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新しい事は危険も一杯


 俺、立石達也。入学式も終わり、早速授業に出た。今日は初修外国語つまり第二外国語だ。これはクラス単位で受ける。一年の俺達は上クラスつまり加奈子さんの二年のクラスと大いに関係がある。


だから彼女は俺にフランス語を取らせたのが後で分かった。一クラス三十五人しかいない。俺は大学というのは大きな教室で大勢の人が集まって講義を聞くというイメージを想像していただけに拍子抜けだ。この人数だと高校生の時と同じだ。


 男子と女子の割合は若干男子が多い程度。俺達五人が教室に入って行くとみんな一斉にこちらを見る。


 不思議そうな顔をする人や目がハートになっている人、俺に嫉妬の目を向ける人がいる、ほとんどが男子だ。女子はチラッと俺達を見ると何も無かった様に友達と話したり本に目を落している。


 俺の右隣りが早苗、その隣が涼子、左隣りが玲子さん、その隣が四条院さんだ。



小声で聞こえてくる声もある。

「なあ、あの子可愛いよな。ほらあの凄い奴の隣にいる子。あんな子彼女にしたいな」

「そうだな。でも俺は右の二人目が良いと思うが」

「しかし、あのごっついのとあの四人の女の子どういう関係なんだろう?」

「さあ、その内分かるんじゃないか。同じクラスだし」


 好きな事を言ってくれているが無視をすると

「達也さん、気にする必要はありません。いずれ分かる事です」

「そうだよ達也が私の彼だって分かる事が」

「何言っているの!」

「こら、授業が始まるぞ」

「「はーい」」



 午前中一コマ取っている授業が終わるともう午後十二時近くだ。直ぐに学食に行く事にしたが、俺は生理現象が起きてちょっと皆より後に行く事にした。




 ほんの五分位だが遅れて行くと四人の周りに男子が一杯いて声を掛けられている。まあ、あの子達の自由を縛るつもりは無いし、むしり色々知見を広げるという意味では良いだろうと思ってカウンタで定食を受け取って彼女達に近付くと


「ねえ、君達、午後取っている授業あるの?」

「あります」

「それ終わったら、少し話しない。いい所知っているんだ」

「結構です」



 男子二人だが、あまりいい会話では無いな。玲子さんや早苗、いや四条院さんが暴発しない様に先に止めるか。


「みんな、遅れてごめん」

「達也が遅いから変な奴に声を掛けられたじゃない」

「そうですよ達也さん」


 その声にチラッと俺を見るとビッと体が硬くなったように、何も言わずに離れて行った。


「達也が遅いからよ」

「そんな事言ったって。それに高校時代と違っていつもお前達の傍に居れる訳じゃないし」

「そんな事ありません。達也さんが私の傍にいつも居てくれればいいのです」

「何を言っているの立花さん」

「二人とも止めろ。周りの注目の的だぞ」


 周りの人が俺達の先程からのやり取りに聞耳を立てている。しかし高校終りの頃から玲子さんの態度が凄く積極的になっている。

この人には、友達としてお付き合いするのは大学四年間だけだと言ってあるのに。大学を卒業すれば接点は無くなる。なんでこんなに俺に固執するんだ。



 昼食を摂っていると

「達也、こんな所にいたのね。探したわ。今度お昼を取る摂る時は私に連絡頂戴」


 加奈子さんの傍に立っている女性がいる。俺は直ぐに武道上段者と分かった。身長は加奈子さんと比較して多分百七十五センチはあるだろう。女性としては大きいほうだ。髪の毛は短く目は切れ長だが鋭い、鼻は形いいが、唇は薄い。俺をじっと見ている。

 殺気は感じないが、周りを見つつ俺の動きから目を離さない。


「達也、紹介するわ。この人私の友達セキュリティ竜野通子たつのとおこ。いつも私の傍に居るわ。皆さんも宜しくね」

「皆様、加奈子様のお供をしています竜野通子です。以後お見知りおきを」


 なるほど、この人が前に言っていたセキュリティ兼お手伝いさんか。しかし流石だな。加奈子さんのセキュリティは。この大学の文一に入るんだから。


「達也、まだ食べ始めたばかりね。早苗さん私達もここに座っていいかしら」

「どうぞ。達也が良いって言うでしょうから」


 早苗も加奈子さんももう少し棘の無い言い方出来ないものだろうか。

 


