早苗と一緒
今日から夏休みが始まった。高校生になって二度目の夏休みだ。ちなみに三頭さんと一緒にデパートに行った翌日、瞳と涼香ちゃんの買い物に付き合った。
やっぱり水着だった。妹の胸は成長中なので仕方ない所だ。でも加奈子さんの様なイベントは全くなく兄と妹と友達という感じで楽しい一日を過ごせた。家族は気が楽でいい。
ところで俺の夏休み、普段は宿題と爺ちゃんのとこで稽古、それと家族で海にという所だが、今年は違ってしまった。一学期の例の三人が俺の大切な夏休みに勝手にスケジュールを入れて来たのだ。
で、今俺の前には早苗がいる。場所は俺の部屋。今日から七月三十一日までに夏休みの宿題を終わらそうという事になった。…俺は急がなくてもいいんだけど。
何故か昔から早苗には弱い。中学二年の時俺から離れてから接触は無かったので気を抜いていたが、最近やたら絡んで来ては前の様な態度で接してくる。
「達也、進んでいる。何かぼーっとしてなかった」
「そんな事は無い。ちょっと分からない所があって」
「どこ?」
いきなりローボードの向こうから身を乗り出して来た。首元がラフなTシャツを着ているから薄水色のブラが丸見えだ。
直ぐに思い切り顔を背けると
「どこよ?顔背けちゃ分からないでしょ」
こいつ絶対わざとやっている。
「早苗、ちょっと自制してくれ」
「何を?あっ、これ良いじゃない小さい時はいつも見ていたんだから」
「おまえ、小学校までの話だろう」
「もう、分かったわ。そっちに行く」
ふふっ、達也顔が真っ赤。でもこいつは女の子に免疫が無かったのに少し付いたのかな?私のブラ見たもんね。前だったら速攻ひっくり返っていたのに。
早苗の奴今度は俺の隣に来てべったりと体をくっつけて来やがった。絶対わざとだ。
「早苗、もうちょっと離れろ」
「じゃあ、早く分からない所教えて」
「ここだ」
「もうこれ期末考査で出た問題の応用でしょ」
本当は分かっているよ。お前が俺をぼーっとしているなんて言うからだよ。
教えて貰って、早苗が元に戻ってから
カリカリカリ。
カリカリカリ。
午前十時から始めたが直ぐに二時間半が経ってしまった。
「達也、ちょっと待っていて」
「…………」
もともと家の事は俺と同じくらい知っている。多分キッチンにいる母さんの所に行ったんだろう。十分位すると
「達也、ダイニングに昼食の準備出来たって」
「ああ、分かった」
ダイニングに行くと母さんが
「ふふっ、懐かしいわね。早苗ちゃんと達也がこうして一緒に食事するなんて。お母さん嬉しいわ。食べ終わったらシンクに片付けておいてね」
「はい」
早苗が嬉しそうに返事した。
食事しながら
「ねえ達也、宿題始まったばかりだけど明日買い物付き合ってくれない?」
「買い物?何買うんだ」
「水着。胸が絶賛成長中で去年の合わなくなってしまって」
早苗だとこんな事言われても抵抗が無い。付き合いが長い所為か。でもチラッと見てしまう。去年が知らないから比較のしようが無い。
ふふっ、達也私の胸見た。少しは興味持ってくれるかな?
「ああ、いいぞ。でももう少し宿題見通しついてからの方が良いんじゃないか」
「駄目、もう遅い位。本当は今月初め位に買いに行きたかったんだけど。達也忙しそうだったし」
「そうだったっけ?」
「まあ、いいわ。明日うちに午前十時に来て」
「分かった」
食事が終わった後、早苗が母さんに悪いからと食器を洗ってくれた。それからまた宿題を始めた。
午後は、三十分の休憩いれて午後六時まで宿題をした。家が隣というのは時間的に大きなアドバンテージだ。
今日の予定分の宿題が終わると
「じゃあ、達也明日十時ね」
「ああ分かった」
翌日早苗の家と言っても隣だが、玄関に行くと
ガチャ。
インタフォーン鳴らさない内に玄関が開いた。
「おはようございます」
「たっちゃん、おはよ。今日は早苗を宜しくね」
早苗のお母さんは昔から俺をたっちゃんと呼んでいる。まあ生まれた時からこの歳までずっと同じだから違和感ないけど。
「はい」
おばさんの後ろから早苗が出て来た。きっちり化粧までしている。
「お待たせ達也」
「…………」
白いノースリーブのトップスに長めのプリーツスカート、花柄の可愛いサンダルを履いている。バッグは薄茶色だ。
目前でくるっと回るとプリーツスカートが軽く華やかに揺れた。可愛いじゃないか。そうだこういう時は
「早苗、とっても似合っている可愛いぞ。うん」
「えへへ、ありがとう。達也と久しぶりのデートだから気を入れたんだ。じゃあお母さん行って来るね」
「はい、いってらっしゃい。遅くてもいいわよ」
へっ?おばさんどういう意味?
