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味方

「瑠璃っ!」

「瑠璃ちゃんっ」


怜央くんが行ってしまったあと、壁に寄りかかってしゃがみこんでいると、パタパタとキララちゃんと亜里沙ちゃんがやってきた。

キララちゃんはしゃがみこんでいる私を見つけると、目の前に膝をついて同じ目線になり、私の顔を両手で挟んだ。


「どうしたのっ!? 怜央になんか嫌なことでも言われたの!?」

「いららわんえあい」

「えっ!? 何!? 何言ってるのかわかんない!」

「キララちゃん、それじゃあ瑠璃ちゃんもしゃべれないよ」

「あっ、そっか。ごめんごめん」


亜里沙ちゃんに言われて、キララちゃんが私の顔から手を離した。でもほっぺをふにふにされている。


「で、どうしたの?」

「怜央くんに怒られちゃった…」

「怜央が? なんて言われたのよ」

「内海くんにかまいすぎって言われた」

「……えっ? それだけ?」

「え、うん」


キララちゃんが大きくため息をついた。亜里沙ちゃんを見ると、困ったように笑っていた。


「そんなのいつも私が言ってるじゃないの。何をいまさら」

「でもキララちゃん以外の人に言われたの初めてだったし、その、怜央くんに言われたし」

「何よ。私が言うよりも怜央が言ったほうが良かったってこと?」

「そーゆーことじゃないけど…」

「でもわかるかも」


亜里沙ちゃんもキララちゃんの隣にしゃがみこんで私の前に来る。


「怜央くんに言われると、なんか説得力が違うよね」

「亜里沙まで。私の言葉には説得力が無いって言いたいの?」


ちょっと怒ったような口調で言って、亜里沙ちゃんのほっぺをもう片方の手でふにふにする。


「違う違う。怜央くんと比べてってことだよ。キララちゃんはキララちゃんで説得力はあるよ?」

「あんまり納得できないけど、とりあえずいいわ。で、瑠璃はどうするの?」

「どうするって?」

「怜央よ。このままでいいの?」

「よくないけど、謝って許してくれるのかなぁ…」

「私はいつでも瑠璃の味方だからね。別に玲央とかヒロトとか居なくたって瑠璃がいればいいもの」

「わ、私もっ。瑠璃ちゃんとキララちゃんがいればいいかな。エヘヘ」


真剣な顔でそう言うキララちゃんと、笑顔でそう言う亜里沙ちゃん。

私のせいで二人と怜央くんとヒロトくんが仲悪くなってしまうのは、なんだか嫌だ。


「私、やっぱり玲央くんに話してくる」

「なんて言うのよ」

「怜央くんのことは大事だし、大好きだもん。だからこんな私でもいいか聞いてくる」

「えっ、それってこくむぐっ」

「その意気よ! さっきヒロトと一緒に帰ってたから、急げばまだ間に合うわ!」

「ありがと! じゃあ行ってくる!」


私は勢い良く立ち上がって、二人を置き去りにして廊下を走った。

玄関へと向かい、靴を履き替えてまた走った。

いつも怜央くんが通っているはずの道を走る。

そして…


「玲央くん!」

「武田さん!」


互いに走ってくるのが見えて、同時に名前を呼び合った。

そして怜央くんが近づいてくると、そのまま減速。

少し息を整えながら話そうと思ったら、玲央くんは止まらないで私を抱きしめてきた。


「えっ? ちょ、ちょっと、怜央くん?」


何が起きたのかわからずされるがままの私の頭と背中に腕を回す怜央くん。

私よりも少し背の高い怜央くんの心臓の音がバクバクと聞こえる。

怜央くんも走ってきたんだ。


「怜央くん?」

「僕、武田さんが好きだ」

「えっ?」


突然そう言う玲央くん。

回した腕に力が込められて、さらに玲央くんのからだに押し付けられる。


「内海くんに嫉妬してて、それで武田さんには酷いこと言っちゃった。ごめん」

「私のほうこそごめんね。怜央くんに嫌な思いさせちゃってたかも」

「ううん。武田さんは悪くないよ。友達を増やそうとするのは良いことだもん」

「これからはちょっと控えるね。キララちゃんと亜里沙ちゃんとヒロトくんのことも大好きだから、みんなが嫌な思いするなら、内海くんとは友達じゃなくてもいいって思ったんだ」

「僕、いつでも武田さんの味方だからね」

「私も怜央くんの味方だよ」


互いに伝えたかったことを言い終えて、息を整えてから怜央くんの顔を見上げると、思ったよりも近くにあって、それに気づいた玲央くんと目が合う。


「あー……えっと…とりあえず、離れたほうがいい、よね?」


怜央くんはゆっくりと腕を離して、後ろに1歩2歩と下がった。

怜央くんの顔は真っ赤だった。きっとすごい走ってきたのだろう。


「その、さっき言ったことは、忘れてくれると助かるというか…」

「えっ、嘘なの?」

「いや、嘘じゃなくて本心だけど、そのなんていうか、そこまで言うつもりは無かったというか…」


あわあわと混乱している様子の怜央くん。その後ろからヒロトくんがやってきて怜央くんの横に並んだ。そしていつの間にか私の横にはキララちゃんと亜里沙ちゃんもいた。


「怜央…」


ヒロトくんとキララちゃんが目を合わせてから同時に言った。


「「このヘタレが!」」


そう言われてシュンと肩を落とす怜央くん。

その光景を見てアハハと笑い出した亜里沙ちゃん。

笑い出した亜里沙ちゃんを見て、ヒロトくんとキララちゃんが笑い出す。

私はよくわかんなかったけど、なんか楽しくて、とりあえず笑った。



ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると嬉しいです。


怜央くんはヘタレです。

そして内海くんは犠牲になったのだ。


次回もお楽しみに!

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