 こういう事が毎日の様に続き…と言う事は無く、お互いに言い合うのが疲れたのか、段々言わなくなって来た。理由は分からないが。



 大学以外の生活は、ほとんど高校時代と変わらない。いやむしろ酷くなった。予備として有った鍵は早苗と加奈子さんに渡した。



 日曜日は住まいが近くなった分、朝から加奈子さんと会っている。場所は都内の色々な有名スポットだ。だが、何処に行くにもセキュリティが前後にしっかりとガードしている為、心が落ち着かない。


だからいつも早々に引き上げて加奈子さんの部屋でのんびりしている。俺の部屋はいつ早苗が来るか分からない。


ちなみに加奈子さんの部屋の隣にある俺の部屋はいずれ使う時が来るという事で俺仕様?してそのままにしてある。使う時ってあるのか?



 早苗は、朝一午前八時半からの授業が無い限り、俺の所に朝からやってくる。もちろん朝ご飯を一緒に食べる為だ。まあプラスアルファもあるけれど。

 夜は大体早苗と一緒だ。理由は簡単。俺が料理を作れないから。カップ麺位は出来るのだが。

 洗濯掃除は、自分でやると言ったが、どうせ同じだからと週二回に分けて…何故か俺の所の洗濯機で洗う。おかげで俺のバルコニーには女性用の下着が偶に干されている。勘違いされなければいいのだが。

 掃除は、暇なとき偶にやっているので早苗が土曜日来た時、俺が手伝いながら一緒にやるという感じだ。


 涼子は学校で会う以外は特に何も言って来ない。マンションまでは一緒だが、そこまで約束通りだ。


玲子さんは、週に一度はデートしてくれと言って来るが、三週間に一度にしている。行く所は都内の有名な場所だ。部屋には絶対に行かない。行けばどうなるか分かっている。


 四条院さんは、あの彼氏と上手くやっているのか、新しく出来たのか分からないが、学校以外では俺達には接触して来ない。まあ学校で会うと俺達の関係を見ては笑っているけど。


 そんな平穏?な時間の中、なんと五月に学祭を行うらしい。高校や地元の大学では秋も深まった時に行うから驚いた。それも今年は百回イベント付というらしい。


 

 俺は本来求めていた大学生スローライフを目指し、その学祭に参加、いや見に行った。だが俺の隣には早苗と玲子さん、それに後ろには涼子と四条院さんが居る。

 慣れてしまったとはいえ、流石にこれでは好きに出来ない。そこで時間分割する事を考えた。


「なあ、みんな。せっかく大学に入ったんだ。もっと広く知見を得る為に少人数で見たりしないか」

「達也なんで?」

「早苗、お前だって自由にキャンパスを歩きたいだろう。俺に構わず好きな所を見ればいい」

「私は達也と一緒がいい。それだけ。それとも達也は私と一緒に居るのはやなの?」

「そんな訳無いだろう」

「じゃあ、ずっとこうして居る」


「玲子さんも涼子も四条院さんも自由に見て回れば良いんじゃないか」

「達也、私は一緒が良い」

 学校でしか達也の傍に居れない。だからこんな時は余計一緒が良い。


「達也さん、私も同じ気持ちです」

「…………」


 簡単に俺の案は座礁した……。


 駄目か。しかしこの編隊何とか出来ないものか。歩いているだけで周りからの視線が凄い。この四人といつも居るから慣れてはいるが。


 そう言えば加奈子さんから何の連絡もないな。彼女の事だ。こういうところには来ないのだろう。


――――――


 入学始めの達也達の様子をちょっと描いてみました。本来はイベントが多い時期ですが、みんな仲が良いだけに面白い方に話が展開できません。次回は何とか心躍る?内容で。


次回をお楽しみに。


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。


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