感想 ―
 後の世に人間の姿になった場合の恭ちゃん女神像が出回りそうだな、そしてあとの二人が恭ちゃんだけ人気が出たと勘違いして自分たちの像も作りそうだな。
機嫌損ねたら世界が滅ぶ相手にチョップとか何してくれとんねん!って心境でしょうね(笑) マジで王様たちの胃に穴が空きそう…
王様は恭ちゃんをどう思ってるんだろう。 胸の大きい女神像しか知らないなら、恭ちゃんは女神セレスティーヌが人間に化けた姿とか思ってるかもしれない。
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