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体育祭でも揉めてます


少し本宮涼子の視点が入っています。


――――――


 中間考査が終わったと思ったら来週は体育祭がある。

去年は、まだ入学したばかりでこんな俺だから、誰も声は掛けられず実行委員の勧めで、綱引きと騎馬戦に出た。

騎馬戦で俺が先頭を担当したが、俺が真面目な顔して突っ込んでいくとみんな逃げてしまい、最後まで残ったという苦い経験があるので今年は止めておこう。



 今年は、どうしたものかと考えていると隣の立花さんが

「達也さんはどれに出るつもりですか?」

「…………」

 出たくないのが本音だ。


「何かに出ないといけないという事です。如何しますか?」

「立花さんはどうするんだ?」

「私はさっきもう決めましたけど?」

 なに俺が聞いていなかっただけか。二人の会話に健司が


「達也今年も騎馬戦どうだ」

「いや、止めておく」

 去年の思いはしたくない。


「そうか、お前が出れば勝てるんだがな」

「苦い思い出だ」


 健司が噴き出しそうな顔で

「じゃあ、どうするんだ」

 まあ、去年の達也の騎馬戦は、相手が怖がって逃げて後ろからハチマキを取って勝ったって感じだからな。確かに気持ちは分かるが。



 実行員がこっちを見ている。

「立石さん、決めて下さい。残っているのは、クラス対抗で綱引きですが、個人戦では四百メール個人と騎馬戦、それに借り物競争です」

 なんだ借り物競争とは?だが騎馬戦に出たくない。


俺は手を上げて

「四百メートル個人と借り物競争にでる」


「「「おおおーっ!!!」」」


 な、なんで皆驚いているんだ?


 健司がこっちを向くと

「達也、四百選ぶとは凄いな。さすがだ」

 

 四百メートル走ればいいんだろう。何が凄いんだ。俺には分からん。




 そして当日。いつもの様に学校の最寄りの駅に着くと立花さんが改札で待っていた。改札を出る生徒や社会人が彼女に視線を送っているのが良く分かる。


 俺が改札を出ると

「達也さん、おはようございます」

「おはよう立花さん」

 手には大きなバッグを持っているいつもより大きい。


「それ、俺が持ちますよ」

「そうですか。ありがとうございます。今日は少し重くて」


 受け取ると確かに思い。お弁当以外に何か入っている様だ。二人で歩いてはいるが、手を繋ぐとかそういう事はない。彼女は俺にとってまだクラスメイトの域を出ていない。

 

それに女の子とのイベントはもういい。もしこのまま続いたら父さんの好きにさせればいい。しかし、これが後一年半あると思うと気が重くなるが。


「如何したんですか、達也さん。何か困った事でも?」

 何でこの人、俺の考え分かるの?


「いや別に何もない」

「そうですか…」


 この高校に転校してきたのは、私が竜也さんに認めて貰う為。それが出来なければ許嫁にはなれない。

 ここに来てまだ一ヶ月だけど、三頭さんと桐谷さんがはっきりとした態度に出ている以上のんびりしている訳にはいかない。しっかりと彼の心を掴まないと。今日の競技もその一つ。


 


 

