玲子と達也のデート
私立花玲子。今日は達也さんとデートの日。この前帝都女子学園のお友達四条院明日香さんの助言を実行してみようと思います。
まずはファーストミッションのコーデから。いつも女性を意識しておりますが、今日は可愛い女の子を表現する為に、髪の毛はポニーテール。
耳には揺れるイヤリング、顔は薄くお化粧して、洋服は少し女の子らしいセットアップという感じでいます。
もちろんデート先は遊園地。最初はデパートで買い物という事も考えましたが、四条院さんの案で遊園地に変更しました。
そして彼に思い切り甘えられる乗り物を選んで乗ろうと思います。
約束の時間は午前十時。彼が改札に現れたら車から降りるつもり。本当は改札で待っていたかったんですけど、沖田に止められました。彼の仕事上仕方ない事です。
あっ、達也さんが来た。でもまだ二十分前。どうしましょう。
「お嬢様、ここは十分前位に行くのが宜しいかと」
「そうですね」
俺立石達也、今日は玲子さんが会いたいという事で遊園地のある駅にやって来た。女性は遊園地が好きらしい。
改札を出るとまだ彼女はいなかった。でも道路反対側の少し離れた所に玲子さんがいつも使っている車が見える。まあ訳ありなんだろう。
十分程経つと彼女が車から降りてこちらに向かって歩いて来た。車はそのままだ。
「達也さん」
「おはようございます玲子さん」
「待たれました?」
「いえ」
車で先に待っていたでしょなんて野暮な事は言えない。あっ、車が動いた。そうか玲子さんが俺と会うまでか。沖田さんも大変だな。
「達也さん、今日は玲子と一緒に遊園地で遊びましょう」
ここではセカンドミッション、か弱さを見せ達也さんに頼るという作戦です。
「玲子さん、今日は可愛い感じですね。良く似合っています」
「そ、そうですか。嬉しいです」
ファーストミッション成功です。
「では、入りますか」
「はい」
中に入るとまさかね。
「達也さん、あれに乗りましょう」
「えっ、あれですか?」
例の○○山ジェットだ。どうも女の子はあれが好きらしい。
「良いですか?」
「はい」
今日は日曜日の所為か少し混んでいた。三十分程並んだ後、俺達の順番が来た。俺が先に乗り玲子さんが後から乗る。
安全バーが上から降りて来て肩と膝をホールドすると
「た、達也さん動きます」
この人大丈夫かな?
ガタン、ガタン、ガタン。
頂点に来ると
キャーッ。
一回転目
キャーッ。
二回転目
キャーッ。
右に左にローリングしながら
キャーッ。
キャーッ。
出発点まで戻ると玲子さんが安全バーを握り締めてプルプル震えている。
「玲子さん、降りましょう」
「は、はい」
足が立たない様だ。俺が腕を伸ばすと
「達也さん」
俺の手を掴んだので軽く引いた。何とかシートから立ち上がりゆっくりと降りると後ろがつかえている。
「さっ、降りますよ」
地面までの階段をゆっくりと降りると
「す、すみません。あれほどとは思わなかったものですから」
「玲子さん、あそこのベンチに座りますか」
「は、はい」
ベンチに座ると玲子さんが俺の右腕にしがみついて来た。しっかりと二つの感触が分かる。参ったなあ。わざとじゃないみたいだけど。
「済みません。少しこのままで」
頼る作戦が本当に頼ってしまっています。
私は十五分程達也さんの腕にしがみついて達也さん成分を補給させてもらうと
「済みませんでした、今度はあれにしましょう」
「えっ、あれですか?」
まさかのメリーゴーランド。
「俺もこれ乗るんですか?」
「はい、ご一緒に」
「いやちょっと勘弁して下さい」
「嫌です。達也さんと一緒がいいです」
「…分かりました」
十五分位待ってから
白馬に跨った俺と玲子さんが上下に揺られないが何回も回る。
玲子さんは俺の方を見ながらニコニコしている。俺は彼女の反対側を見ればメリーゴーランドを見ている観客を見てしまう。
とても見ている勇気はない。真直ぐ見ても同じだ。仕方なしに彼女の方に顔を向けた。 なぜか彼女が嬉しそうに微笑んでくる。参った。
やっと終わると
「達也さん、次はあれを」
コーヒーカップだ。可愛い乗り物を選ぶな。ここは並ぶ必要はなかった。
玲子さん、俺にピタリと体を付けてニコニコしながら腕を絡めて来た。ほんとこの人見た目清楚なのに。
これも乗り終えると
「達也さん、今日は手を繋いでいただけませんか?」
