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達也と涼子久々のデート


 俺はその週の土曜日、授業が終わると早苗と玲子さんと一緒に下校した。少し後ろからは涼子が付いて来ている。


 そして駅に着き、早苗と玲子さんと別れると大回りして駅の反対側にある公園に行った。但しゆっくりと。


 玲子さんが学校とは反対側の改札で迎えの車に乗る時間を計算しての事だ。

 反対側の公園に着くと遠目で改札に車がない事を確かめる。一人でベンチに座っていると涼子がやって来た。




「達也」

「涼子か」

 俺の隣に涼子が座った。しばらく何も話さない。俺も特に話す事が無いのでそのままに時間を過ごした。



「達也、ありがとう会ってくれて。もう二度とこうして二人で会えないと思っていたから」

「…………」



「達也出来ればもう少し大きい公園に行きたい。ここはうちの生徒も通るし」

「隣駅の公園に行くか?」

「うん」



 二人で隣の駅、デパートのある駅に行った。そこで降りるとデパートとは反対側の改札を出て歩いて五分位で公園に着いた。


 公園の中をゆっくりと歩きながら

「…私まだ達也の事が思い切り好き。あなたが命を助けてくれなかったらこうして歩く事も出来ていない。

 だから私一生かけて達也に奉仕…。ごめん、馬鹿な事言っているね。こんな事いう資格無いのに」

「…………」

 涼子は何が言いたいんだろう。


「達也あそこのベンチ座ろう」

「ああ」



 涼子がハンカチでベンチの上をサッと拭いた。

「はい、達也座って」

「いいよ、先に涼子が座ればいい」

「ううん、達也が先」

「分かった」



 二人で座るとまた涼子は静かになった。池の水面をじっと見ている。

やがて涼子が俺の手を持った。特に拒否する理由はもう俺の心の中には無いのでそのままにしておくとそのまま俺の手を涼子の両手で挟んで彼女の胸に押し付ける様にして目を閉じた。


「涼子」

「達也、このまま少しで良い。このままで」


 どの位経ったか分からない位、涼子は目を閉じたままずっとそのままにしていた。



 私本宮涼子。達也と一緒にベンチに座っている。二人だけで。信じられない、そして嬉しい。


彼の手は私の胸に当てている。最初拒否されるかと思ったけど彼は受け入れてくれた。彼には少しだけと言ったけどこうしていると彼と恋人同士だった時の事を思い出す事が出来る。幸せ。


この命は彼のもの。本当は…。でもそんな事絶対無理だと思っている。だってあの時の事全部話してしまったから。私の体を自分自身でどれだけ汚したかを話してしまったから。

でもこうして居られれば…。



 私はゆっくりと目を開けた。達也の顔をじっと見ると

「達也。ありがとう。これでとても心が落着けた」

「涼子…。また苛められているとかじゃ無いよな。もしそうだったら話してくれ」

「ううん、達也や色々な人のお陰で、クラスの人や同学年の人も優しく接してくれる。普通にお昼も皆と一緒に食べているし、女子トークも出来る様になった」

「そうか、それなら…」


「達也、でもね。人の心って狡い物。苛められて苦しくて。自殺までしたのに助けられて、学校の友達も元に戻って優しくしてくれる様になったら…。

 ふふっ、それとも私だけがこんな狡い心を持っているのかな」



 そういう事か。俺は涼子の心の支えになろうと思っている。高校の間だけでも。しかしそれは出来る事にも限界がある。

でもこいつが望むなら。…俺がそれを受け入れられるか。もしその時俺の心が拒絶したら。



「涼子、少し考えさせてくれ」

「えっ?達也私そんな。ごめん狡い事ばかり言って」

「いいんだ。俺はお前を自殺から救った時、妹の涼香ちゃんがお前の事を話してくれた時、どれもこれも時が一秒でも遅かったら、俺はお前を救う事が出来なかった。

 こうして話をする事もなかっただろう。だから俺はせめて高校卒業までか、お前に新しい彼が出来るまで支えるつもりでいる」

「達也……」


「だから少し待ってくれ。心の整理が出来るか分からないけど」



 涼子は思い切り俺の手を彼女の胸に抱きかかえる様にして目を閉じた。そして透明な液体が目から少しずつ漏れて来た。


 また時間が経った。だいぶ周りも暗くなって来ている。まだコートを着る季節ではないが陽が落ちると結構寒くなる。


「涼子寒くないか」

「大丈夫。こうして居れば」


 本当は思い切り達也に抱き着きたかった。もう諦めていた。いや頭の中から消していた事をさっき自分自身で話しているうちに表してしまった。そんな事あり得ない出来ないと思っていた。


 でも今の達也の言葉は私をもう一度受け入れる事が出来るかも知れないと言っている。もちろん恋人同士まではいけないだろうけど。


 それでもいい。私にとっては夢の様な出来事。生きていて達也にこの命を救われて良かった。



「ずっとこのままだと達也が風邪ひいちゃうね。帰ろうか」

「はは、そうだな」


公園から駅までの間、涼子から手を繋ごうとはしなかった。俺の気持ちがはっきりするまでは出来ないのだろう。


 電車に乗って彼女の駅に着く前に

「達也、我儘言っていい?」

「いいよ。十分もう我儘聞いているから」

「ふふっ、じゃあ家まで送って」

「分かった」

 もう外は暗い。言われなくても送って行くつもりだった。



 駅で降りても涼子から手を繋ぐことは無かった。家の玄関に着くと俺に抱きついてじっと俺の顔を見上げた。

「達也、…出来ないからこれだけさせて」

 そう言うと涼子の横顔を俺の胸に付ける様にして俺を抱きしめて来た。俺も仕方なしに彼女の背中に手を回した。

 少しの間そうしていると彼女自身から離れて


「達也、ありがとう。今日はとても嬉しかった。またいいよね」

「ああ」


 涼子が玄関に入ったのを見届けて俺は駅に向かった。




 私、本宮涼香、道路が見える二階の部屋で本を読んで居ると

 えっ、何で。立石先輩とお姉ちゃんが、ハグいや抱合っている。そんなあ…。

 私はそれをじっと見ながら

「お姉ちゃんだけ狡い。私が先輩に声掛けなければ生きていなかったのに」


 心の中に理解出来ない気持ちが沸き上がった。


――――――

涼子、良かったねと言いたかったのですが、まさか別れ際を妹の涼香ちゃんに見られるとは。


読者の皆様へ

 明日からちょっと旅行に行きます。先行予約投稿にしましたので毎日お読み頂く事は出来ますが頂いたご感想の返事が毎日出来ません。ご返事が出来るのは八月十八日からになります。

誠に申し訳ありませんが宜しくお願いします。

ではまた一週間後に。


次回をお楽しみに


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 涼子さぁ…最初100%悪いわけじゃないにせよ主人公に噓ついたりしたし、その後主人公争奪戦やってる女達にも学内で助けてもらったんだから流石に大人しく身を引けよ恩を仇で返すなよと
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