416 護 衛
リトルシルバーの近くに着陸したけれど、今はまだ子供達のところへは行かない。
その前にやるべきことがあるからね。
輸送艇は、今回はもう用済みだ。なので、アイテムボックスに収納。
そのまま、町外れをブラブラと歩いて……。
あ、いた!
『この辺りを纏めている者に会いたいんだけど、繋ぎを取ってもらえるかな?』
のんびりと歩いていた犬に話し掛けた。……勿論、犬の言葉で……。
『ギャアアアアア〜! シャベッタアアアアァ〜〜!!』
また、これかい……。
さすがに、毎回ワンパターンで、飽きてきたよ……。
犬だけに、ワンパターン……、って、うるさいわっ!!
……いや、ひとりボケ突っ込みをやってる場合じゃない!
『この辺りのボスのところに案内してくれないかな? みんなにとって、いい話があるんだけどさ?』
* *
あれから、ボス犬……このあたりのボスは、野良だった……のところへ行き、第一シーズンも含めるともう何度目になるか、いつもの説明を繰り返した。
任務内容は、リトルシルバーの子供達と馬を護り、そして拠点を防衛すること。
報酬は、住処と食べ物、怪我や病気の治療、……そして妻子も一緒に面倒をみてあげる、ということ。……オマケとして、ノミやダニ、寄生虫とかも全部退治してあげる、と……。
いや、もう、瞬殺だったね。
ちょっと『奇跡の力』を見せてあげただけで……。
よし、あとは、猫と鳥で、同じ事を繰り返すだけ。
もう、慣れたもんよ!!
* *
「……というわけで、今日からみんなの仲間になる、犬と猫と鳥達だよ!」
『わん!』
『にゃあ!』
『ピィピィ!』
「「「「「…………」」」」」
「今来てるのは各種族の代表者だけだけど、後で他のみんなもやって来るからね!」
「「「「「…………」」」」」
「ここに住み着く者もいるし、他の家で飼われている者もいるからね!」
「「「「「…………」」」」」
「交代で警備に就いて、みんなを護ってくれるからね!」
「「「「「…………」」」」」
「ど、どうしたの? みんな、様子が変だよ?」
「「「「「…………」」」」」
い、いったい、どうしちゃったんだろうか!
みんなの様子が……。
口を半開きにして、何か、呆けているみたいな……。
「……はっ! い、いえ、その、……あ、ありがとうございます!」
「「「「あっ、ありがとうございます!!」」」」
あ、ミーネに続き、みんなも再起動した……。
事前予告もなく急に連れてきたから、驚いたのかな?
「第一目的は警備役で、みんなの護衛だけど、仲間でありお友達だから、仲良くするんだよ。
あ、ノミとかダニとかはいないから、ベッドで一緒に寝ても安心だよ」
うん、ここでノミやダニを移されるとすれば、それは子供達から犬や猫達へ、だ。
コイツら、私達がいないと風呂に入らないからなぁ。『薪代が勿体ないです!』とか言って……。
……子供達にも、ノミ・ダニ避けの薬を飲ませておくか……。
そして、動物さんチーム用の住処である建物……の形をしたポーション容器を創り、子供達に建物の掃除や餌の提供について説明した。
餌の肉や穀物は、私達3人が来た時に置いて行く。
保存のために、恭ちゃんの母艦でジェネレーター付きの大型冷凍庫を作ってもらえばいいだろう。
解凍機付きで……。
子供達の仕事量が増えるけれど、この仕事がなければ、その分、別の仕事をやるだろうから、変わらないだろう。
仕事がなければ、わざわざ仕事を作るような奴らだからなぁ……。
本当に、この習性は何とかならないものか……。
* *
そして、カオルが帰った後……。
「……ど、どういうこと?」
「いや、言われた通り、私達や馬達を護るための護衛じゃないの? 馬が4頭に増えると同時に手配されたわけだから、主目的は私達じゃなく、高価な馬を護るためだと思うけど……」
「「「「なる程……」」」」
子供達が、突然の動物達の参入に戸惑い、そしてそれなりの理由を考え、納得していると……。
『わん!』
『にゃあ!』
『ピィピィ!』
「あ、こら! 身体を擦りつけたら、くすぐったいでしょ!」
「あはは! 可愛いなぁ……」
子供達に身体を擦りつけて甘える、動物達。
ちゃんと事前に洗ってあるので、ふわふわのもこもこである。
楽しそうに、動物達と笑顔で戯れる子供達。
それは、カオルが望んでいた情景であった……。
『護衛は、女神様からいただいた名誉ある任務だからやり甲斐があるのだが……。
仔人間の相手をするのは、疲れるワン……』
『仔人間は騒がしいし乱暴だから、あまり相手はしたくないニャ……。
でも、女神様のお願いだから、我慢するニャ……』
『こら! 尾羽を引っ張るんじゃないピヨ!
抜ける! 抜けちゃうピヨ〜〜!!』
表面上は、子供達と嬉しそうに遊んでいる動物達。
しかし、その心の中は、結構大変そうであった。
……特に、鳥!
同族以外とは会話できないが、それでも、互いに大変であることは分かる。
なので、そっと目を合わせ、そして楽しそうな演技をして子供達の相手をする、動物チームのリーダー達であった……。