うーん、そういう事。まあこういう所だからな。
「良いですよ」
「本当ですか!」
目を大きく開けて喜んでいる。そして俺の左手をえっ?! 恋人繋ぎして来たよ。
「ふふっ、いいでしょ。達也さん」
「…………」
次に乗ったのは、室内でキャラクター達を見ながらボートがレールに乗って動く奴だ。
この人は可愛い乗り物を選ぶな。でも俺の腕にべったりと抱き着いているんだけど。
私立花玲子。達也さん成分をいっぱい吸収しています。女の子らしく可愛い乗り物に乗って彼にピッタリとくっ付いています。
セカンドミッションは成功ですね。さていよいよサードミッションこれは難しいです。
「達也さんお腹すきませんか?」
「そうですね。何か食べますか」
「はい」
時間は昼食時だ。レストラン内は混んでいるのでオープンテラスで食べる事に。ここだと室内より早く座る事が出来る。
俺は大きめのソーセージパンとハンバーガーに五百CCの炭酸飲料だ。彼女はケチャップがたっぷりかかったオープンサンド。それに同じく三百五十CCの炭酸飲料だ。
「達也さん、楽しいですね」
「そうですね」
「午後はボートに乗りたいと思います」
「良いですよ」
生き行く人を見ながらハンバーガーを味わっていると
「キャッ!」
振り向くと玲子さんがケチャップをブラウスにしっかりと落っことしていた。
「やってしまいました」
「ははっ、玲子さんもそんな失敗するんですね」
「私も女の子です。こういう失敗もします。でもこれではちょっと歩けません」
「そうですね」
「土産物売り場で代りのシャツを買って着替えましょう。今の時間なら時間貸しお部屋が取れるはずです」
「…分かりました」
何か引っかかるが。
売店で可愛いTシャツを買うとそのまま併設のホテルに行った。セミダブルの部屋なら一部屋都合つくという。
「玲子さん、俺外で待っていますから着替えて来て下さい」
「駄目です。ここで立っていると不審者に間違われますよ。一緒に中に入りましょう」
「はあ」
「達也さんはベッドに座って待って居て下さい。私ついでなのでシャワーも浴びて来ます」
「…分かりました」
シャワー浴びる必要有るか?
玲子さんは、買ったTシャツを…あれここに置いてある。でもこれ無いと困るだろう。
しかし、この部屋よく見るとベッドはセミダブルだが結構広い。サイドボードは置いてあるし、これスペシャルルームだろう。流石お嬢様だな。
あっ、シャワーの音が止んだ。
ガチャ。
「えっ!」
急いで彼女から目を背けた。バスタオル一枚だ。
「達也さんもシャワー浴びますか?」
「い、いえ、俺は良いです。それよりここにさっき買ったTシャツが」
「ふふっ、達也さん着させて貰えますか?」
「えっ、いやいや」
俺は首が折れる位顔を横に向けている。そして目を閉じてTシャツを取ろうとすると
あれっ、無い。
バサッ。
「えっ?」
「達也さん、目を開けてこちらを見て下さい」
「し、しかし」
「見て下さい!」
ゆっくりと顔を彼女の方に向けて少し目を開けると
「っ!……」
「達也さん、別荘に行った時、次はしてくれるといいましたよね」
「で、ですが」
目の前には一糸纏わぬ彼女の姿が。
わっ、抱き着いて来た。
「達也さん。女の子が好きな人にこんなに一生懸命になっているのに応えてくれないんですか。お願いします。…お願いします」
「玲子さん……」
本当に参った。どうすればいいんだ。ここまで捨て身で来られると、俺の負けかな。でも加奈子さんの事もあるし。
それに俺はこの人に心が向いていない。どう責任取ればいいんだ。
「達也さん!」
「分かりました。俺もシャワーを浴びて来ます」
とにかくシャワー浴びながら考えるか。
ふふふっ、彼がシャワーを浴びに行きました。これで私も…。
……………。
「達也さん、玲子嬉しいです」
サードミッションはハーフコンプリートでした。残念です。でも達也さん、私の…触れてくれました。
これで次の時はミッションコンプリート出来そう。そうすれば正式に許嫁としての立場が固まります。ふふふっ。
――――――
玲子さん、どういう意味?
次回をお楽しみに
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
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宜しくお願いします。




