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入学前は忙しい


 皆様からのご意見でほぼ全員が大学編を期待されておりましたのでそれに応えようと思います。

 高校生活と同じ流れにすると四年間だけに更に長くなるので少しだけスピードアップした内容になると思います。ほんとかな?


――――――


 俺、立石達也。入学までそんなに時間はない。住まいを決めて家具を用意して、家から持って行く物の片付けや準備をしなくてはいけない。


 だが、だがだ。例によってあの四人が好きな事を言って来た。住まいは一緒だと!


 本心としては、高校までの事は、高校までとしたいところだが、四人共勝手な事を言って来た。振返ってみれば俺の責によるところが大きいのだが、それにしてもだ!


 早苗は仕方ない。大学を出たら俺の妻となる人だ。同じ大学に入った以上近くに住むのは当然だ。


 加奈子さんは、既に東京に住んでいるから考慮対象外だ。


 涼子だが、運命には逆らえずだ。しかし近くに住む事はしなくても良いんじゃないかと思っている。


 玲子さんも大学四年間は友人として真摯に向き合うと言っているが別に近くに住む理由にはならない。


 そして四条院さん、なんであの人俺に関わろうとしているんだ。従順な彼氏もいるし、その人と一緒人住めばいいのに。


 とは言っても俺が住まいを決めたとたんに涼子、玲子、四条院さんがどう出て来るかなんて見えている。


 と言う訳で取敢えず父さんに東京での住まいの件を相談した。



「父さん、東京の住まいの事なんだけど」

「ああ、それについては心配しなくていい。関連会社の不動産部門が持っているマンションが帝都大学の駅から二つ目の駅に在ってな。そこを購入してある」

「えっ、今初めて相談したんだけど」

「別に可笑しなことじゃないだろう。達也が帝都大学に合格した時点で住まいは頼んでおいただけだ」



「実は早苗の事なんだけど」

「ああ、それも大丈夫だ。ついでにもう一部屋用意してある。多分必要だと思ってな。早苗ちゃんともう一人だれだっけ母さん」

「あなた、本宮涼子さんでしょ」

「そう、その本宮さん分も含めてだ。母さんと達也で向こうには話をしておいてくれ」

「えっ?」

「新築だし、家具の購入がてら一度見て来てはどうだ」



 いったいどういう事だ。なんで父さんと母さんが涼子の事まで気にしているんだ。

「あの父さん、なんで涼子の事を?」

「なんだ俺が知らないと思っているのか。お前の大事な人なんだろう。但し大学卒業までだ。後は達也が責任持て」

「…………」


 俺は運命に呪われているいや縛られているのか。



 父さんと話が終わった後、直ぐに早苗に電話した。



 私、桐谷早苗。今両親と東京の住まいの事で話していた。私は達也と一緒に住みたいと言っているが、立石さんとこの事情があるだろうとか言って話が進んでいない。そこに達也から電話が掛かって来た。


『達也、私』

『早苗、東京での住まいの事なんだが、父さんが俺と早苗の分の部屋を用意してくれている。後で母さんがそっちに行って事の説明をしてくれるから』

『えっ、どういう事?』


『そう言う事だ。出来れば家具の購入も含めて直ぐにでも東京に行きたいんだが』

『えっ、えっ、えーっ!ちょ、ちょっと待って。今両親と住まいの話をしていた所なの。出来れば今から来てくれないかな』

『分かった。母さんに聞いてみる』

 


 母さんは都合が良いという事で直ぐに俺と一緒に隣の早苗の家に行った。向こうの両親に母さんが、大学出てからの事も決まっている以上、早苗さんの安全面を考えても離れて暮らす必要はありません。


同棲は駄目ですが同じマンションに住んで頂きたと考えております。この部屋は立石家が購入したものです。お金の事は気にせずに早苗さんを住まわせてくれという事だった。


 早苗の両親も流石に驚いていたが、我家の事も十分に知っている事も有り、問題なく受け入れてくれた。早苗は喜びまくっていたが。



 そこでまた問題が発生している。涼子の事だ。これは二人で話さないといけない。仕方なく早苗の部屋に行き


「早苗、東京での住まいの事は解決したが一つ飲んでほしい事が有る」

「何?」

「実は、涼子の事なんだが…。父さんが涼子の部屋の分も一緒に購入したらしい。そこに住まわせろと言って来た」


「えーっ、冗談でしょ。なんで本宮さんが私達の住まいの話に出て来るのよ。冗談じゃないわ」

「実は父さんが俺と涼子の事を知っていて。というか最初は涼子だったからな。涼子とはお前も知っている通り色々有った。そういう理由も有って父さんは、大学四年間も傍に居た方が良いだろうという事で購入したらしい」


