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夏休みは危険が一杯


 私立花玲子。達也さんのお部屋から自分の部屋に帰った私はベッドに思い切りダイブしてしまいました。


「うわーっ、どうしましょう。勢いで達也さんにあんな事してしまった。はしたない女と思われてしまったでしょうか。

 彼の体の上に乗って思い切り素肌をくっ付けて寝てしまい、最後は、パンティまで取って見せてしまいました。

 無我夢中で見せてしまいましたけど、これもそれも彼が私を抱いてくれなかったから。せめて彼の目に私の体を焼付て頂こうと……。うわーっ、恥ずかしいです。思い出せば出すほど恥ずかしい。もうまともに顔を見られない。でも見せてしまった事は済んだこと。でも……」


 気を取り直してダイニングに行くと彼はまだ来ていません。どうしたんでしょうか?

 あっ、達也さんが来た。平気な顔をしています。でも視線が私と合いません。仕方ないですね。

ふふふっ、良かった。私の一糸纏わぬ姿見て何も感じなかったら寂しいですから。


 

 玲子さんが俺を見ている。とても視線を合わせられない。合すとさっきの姿が浮かんでしまう。

 さっさと朝食を食べてしまうか。




 朝食を終えた俺達は城ヶ島経由で下田に出るコースで帰る事にした。


「達也さん、このまま帰っても直ぐに着いてしまいます。城ヶ島で遊覧船に乗りませんか?」

「別に構いませんが」




 城ヶ島について駐車場に車を停めると二人で車から降りて港へ向かう。

「達也さん。綺麗ですね。海も透明感が凄いです」

「ここはそれが売りですから」


「あっ、あっちにチケット売り場があります。買ってきますね」

「いや俺が買います」

「駄目です。いずれは私が家計を預かります。だからここは私が持ちます」

「…………」

 どういう理屈だ。今の?



 遊覧船が待つ間、港や土産物屋を見て回った。家族には何かお土産買って行かないと。


「達也さん、お土産はどなたに?」

 何でそんな事聞くの?