 私、本宮涼子。四月に私を含めたテニス部の不祥事が学校内で公になって以来、私の学校内における立場は厳しいものになった。


 進学校という事もあってか、露骨な嫌がらせはないが、クラスの人達からは完全に相手にされなくなっている。


今日の体育祭も百メートル個人と玉入れだ。それも私が決めた訳ではない。勝手に決められた。私に近付きたくないのだろう。

あれ以来勉強にも力が入らず中間考査では三十位にも入れなかった。



今私は、クラスの休憩場所の後ろの隅に一人で座っている。誰も私の側にはいない。

達也は優しかった。最初から正直に全て本当の事を話していれば、少しは今より良かったかも知れない。


でもあの時、自分自身が黙っていれば分からないという今から考えれば愚かな事をしたばかりにこうなった。


本当は妹の事もあり退学すれば良かったのだけど、行く先の高校の事や妹の事を考えると生徒指導の先生や両親と相談してここに残る事にした。でも辛いだけ。


2Aを見ると達也の側には高頭さん、転校して来た立花さんそれに桐谷さんも居る。彼の周りは入学して来た時とは、大きく変わった。本当は彼の隣には私が居たはずなのに。


「本宮さん、百メートル個人が始まるわ。早く準備して」

「はい」




「達也さん、百メートル個人が始まります。行って来ます」

「立花さん、頑張って下さい」

「達也、私も行って来るわ」

「ああ、早苗がんばれ」


 二人の後姿を見ていると健司が声を掛けて来た。

「達也、桐谷さん変わったな。前はお前と距離を取っているというか、知らん顔していた感じだったが、最近やたらお前に絡んでこないか」

「ああ……」

 

 俺も分からない。あいつ彼氏とかいたんじゃないのか。俺よりそっちに行けばいいのに。


 スタートラインを見るとなんと立花さんと涼子、早苗と小松原さんが同じ組だ。その前に瞳が走る。あいつこれに出るのか。


 あっ、スタートした。あっという間だった。足が速いのは知っていたが二位との差が三メートル近くある。あんなに目立って大丈夫か。


 ゴールして一位の旗の下に並ぶとこっちを見て手を振って来た。何故か俺の周りの男子が騒いでいる。どうしたんだ?

 まあ俺も小さく手を振ってやったが。



 二年の百メートル個人が始まった。

 立花さんと涼子がいるグループだ。


「おお、立花さんが走るぜ」

「見れるかな?」

「見れるだろう」


 こいつら何言っているんだ?

あっ、スタートした。涼子流石テニスを中学からしているだけあって早い。でも立花さんが追い付いて来た。


「見、見たか」

「ああ、本宮さんと立花さん、すげえ」

「眼福だぁ」


 こいつら何処見ているんだ。でも確かにあの二人目立っている。あっ、立花さんが先にゴールした。あの人足早いんだ。


 立花さんがスローダウンするとこっちを見て両手を挙げて跳ねながら喜んでいる。結構お茶目だな。


「おお、見たか」

「ああ、今日は良い日だ」

 こいつら何処見ている。



 次は早苗と小松原さんだ。あっ、スタートした。凄い、早苗と小松原さんが並んでいる。


「おう、こっちも凄い。流石桐谷さんと小松原さん」

「今日は良い日だな」

 こいつら何考えているんだ。今日は体育祭だぞ。


 ほぼ同時に二人がゴールした。俺の所からではどっちが先か分からない。あれ、二人と一位の旗の下に行ったぞ。同着か。


 百個人が終わってみんなが帰って来た。

「達也さん、見て頂けました?」

「ああ、凄かったな。一位おめでとう」

「ふふっ、ありがとうございます」


「達也、私の見てくれた?」

「ああ、早苗も凄かったな」


 何故か小松原さんがいる。

「健司、見てくれた?」

「お、おい、佐紀ここじゃあ」

「いいじゃない。見てくれてたの?」

「ああ、佐紀凄かったよ。良かったな」

 それを聞いた小松原さんニコッと微笑むと2Bの休憩場所に戻って行った。


 あれ、どういう事?


「健司、後でゆっくり話をしような」

「達也……」

 まさか、佐紀がここに来るとは思わなかった。達也にだけ話すかな。


――――――


 なんか、立花さんの所為か桐谷さんはっきりしてきましたね。まだ何も言っていませんが。健司と小松原さんいったいいつどこで?

来週に続きます。


次回をお楽しみに


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 無くした大切なモノを今更ながら後悔して未練タップリな本宮涼子。 大切なモノを無くしたくないが為に足掻きまくる、ある意味今更感もする桐谷早苗。 自らの価値観に基づく大切なモノを得んが為に…
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