行先はやはりデパートのある街。そして同じデパートへ向かう。早苗は幼馴染だが、流石に手を繋ごうなんてしないから助かる。
しかし、このデパートに水着買いに付き合うのはこれで三度目だぞ。どうなってんだ俺?
「達也、このベンチで待っていて。気に入ったの有ったら持ってくるから」
「いや、自分で決めればいい」
「駄目、達也が選ぶの」
そんな事言ってお店に入って行った。お店の人がもう顔を覚えられてしまったのか、どう見ても笑っている様に見える。
俺ボディガードとでも思われているんだろうか?
お店の方を見ない様にして待っていると十分位して早苗が戻って来た。三つも水着を持って来た。
「達也、決まらない。どれがいい」
何故かこいつだと抵抗が無い。
「ああ、黒は止めとけ。水色かオレンジが良いんじゃないか?」
「どっち?」
「じゃあ、オレンジ」
「分かった。そうする」
三頭さんとどこが違うんだろう。早苗と居ると気を使わなくていい。同じ事されても抵抗が無い。これが幼馴染の特権か?
「達也、買えたよ。ありがとう。今度海で見せるね」
「あ、ああ」
言われてはいるけど一緒に行くとは言っていないぞ。
「達也、まだ十一時過ぎだよ。どうしようか」
「早苗に任せる」
「うーん。駅の反対側の映画館行ってみる?そこで上映時間確認して食事にしようか」
「えっ、映画見るの?買い物だけじゃないのか?」
「いいじゃない。せっかく達也と一緒に出て来たんだから」
「まあ、良いけど」
昔から早苗の言う事は余程の事が無い限り断らない。小さい頃から一緒にいた所為なのかな。
上映時間を見ると午後一時から早苗の見たい恋愛物が始まるようだ。
「達也、時間早いけど軽く食事して映画館で待っていようか」
「それで構わない」
食事は〇ック。まあ学生はこんなものだ。俺はハンバーグが二重に入っている奴とコークのL、早苗は魚が挟んである奴とポテチそれにシェークを頼んだ。
「達也それで足りるの?」
「まあ軽くはこんなもんだ」
「そうか、軽くか。…久しぶりだね二人でこうしているの」
「そうだな」
「…ねえ、さっき話した海の事なんだけど」
「…………」
「二人で行きたい。駄目かな」
「…………」
何で二人で行きたいんだ?
「なあ早苗、瞳とか一緒じゃ駄目か?」
「瞳ちゃんの都合合うか分からないでしょ。それに瞳ちゃんも色々あると思うし」
もう昔ながら鈍感なんだから。
「そうなのか。でもなあ早苗と二人かあ。昔は家族で行ったけどなあ」
「いつの話しているの。それ小学校の時の話でしょ」
「そうか。…ちょっと考えるわ」
「じゃあ、夏休みの宿題終わるまでに考えて」
「分かった」
それから俺達は映画を見て…。何故か映画の途中から早苗が俺の手を掴んで来たけど、まあ感激してんだろう位でそのままにしておいた。
映画が終わり午後三時を過ぎた所だ。
「達也、まだ午後三時。散歩しよ」
「ああ」
俺達はそのまま公園方向に歩いた。何故か手が握らている。
「早苗、手」
「……いいじゃない」
「…………」
小さな池の前にベンチがあるがカップルや家族で一杯だ。池を回る様にして歩くとベンチが一つ空いていた。珍しく早苗は何も喋らない。どうしたんだ?
ベンチに座ると早苗は池の方をじっと見たままだ。そのままにしていると
「達也、何か話して」
「えーっと…」
「ふふっ、達也はいつもの通りね。良かった」
何がいつもの通りなんだ?
また、早苗はじっと池を見つめている。何か見つけたのかな?
私、桐谷早苗。達也とこうしてデートするのは中学一年の時以来。あの時はデートって感じじゃなかったけど。
達也は高校に入ってから私の予想に反して色々な女の子と関わった。だから心も影響受けているのかと思った。
私の知っている達也は無口で何も言わない。でも私の言う事は必ず叶えてくれる。水着買う時もう少し恥ずかしがるかと思ったけど、何も抵抗が無かったみたい。
それはそれでちょっと悲しいけど…女性として見られていないのかなと思ってしまうから。
でも昨日わざと首元の緩いTシャツを着てブラ見せたら真っ赤な顔していた。少し成長したようだけど。
いま、私の隣にいるのは昔から知っている達也。まだこの心の状態なら三頭さんや立花さんに負ける事はない。何とか二人で海に行って…。そうすれば彼女達から一歩リードできる。
「達也、帰ろうか?」
「もう良いのか?」
「うん」
ふふっ、帰りはそのまま手を繋いで家まで帰った。ここだけは心が成長したみたい。
――――――
早苗、幼馴染の特権有効に使えますかね?
次回をお楽しみに
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
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