涼子の言い訳
涼子の言い訳部分長いです。
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次の日も早苗に一緒に登校して貰った。そして学校のある駅の改札に涼子がいる。下校の時も早苗に一緒に居て貰った。でも下駄箱には涼子が居た。段々やつれて来たように見える。
そんな事が一ヶ月も続いた十二月初旬の放課後、いつもの様に早苗と一緒に帰ろうとするといきなり涼子が土下座をして来た。
「おい」
「達也、お願いです。お願いします。私に説明する機会を与えて下さい。お願いします」
下駄箱の靴を履き替える木の上で泣きながら頼み込んで来ている。俺は早苗の顔を見た。早苗はあきれ顔して
「達也、これだけあなたに付きまとって、こんな事までして話聞いてって言っている。どうするの?」
「…………」
「達也、聞いてあげたら。私もそろそろ根負けしそうだし」
「分かった」
「じゃあ、私行くね。バイバイ」
「おい、早苗」
早苗が一人で帰ってしまった。
「達也」
土下座している顔を上げて俺を見上げている。廊下から足音が聞こえて来た。
「おい、早く起きろ」
「うん」
「どうすりゃいいんだ」
「駅の反対側の広場でいいかな?」
「えっ、あんな所人が一杯いるじゃないか」
「今はもう薄暗いから大丈夫」
仕方なく涼子について行った。
駅を迂回するように歩いて広場に行くと近くに有ったベンチに座った。俺の顔をじっと見ているだけなので仕方なく
「聞いてやる話せよ」
「テニス部のレギュラー争いで朝練習や遅くまで毎日練習した。土曜も日曜も練習した。部内選抜勝ち抜いて交流戦まで一生懸命練習した。
それで、交流戦で他校に行って勝ち抜いた時、他校の三年生白河修二って人が近づいて来て私に話しかけて来た。それで私に練習教えるとも。でも拒否した。
それから次の交流戦までの日曜日、学校のコートにやって来て私にアドバイスをし始めたの。
始めはうるさいと思って無視したけど、上手くプレイできな所が有って、それをあの人が指摘してくれた通りにやったらうまく出来る様になった。それから教えて貰う様になった。
二回目の交流戦も他校でやってその時も白河は見に来た。私が調子悪くて負けそうになった時、あの人が悪い所を指摘してくれてそれで勝てた。
その日の帰り結果的にだけど二人でファミレスに行った。お礼も兼ねて。そしたら土曜日会ってくれって言われて。教えて貰って勝てたので、一回位なら会ってもと良いかと思って土曜日に会ったの。
でも言葉巧みに体を要求するから頭に来て帰った。スマホの連絡先もブロックして掛からない様にしたら、その夜普通の通話で掛かって来た。教えてないのに。多分テニス部の誰かが教えたんだと思う。
そしてこれが最後だから次の日曜日も会ってくれと言われて、本当に最後だからと思って白河と会った。
そしたら言葉巧みにあっという間に肩を抱かれて逃げられなくなって、ラブホにつれて行かれた。私は達也がいるから絶対嫌だって言った。絶対しないって。
そしたらあいつが急に脅して来たの。本当なの嘘じゃない。逃げようとしてもドアに鍵かけられて。
ごめんなさい、ごめんさない。本当にごめんなさい。抵抗したけど敵わなくて。本当に無理矢理されたの。思いっきり嫌がったから一回で止めてくれた。
それからも電話掛かって来たけど全部断った。達也に教えるって脅されても達也なら分かってくれると思って断った。
そしたら連絡が来なくなった。
ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい」
俺は何処まで信じていいか全く分からなかった。本当かも知れないし、嘘かも知れない。だけど白河という奴とやったという事実は消えない。だけどそれは脅されて無理矢理だと。それに本当に一回だったのかも。
でもそんな証拠はない。そしてその後会っていないという証拠もない。都合のいい嘘かも知れない。
涼子は俺の隣で思い切り泣いている。俺はどうすればいいんだ。
随分周りが暗くなってしまった。時計を見ると午後七時近くなっていた。
「涼子、帰るぞ。ここに居ても風邪を引く」
「達也、許してくれないよね。どんな理由が有ってもあいつにやられちゃったんだものね。私もうゴミだよね」
「帰るぞ」
それだけしか言えなかった。
そのまま涼子を家まで送って行った。何も話さなかった。
翌日涼子は学校を休んだ。桃坂先生が体調不良と言っていた。俺は自分で消化しきれなくて昼食の時、健司に昨日涼子から聞いたことを話した。
「酷い話だな。確かに本宮さんの迂闊さは有ったけど、その話が本当なら悪いのは白河修二だ。本宮さんにその意思が無かったんだからな。でも証拠がないか。
達也、お前本宮さんと復縁する気有るのか?」
「今じゃ無理だ」
「そうだよな。でも復縁する気あるなら白河修二とかいう奴に彼氏としてしなきゃいけない事が出て来るよな」
「それはそうだが」
「でもよ。達也が本宮さんの彼氏の間に白河が手を出して来たって事は、彼氏としてけりを付ける必要はある。
あと、本宮さんの事だが、教室の中で無下にする事は出来ないな」
「ああ、その事も考えている」
涼子は次の日も休んだ。少し気になるが仕方ない。
そして今日は土曜日だ。朝早苗と一緒に登校すると学校のある駅の改札で涼子が待っていた。でも声は掛けてこない。
俺と早苗がそのまま改札を出て学校に向かうと涼子は少しだけ離れて後を付いて来ている。
「どうするの達也」
「分からん」
「何言っているのよ。私そろそろ達也との登下校止めたいんだけど。変な噂が立ち始めてさ、面倒なのよ」
「変な噂?」
「前にも言ったでしょ。あんたと私が付き合っているかもしれないって事。それよ」
「そうか、悪かったな。どうするかな」
「どうするもこうするも私が決める事でしょ。もう良さそうだし。じゃあ先に行くね」
「おい、早苗」
行ってしまったよ。仕方ないと言えば仕方ないか。早苗の姿を見た涼子が近づいて来た。
「達也」
「涼子どうするか、もう少し待ってくれ。後…教室じゃあ挨拶位いいぞ」
「ほんと!」
「ああ」
悲しそうだった顔が少しだけ戻った感じがした。
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なるほどねえ。
次回をお楽しみに
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