87.過去2『結局ここの人達は何をしていたのだろうか?』
いつの間にか廃鉱の入り口に立っていた。
いや、今の状況では廃鉱と言うのは間違いになるだろうか?
階段を下りながら左右を見回すと壁際に梯子が掛けられている場所が幾つもあり、そこから壁穴へとつながっている様子が見て取れる。
そこら辺に放置された作業道具をみると、人の気配と言うか痕跡は見て取れるが、時間は夜。作業時間ではないのだろう。人の姿はない。
それでも、十分に周囲が見えるのは、そこらにランタンのような照明が置いてある所為だ。何故夜と分かるかといえば、上を見れば星空が広がっているから。
星空がはっきり見えるという事は、上の草は短いのか、はたまた人手がある事で刈って手入れでもされているのだろうか?
階段を降りきると例の声が聞こえてきた。
『選択してください』
既に一回体験済みのこの過去編だし、取り合えず周囲の様子を窺うかな?
何で夜間に一人で入り込んでるかも分からないし、警戒しておいて悪くはないだろう。
「<聞き耳>を選択します」
『<聞き耳>を使用しました。SNS30 確率80%……使用できました』
[あなたは周囲の様子を<聞き耳>で窺いましたが、辺りには静寂のみが広がっています]
うん、どうやら先走りすぎたかな?
「何を選択したらいいですか?」
[この場で使用する武器を選択してください。現在この場にはガスが充満している可能性があります]
「なる程、そっちか……」
そう呟きつつ周囲を見回すと、つるはし、シャベル等が転がっている。
しかし、確かこのモードでは自分の素のステータスが行動のベースになっていたはずだし、STRが必要そうな肉体労働者の道具では少々不利な気がする。
「軽量の武器がないみたいなんですけども?」
『あなたは、身に着けていた大型ナイフを手に取り、そのまま奥に進みました』
身につけているというので、腰をまさぐってみると後ろ腰に横向きにナイフを装備していたので、それを引き抜いて右手に持ち、歩き始めた。
しかし、火星の開拓はドローンが使われてて、金属資源はドローンが掘ってるんじゃなかったっけ?
人が掘っていてもいいんだけど、つるはしやシャベルは流石に原始的過ぎる気もする。
やっぱり廃鉱じゃなくて、何かの調査だったんじゃないか?
[あなたは、ふと横穴の一つが気になる]
丁度真横に横穴があり、多分コレの事だろうと思うが、どうするか?
やっぱり念の為見ておいた方が良いとは思うので、ゆっくり穴に近づき穴の縁から中を窺う。
蝙蝠でもいるかと思い、かなり警戒したのだが、見る限り何もない?
横穴の中にもランタンがあり、十分に明るかったので入ってみると、何だろうか金属の塊のような物が落ちている。
本当にただの塊と言うか、インゴットって言うやつか?ゲームのアイテムアイコンとかお金のアイコンとかでしか見た事無い物だが、多分コレがそうなのだろうという確信がある。
でも、何でこんな所にインゴットがあるんだ?
完全なにわか知識だが、鉱石とかを掘ってそれを精錬?とかして金属のインゴットが出来る物だったと思う。
それが廃鉱にあるっていうことは、本当にここは鉱石が採れて、どこかに精錬所でもあるのだろうか?
取り合えず部屋を出るが、問題はそのインゴットを保管する方法がないため、左手に持ったままだという事だ。
まぁ、仕方ない。左手にインゴット右手にナイフで道なりに進んでいく。
その後は特に何も無く突き当たりに辿り着いてしまった。
まぁ、今回は扉が全開なので突き当たりと表現してしまってもいいのか、微妙な所ではあるが……。
[あなたは奥から明らかに異常を感じる空気が流れ出してきている事を確認します]
『選択してください』
[あなたは扉を閉じるか、奥の状態を調べるか迷い立ち尽くしています]
「明らかにガスが出ているのに、奥に進んでも大丈夫なんですか?」
[あなたの環境服はある程度の長時間無酸素状態でも活動できるように設計されています。不用意な攻撃を受けなければ問題ないでしょう]
はじめはルールが全然分からなくて困ったが、何だかんだ一本道だし、聞けば説明も出てくるので、このモードにも慣れてきた気がする。
「じゃあ、奥に進みます」
『選択してください』
今度こそ、周囲を警戒するためだなと確信し<聞き耳>を選択する。
『<聞き耳>を使用しました。SNS30 確率70%……使用できました』
[あなたが耳を済ませると、奥からは何かの呻き声にも聞こえる音がします。あなたは恐怖に足が竦みます]
『AGIに影響が出ます。1D6を振ります……3が出ました。あなたのAGIは27となりました』
「え?えっと、ステータスが下がった?」
[この記憶を抜ければ元に戻りますので、ご安心ください]
うん、やっぱり結構な親切仕様だ。取り合えずこの過去の夢みたいなイベント中は、AGIが下がってるのか、もし敵がいたりしたら、回避とかに影響が出るかもしれないし、気をつけよう。
近くにあったランタンを手に取り、通路を奥に進むと何か自分が知っている通路より小奇麗になっている気がする?
いや、自分が前に通った時の方が未来の話しなんだから、この時点ではまだ綺麗だったって事か?
どうやら夜間は壁上からの光もないようなので、ランタンの光を頼りに道なりに進んでいくと、あっさりと例の広間に出た。
そこはどうやら一面金属で装飾された見ようによっては近未来的だし、見ようによっては宗教施設のようにも見える不思議な部屋。
その一番奥、例の祭壇があった場所に近づいていくと、どうやらそこからガスが漏れている様だ。
『選択してください』
[あなたはガスの発生源を発見しました。どうやら祭壇横の仕掛けを起動する事でガスの流入を止められそうです]
「じゃあ、ガスを止める?」
選択した瞬間目の前が暗くなり、そして、暗闇の中声が聞こえた。
『ガスを止めた事で、採掘は再開。内部に残されていた謎の遺物も全て地球政府の手に渡った』




