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思い悩んで

瑠璃ちゃん視点

今日は怜央くんと帰ることになった。

放課後の講習を一緒に受けて、終わってからいつもの帰り道を並んで歩く。あーだこーだと話しているんだけど、どうにも怜央くんの言葉が頭に入ってこない。

授業とかは、ちょっとぼーっとしてても教科書とかを見たら大丈夫だったんだけど、休み時間とかに喋ってる時は、ちょっと聞いてない時があった気がする。気がついたら違う話題になってたり。

きっと原因は正親さんのことだと思う。

あんまり考えないようにしてたけど、考えてしまう。考えないようにしてたら余計に考えてしまっていた。


「武田さん?」


ふと横を見ると、怜央くんが私の顔を覗き込んでいた。

怜央くんは不思議そうな顔をして私を見ていた。


「どうかした? なんかいつもよりボーっとしてるみたいだったけど」

「いつもよりって、私、そんなにボーッとしてる?」

「そ、そういう意味で言ったじゃなくて……どうかしたの?」


怜央くんの眉の両端が下がる。心配してくれてるんだ。

怜央くんに相談……でも相談しても怜央くんも困るだろうから、相談できない。


「ううん。ちょっとさっきの講習でわかんなかったとこ考えてた」

「あーさっきのやつね。僕もわかんなかったけど、暗記系は覚えるしかないよね」

「だよねー」


とっさにごまかしてしまった。『ごめんね』と心の中で怜央くんに謝った。


「あれ? 瑠璃ちゃんじゃん。おひさー」


と、後ろから声をかけられて振り返ると、香恵(かえ)ちゃんがそこに立っていた。


「おっ。そっちの少年は……怜央くん、だっけ?」

「合ってます。お久しぶりです」

「仲良く帰っちゃってー。なに? 付き合ってんの?」

「なっ!?」


思わず赤くなる。チラッと怜央くんを見ると、怜央くんも赤くなっていた。


「アハハハ。冗談だって。そんなに赤くなること無いじゃ……ってマジで付き合ってた系?」

「もう! あんまりからかわないでよ!」

「あははー。怒るな怒るな。怒っても可愛い瑠璃ちゃんよ、怒るでないー」

「バカにしてー。私だって来年からは高校生なんだからねっ」

「アハハー」


私が詰め寄ると、香恵ちゃんは背中を向けてサササッと逃げた。


「これから帰り?」

「二人で帰ってたとこ。香恵ちゃんは?」

「まぁいろいろあってブラブラしてたとこ。暇なら遊ばない?」

「でも……」


怜央くんと帰ってるとこだし…と思って怜央くんを見る。


「いいよ。僕のことは気にしないで、香恵さんと遊んできたら?」

「ありがと。また明日ね」

「うん。また明日」


そう言って怜央くんとは別れた。

そして香恵ちゃんの方を向く。


「何して遊ぶー?」

「んー、ちょっとおしゃべりするか。そーゆー気分」

「じゃあウチくる?」

「いやぁ、恭子いるかもしれないじゃん。ちょっと今は二人の愛の巣には行きたくない気分です」

「……恭子ちゃんとケンカしてるの?」

「そーゆーわけじゃないんだけど……あっ、前の武田の家の近くにモスバーガーあったじゃん。あそこ行こうよ」


香恵ちゃんに手を引かれながら、モスバーガーのある方へと歩いていった。私はその時、財布にいくら入っていたかなと考えていた。


カウンターでハンバーガーのセットを頼んだ香恵ちゃんが、私に飲み物を聞いてきて、私が『アイスティー』と答えると、それを注文してくれて、出来上がり次第席に持ってきてくれるというので席を探して座って待つことにした。


「あ、瑠璃ちゃんもハンバーガー食べたかった? ポテトしか頼んでないや」

「頼んでくれたの?」

「バーガーは頼んでないよ?」

「飲み物だけで大丈夫。ありがと」

「瑠璃ちゃんはあたしにとって妹みたいなもんだからな。このくらい気にすんな」

「妹……」


香恵ちゃんになら相談してもいいかな。

恭子ちゃんと同じで、お姉ちゃんみたいだし。


「あの」

「ねぇ瑠璃ちゃん」

「え? あっ、なに?」

「あーごめん。瑠璃ちゃんこそなんか言いかけてた?」

「なんでもないよ。それで?」

「あー、瑠璃ちゃんって、さっきの、怜央くんだっけ? あの子のこと好きなんでしょ?」

「えっ!?」

「ほら、また赤くなった。顔に出やすいなー」


アハハと笑う香恵ちゃん。

でも少し笑ったかと思うと、ちょっと短めのため息をついた。


「香恵ちゃん、どうかしたの?」

「実はさっきさ、大学のやつに告白されたんだよ」

「うえぇっ!?」

「声が大きい!」


私は口を両手で押さえたけど、香恵ちゃんの声の方が大きかった気がする。

周りをチラチラと見回して、口から手を離して香恵ちゃんに聞いた。


「それで? 返事は?」

「まぁ、簡単に言うとフッた」

「好きじゃなかったの?」

「そーゆーんじゃないんだよ。好きとか嫌いとかじゃなくて、友達としては好きなんだろうけど、彼氏として見れるかって聞かれると微妙なんだよな。もちろんいい奴なんだよ? でも障害が多すぎるっていうかなんていうか……」


珍しく香恵ちゃんがモジモジとして、顔を赤くしている。ちょっとカワイイ。


「そのこと、その人には言ったの?」

「言えるかよ。恥ずかしいわっ」

「なんて言ってフッたの?」

「お前とは付き合えない、って」

「相手の人は?」

「……そっか、って。それだけ。あたし、もうそいつと友達でいられないと思う?」

「えぇ……私に聞かれても……。恭子ちゃんのほうがちゃんと答えてくれるかもしれないよ?」

「恭子には、なんか言いにくくて、さ」

「えっ、恭子ちゃん、まだ知らないの!?」

「だって、今さっきだよ? そんなに早く連絡しないって。たまたま瑠璃ちゃんがいたから、聞いてみただけなのよ」


私、こう見えて、恋愛相談をされるのが初めてです。

キララちゃんの場合は、

『私、ヒロトのこと好きかも!』

『きゃー! やっぱり好きだわー!』

『告白する! 頑張る!』

っていう感じで、キララちゃんのことを見ていることしかできなかったから、あれは恋愛相談じゃないと思ってる。


「まぁ聞いてもらいたかったから、聞いてもらっただけでいいんだけどね。満足」

「えっ、もういいの?」

「うん。すっきりしたし。なんていうの? あたしの大学の先生が言ってたんだけどさ、『悩み事を相談した時点で、自分の答えは八割は出ている』って言っててさ、ようは背中を押してもらいたいってだけの相談なんだよね」


うーん。じゃあ私も答えが出てるってことになるのかなぁ?


「ん? どうしたの、浮かない顔して?」

「実は私もちょっと悩み事があって……」

「ほれ、言ってみ。あたしも聞いてもらっちゃったし、今度は瑠璃ちゃんの番さ」

「んー……」


ちょっと悩んだけど、周りに正親さんと恭子ちゃんがいないのを確認してから、香恵ちゃんに今悩んでることを話した。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると嬉しいです。


久々の中村登場。

しかし重い相談を受ける羽目に。

頑張れ中村! 負けるな若造!


次回もお楽しみに!

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