「ああ、両親と妹の瞳です」

 早苗の分も買うけど言ったら何となく不味そうだし。


「そうですか。でも一個多いですよね。桐谷さんの分ですか」

「えっ、…そうです。幼馴染なので」

「…………」

 玲子さん黙ってしまったよ。まあ簡単にばれるよな。




 遊覧船の出港時間になったので、桟橋で並んで乗った。多少の波はあるが大したレベルではない。それに岸から遠くには行かない。


 俺達は足元がガラス状態になっている船室を選んで椅子に座った。

「達也さん、見て下さい。港の中でもお魚が一杯います」

 玲子さん少し興奮気味。


 遊覧船が港を離れると少しだけ揺れたが、大したことはない。ライフジャケットも着ている。


 少し港から離れると岩場の方に近付いた。

「達也さん、外から見ましょう」

「えっ、良いんですか?」

「大丈夫ですよ」


 船室を出て船の側舷を歩いて甲板に出た。船縁に座って海側から陸地の景色を見ていると

「達也さん、気持ちいいですね」

「そうですね」

 船は多少揺れているが玲子さんは俺の内側に座らせている。問題ないだろう。


 岩場に近付いて船が減速してゆっくりと進んでいる。洞窟の中の青白く見える海水や洞窟から見える青空を見ながら洞窟の外に船が出て行った時、玲子さんが立ち上がって

「達也さん、後ろにも行ってみましょう」


 その時だった。船が横から波をくらい大きく揺れた


 キャーッ!。


 玲子さんが海に投げ出されようとしている。大きく傾いた玲子さんの体を両腕で思い切り挟み込み自分の重心を船の内側に傾けた。


 ガツン。


「ぐっ!」


思い切り背中を打った様だ。玲子さんは俺の腕の中にいる。

「助かったあ!」


「「「おーっ、すげえ!!!」」」


 周りの人が驚いた顔で見ている。甲板に居た係員が直ぐに寄って来て

「大丈夫ですか?」

「ああ、大丈夫です」


 少し背中が痛いが大した事は無いだろう。玲子さんを抱きしめていた腕を解くと彼女は直ぐに起き上がって、まだ横になっている俺の側にひざまずいて

「ごめんなさい、ごめんなさい。私が立ち上がらなければ、こんな事にならなかった」

 泣き始めてしまった。


「大丈夫ですよ。玲子さん」


 俺はゆっくりと起き上がると、腕が甲板に付いた時だろう右ひじが少し擦り剝けて血が出ていた。


 甲板に居る係員が、

「船室に応急セットが有ります。取ってきますので動かないで待っていて下さい」

「済みません」

 咄嗟の事で受け身も何も無かったからな。この位仕方ない。玲子さんはまだ泣いている。


 応急セットを持って来た係員から簡単に応急処置をして貰った後、

「もし、時間が経って痛くなったら必ず病院に行って下さい。その時、これを出してください。治療費は我が社の方に請求されます」

会社名と処置費用の請求先が書いて有るカードを受け取ると


「ありがとうございます。まあこの位大丈夫ですから」

「そうですか」

 係員が心配そうな顔をしている。


 遊覧船は、帰りのコースを短縮して港に帰るとアナウンスがあった。悪い事したな。玲子さんがまだ泣いている。


「玲子さん、もう大丈夫ですよ。ほら」

 そう言って応急処置をして貰った腕をぐるぐる回した。


「達也さん、ごめんなさい」

「いいですよ、玲子さん。大切な人を守るのは俺の役目ですから。うわっ!」

 玲子さんが抱き着いて来た。周りに居る他の人が何故か微笑ましい目で俺達を見ている。顔が赤くなって来た。




 遊覧船から陸地に上がり駐車場に行くと、運転席の側になっていた沖田さんが、近づいて来て

「立石様、如何いたしました。そのお怪我は?」

「いや、俺が船の上でちょっと転んだだけです」

「沖田違います」


 玲子さんが遊覧船で起こった事を話してしまった。言わなくていいのに。それを聞いた沖田さんが、深々と腰を折ってお辞儀すると

「立石様、お嬢様をお守り頂き大変ありがとうございました。本来は私の役目。誠に申し訳ありません」


 腰を九十度以上曲げて謝って来た。


「沖田さん、良いですよ。玲子さんは無事だし、俺もこの程度のかすり傷ですんだから」

「しかし…」

 申し訳ないという思いを体いっぱいに出しながら沖田さんは俺の顔を見た。そして


「お嬢様、お帰りになりますか?」

「達也さんにお任せします」

「えっ」

 困ったなあ、何も考えていないんだけど。でも少しお腹空いたか。


「玲子さん、お腹すきました」

「ふふっ、達也さんらしいです。では昼食を摂りましょうか」

 玲子さん、やっと笑顔が戻ったよ。


 俺達は城ヶ島でそのまま昼食を摂った後、下田に出てそのまま自宅に戻った。





 俺の家の車止めに着くと沖田さんが後部ドアを開けてくれて深々とお辞儀をして

「立石様、この度は本当にありがとうございました」


 俺は車から降りると

「沖田さん、お礼はもう十分です。こちらこそ三日間ありがとうございました」

「いえこちらこそ申し訳ありませんでした」


「達也さん、夏休みもう会えませんか?」

「済みません。色々と入っていて」

「そ、そうですよね。無理な事聞いて済みません」

 悲しそうな顔で言わないでよ。


「…玲子さん、調整して見ます。後で連絡しますから」

「はい」

 顔がパッと明るくなった。


 俺は玲子さんを乗せた車が走り去るのを待ってから玄関に入った。


「ただいま」


タタタッ。


「お兄ちゃんお帰り。あれ、右腕のそれどうしたの?」

「ああ、ちょっとひっくり返ってな」

「えーっ、嘘でしょ。お兄ちゃんがひっくり返ってそんな怪我する訳無いよ」

「後で話すから上がらせてくれ」

「お土産は?」

「これ」

お土産の入ったビニール袋を渡すと


タタタッ。


「お母さん、お兄ちゃん帰って来たよー」



 右腕の怪我は、母さんにも船で滑って擦りむいたと話しておいたが、夜に父さんが帰って来て

「達也、立花さんから話しは聞いた。玲子さんが海に落ちそうになるのを身を挺して助けたそうだな。物凄く感謝していたぞ。

 後今回の件、ぜひお願いすると言われたよ。達也、玲子さんから逃げれなさそうだな。はははっ」

「…父さん他人事だと思って」

「いや、そんな事はない。お前は私の大切な息子だ。自慢の息子だ」

「…………」


 瞳が目を輝かしている。母さんは笑顔が一杯だ。


 はーっ、何で静かに過ごせないんだ。おかしいなあ。


――――――


 達也、玲子さんのハートがっちり掴んだ様ですね。本人の意思に関係なく。


次回をお楽しみに


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。




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