 信じられない。達也のお父さん何考えているの。

「達也、それ断れるの?」

「駄目だ。決まった事だ」


 本宮さんか。確かに彼女と達也は深い関係にある。私もそれは認める。だけど大学四年間も一緒…。でも学部も一緒だから同じかぁ。それにあの人は三頭さんと違って立場をわきまえている人。しかしなあ。


「早苗、頼むからこの件飲んでくれ」

「分かった。だけど絶対に絶対に絶対にーっ、彼女とは友達だけの関係でいてね」

「それは約束出来る。涼子ともその事はしっかりと話してある。そして了解してくれている」

「分かった、それなら良いわ」



 この後、涼子にも連絡を取り、母さんと一緒に説明に行った。彼女の家は普通のサラリーマン家庭だ。始めは驚いていたが、事情を話すととても喜んでくれた。そして最後に娘を宜しく頼むとまで言われて。はぁ。



 一見綺麗に落ち着いたかに見えたが。


『達也さん、残念ですが、同じマンションに住む事は出来なくなりました。お父様が既に用意してくれているそうです。そこに明日香と一緒に住むことになりそうです』

『そうですか。俺達は近日中に家具の用意と現地確認を合わせて、東京に行く予定です』

『では一緒に行きましょう』


 おかしい、玲子さんが何故か事もなく話している。あの人の性格からして本当ならもっと抵抗するような言葉が出て来ても良いはずなんだが。



 そして翌々日、俺、早苗、涼子、玲子さん、四条院さんは、東京に行った。電車でも一時間と少しだ。


 

 東京の地下鉄は本当に複雑だが、帝都大学の駅は分かり易い名前だったので助かった。そこから二駅。


 最初から気になったのだが、何故か玲子さんも四条院さんも何も言わずに付いてくる。俺達のマンションを確認するだけかと思っていたのだが。


 降りて見るとどこかで見た様な景色だ。スマホのマップを頼りに現地に向かっている途中、反対方向から加奈子さんが歩いて来た。


「あら、達也来たのね」

「えっ、加奈子さんなんで?」

「そんな事どうでもいいわ。さっ、行きましょう」


 全員が意味分からずに目的地に向かうと言われていたマンションの入口に多分営業の人だろうと思う人が立っていた。


「立石様。お待ちしておりました。本日は立石様、桐谷様、本宮様のお部屋をご案内させて頂きます」


 何故か、加奈子さん、玲子さん、四条院さんまでもが付いて来た。


「こちらが立石様のお部屋です」

 そこはドアの横に601と書かれていた。


 営業の人がカギを開けると2LDKの部屋が広がっていた。説明によると七十平米あるそうだ。確かに一人で住むには十分だ。オープンキッチンのLDK、二つの寝室とウォーキングクローゼット、それにバスとトイレだ。


「このお部屋の仕様は桐谷様、本宮様のお部屋とも同じです。後でご案内します。なお、電気、水道、ガスなどの手続きは全て終わっております」

「三部屋共ですか?」

「はい、立石様からのご依頼です」

「…………」


 そう言って一通り説明を受けた後、早苗と涼子の部屋にも行った。早苗の部屋が501、涼子の部屋が502だ。

ちなみにここのマンションは七階建て。一般分譲マンションらしいが、セキュリティはしっかりとしている様だ。

 俺達はそれぞれに三本づつの鍵を渡された後、営業の人だけが帰って行った。



「あの、玲子さんと四条院さんは、マンションに行かなくて良いんですか?」

「今から行きます。達也さんに覚えて貰うと思って待っていました。一緒に来てくれますよね?」

「えっ?」



 彼女達のマンションは俺達のマンションからたった二分しか離れていない三階建てのマンションだ。

「お父様が、ここなら良いだろうと用意してくれました」


 だからか、俺が電話した時、何も抵抗なく受け入れたのは。しかしなあこれじゃあ何も変わらないじゃないか。


「達也、私のマンションもすぐそこよ。一度来たでしょ」

 どうりで駅を降りた時どこかで見た景色だったんだ。


 駄目だ。俺の大学生活は終わった!



 その後、家具の購入の為に皆で行ったが、五人もの家具を購入とあって、五人の担当者が専任で着いてくれた。


ただ選ぶ時、何故か早苗、涼子、玲子さんそれに四条院さんまでもが自分の部屋の家具を選ぶのに俺を連れて行き、最後に俺の家具を選ぶ時は四人が口を出し、特に早苗と玲子さんのバトルも有って、結構な時間が掛かった。


 家具は、明日にでも搬入出来ると言われたが、俺達の引越しに合わせて来て貰うことにした。

 

 帰りの電車の中で早苗がとても不機嫌だった。理由は分かるがもう決まってしまった事だ。


――――――


 達也、高校時代夢見た大学生のスローライフ、飛んで行ってしまいました。


次回をお楽しみに。


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。


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