明日香と南部と工藤
私四条院明日香。南部君と昨日デートした。強引にキスもした。初めてだったらしい。私が彼のファーストキスの相手になったのねと言うと彼はまんざらでも無い様な顔をしたので誘ってみた。
途中まで一緒に行ったのに入ろうとしたところで言われてしまった。
今日は練習で汗かいているから、もし先輩が俺に本気なら今度にして下さいとそして今の彼ともはっきり分かれてくれと。
後は、変な事言っていた。あれって気を付けないといけないんでしょって。私は最初何を言っているか分からなかったが途中から意味が分かって笑ってしまった。
本当に何も知らない子だなと思って、じゃあコンビニで買うって聞くと今度の準備の為に買っておいても良いですけど私が持っていてくれだって。
お腹を抱えて笑いそうになった。今の彼と方向が違う面白さがある。この子で良いかもと思う様になった。そしてしっかりと会う約束もした。
南部君と別れて車で家に戻る途中正人から電話が有った。でも話をセキュリティに聞かれたくない。そのまま無視した。
翌日正人から再度電話が有った。仕方なく出ると昨日の事を聞かれた。だからはっきりと言ってあげた。
奥手すぎるヘタレ男は嫌いだと。
彼が震えているのが手に取るように分かった。そして、じゃあ会ってくれヘタレでない男だと証明するからと。
私は笑ってしまったけど、ちょっと興味が有ったので会う事にした。今改札で正人と会った所だ。私が何も言わずにじっと彼の顔を見ていると
「明日香さん、い、行きますよ」
「いいわ。何処に行くの?」
「…付いて来て下さい」
正人がじっと私を見ている。
「どうしたの?」
「あ、あの手を繋いでいいですか」
私は吹き出しそうになったけど
「いいわよ」
彼がおどおどと手を出して来た。私がぎゅっと手を握ると
「い、行きましょう」
彼が歩き出した。緊張しているのが分かる。随分かかってラブホの前に着いた。
「は、入りますか?」
何言っているんだろう。入る為に来たんでしょ。
「いいわよ」
私は後ろを見て目配せをした後、彼に手を引かれて入った。何故か入口に入った後、じっと部屋のパネルを見ている。動かない。
もう帰りたくなって来た。仕方なく
「どうしたの」
「あ、あのどの部屋選べば」
「はあ、正人が好きな所を選べばいいのよ」
「明日香さんは何処が?」
「ねえ、正人の家に行こうか。君の部屋でもいいわよ」
「い、いや俺の部屋は駄目です。それに家族が居るし」
「そう。もう良いわ。私帰る」
その時別のカップルが入って来た。私は知らん顔してサッと元の入口から外に出た。正人が出て来ると
「正人、私達別れましょう。あなたは私に合わないわ。あなたに会う人見つけなさい。さよなら」
彼が泣きそうな顔をして私の顔を見たけど無視して私は駅の方に歩いた。全く付いてくる気配が無い。追っかけて来るなり言い訳するなりすればまだ希望も有ったけど、駄目みたいね。
俺工藤正人。始めての事だし、下手に俺が言うより明日香さんを立てようとしたらこんな事になってしまった。
明日香さんは、歩いて駅の方に向っている。俺はあの人が好きだ。でも彼女から別れましょうと言われた。私には合わないとも。でもこのままでは嫌だ。でもどうすれば。
「なあ、あんたあの子の彼なんだろう。強引に手を引っ張って、どこでもいいから部屋に入ってやってしまえばいいんだよ」
「えっ?!」
知らない男が立っていた。その横に綺麗なお姉さんが居る。
「ねえ、好きなんでしょあの子の事。ここで別れたらもう二度と会えないわよ」
いきなり、後ろから走る足音が聞こえた。
「明日香さん」
「えっ?」
振り返ると正人がいきなり私の手を引いて
「来て下さい」
後は想像に任せるわ。でも彼初めてだったから大変だった見たい。途中笑いたくなってしまったけど、段々慣れるでしょ。でも直ぐ終わっちゃった。
案の定、彼は次の日も誘って来た。流石に断ったけど。また気が向いたらねと言って。
だから私は南部君に会う事を断ろうとして電話をした。
「南部君、会う約束したけど。あれキャンセルね。事情が変わったわ」
「えっ、でも…俺会いたいです」
「なんで?ファーストキスしたから?」
「それもありますけど…」
「興味あるの?」
「…………」
「ふふっ、じゃあ会って私をその気にさせてくれるなら」
「分かりました」
面白くなって来た。今の彼はあれに興味を持って勢いで走っているだけ。恋人という訳じゃない。
私は、電話をした二日後に南部君とデパートのある駅で待ち合わせした。彼はもう改札の向こうで待っている。今日私は白のブラウスに薄茶色のスカート。髪の毛はツインテールにしている。
「南部君、待った?」
「いえ、今来た所です」
「で、どうする?」
「静かな喫茶店に入りませんか」
「そうね」
どういうつもりなんだろう。
彼は、私を連れてデパートの中にある女性向の喫茶店に入った。アシュレイというお店だ。紅茶が美味しいお店だ。
この子がこんな所知っているなんてちょっと驚きだけど。
彼が私の顔をじっと見ている。何も話さない。別に私の体を見ている訳でない事は良く分かる。
注文の紅茶が運ばれて来て飲み始めても何も言わない。私も彼の顔をしっかりと見た。
綺麗に揃えられた短い髪の毛、しっかりとした眉毛。大きな目をしている。鼻もしっかりとしている。唇は薄い。顔の輪郭は綺麗なラインを描いている。この子良く見ると綺麗な顔をしているのが分かった。
紅茶も飲み終わると
「先輩、行きましょうか」
強い目線でしっかりと見られた。なんなのこの子。自然と
「いいわよ」
と言ってしまった。
…………………。
この子本当に初めてなの。信じられない。
「はあはあ。凄いわね。本当に初めてなの?」
「はい先輩が初めてです」
また唇を塞がれた。
「も、もう駄目」
「駄目です」
俺の横に綺麗な顔をした先輩が横になって目を閉じている。初めてだったけど、ググったりして色々と知識を得た。
みんな試してみた。先輩喜んでくれたみたいだ。でもこの人本当に綺麗だ。大きな胸、括れた腰、しっかりとしたお尻。それに白く絹の様な肌。
俺、この人の恋人になれるかな。でも彼氏いるって聞いているし。これって浮気?
不味いかも。あっ、目を開けた。
「南部君凄かったわ。本当に初めてなの?」
はっきりって私もまだ片手位しかした事無い。こんなにされたの初めて。正人とは全然違う。
「初めてですよ」
「そう、私シャワー浴びて来る」
結局、午後六時まで居てしまった。何時間いたんだろう。
駅まで一緒に行って改札の所で
「先輩、俺と付き合ってくれませんか」
「ふふっ、どうしようかな。考えさせて」
「良いですよ。でも今彼は絶対に分かれて下さい」
「はっきり言うのね」
「はい。じゃあこれで」
私は、エスカレータに乗ってホームに行く南部君を見送った後、後ろを見て
「帰るわよ」
「はい」
家について、スマホを見ると正人から連絡が入っていた。どうしようかな。今日は寝て明日すっきりした頭で考えよう。ほとんど答えは出ているけど。
翌日私はベッドの上から南部君に連絡を取った。
「南部です」
「南部君、昨日はありがとうとても素敵だったわ。でももう全て忘れて。昨日の事は二人だけの夢の中という事にしよう」
「な、何でですか。先輩だってあれだけ喜んでくれたじゃないですか」
「ふふっ、楽しかったわ。でもね君は恋人にするは勿体ないのよ。新しい人を見つけてね。あっ、学校に行っても大事な友達よ。さよなら」
ガチャ。
「切れた。大事な友達か。何がいけなかったのかな。でも深みに入る前で良かったな。でもあういう事って…」
ふふっ、南部君では私が従になってしまう。だから駄目なのよ。私は主で居たい。まあ彼みたいな人が好きっていう人多いから大丈夫と思うけど。
ふふっ、彼の初めて皆貰ちゃった。
――――――
うーん、そういう事か。
次回をお楽しみに。
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