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76.『ご褒美とモチベと目標』タツ

 火星の赤い砂塵を巻き上げながら先輩のバギーが荒野を走る。


 自分は最初の街からほど近い枯れた鉱床の町で、レアアースを掘ったり、それで稼いだ金で弾を買い狩りをしてレベルを上げたりと割りと地味に生活していた。


 例のイベントの後、プレゼントを用意するのに時間がかかるとの事で、大人しく自分自身の研鑽につとめていた訳だが、未だ尖った自分らしいビルドってのには辿り着いていない。


 町の入り口で先輩のバギーを待っているとみるみるうちに近づいてきて、すぐ後ろにも連なるように車が並んでいるのが見えた。


 後ろの車は先輩のバギーとは様子が違い、屋根付きトラック?のようにも見える。


 そして、町の駐車場へと入っていったので歩いて向うと、先輩のバギーからは当たり前だが、オレンジモヒカンの筋肉質な巨漢即ち先輩と、隣には黒人風の肌色でサングラスに黒いニット帽を被った人が降りてきた。


 更にトラック風の車から、ホストっぽいって言うのか、やたらワックスの使用量の多そうな青髪眼鏡の男と、いかにも軍用って感じのフルセット装備の人物がそれぞれ運転席と助手席から降りてくる。


 更には荷台だと思った屋根のある後方からぞろぞろと、それぞれの装備で人が降りてくる。


 「待たせたなタツ」


 「いや、全然待って無いっす!時間通りっす!」


 「はは!何だ!素直な奴じゃん!ブルが言ってるのはプレゼントが遅くなって悪かったなって事さ!」


 やたら髪型に拘りがある風で、もっとクールって言うかいけ好かない感じなのかと思ったら、一番気さくに話しかけてきたのが青髪眼鏡だった。


 「えっとプレゼントってもしかして?」


 「ああ、うちのメンバーとして迎え入れる為に、全員に面通ししようかと思ってな。コレが、TEAMタウルスの面子だ。全員一斉にとなると中々予定が合わなくて悪かったな」


 先輩の最後の方の話しはちゃんと聞けていなかった。


 何しろ先輩に誘われて日本サバでも古参クラン大円の末端に在籍できるってだけでも凄いと思ってたのに、その一角であるタウルスの面々と会えるなんて思ってもみなかった。


 「なんだ?急にフリーズしちまったみたいだが……」


 「ネット環境が悪いのか?それとも天気の影響でも受けてるんかな?」


 「あ、ああ!いや!大丈夫っす!タツですよろしくお願いします」


 「お、おお……大丈夫ならよかったんだが……」


 そのまま、近くの店を貸切にしてTEAMメンバーと話すことが出来た。皆気さくに話し掛けてくれた事で、何とか変な事は言わずに済んだと思う。


 「あっ!そうだ!ところで先輩!こんな所で聞く話じゃないのかもしれないんですけど、自分は大円のどこに属す事になるんすか?」


 「ん?いや、だからタウルスに属するからこうして面通ししたんだろ?」


 「そ、そりゃ勿論分かってるっす!でもTEAMって普通5人の事っすよね?それ以上いるじゃ無いっすか!多分それぞれ役割があるとは思うんすけど、自分は何の係になるんすか?」


 「???」


 何故か先輩が小首を傾げてしまった。


 「くっくっく!おい!ブル……昔から話しベタだとは思ってたが、ちゃんと説明してなかったのか!ははははは」


 急に黒人風の男が大笑いしはじめた。


 「うん、そういう奴だよブルはさ……あのな、タツはこの中じゃ一番後輩だし、まだ一緒にクエストやら大会やら出れるレベルじゃない」


 「それは、100も承知してるっす。何かでも下働き的な……」


 「バカバカ!お前が今一番最初にやらないといけないのは強くなる事だっての。いいか?今までうちにはスナイパーがいなかった。それでも何とかやれてたパワーバランスがこの前崩された訳だ」


 「あの……ゴルゴン三姉妹の?」


 「そう!それだ!だからうちにも有望なスナイパーが欲しかった所にブルの後輩がこのゲーム始めたって聞いて、仲間に入れる事にした訳だ。そこまでは理解してるだろ?」


 「はい!早く一流スナイパーになって役に立つっす!」


 「うん!心意気は買う!でももうちょっと考えろよ?わざわざタウルスのメンバー全員と面通しするんだぞ?つまりタツはこれからタウルスの正規メンバーとして活動するってこった」


 こった?正規メンバー?俺が??


 「え、えええええええええ!!!!!」


 「そうだな。先にこれを渡しておけば良かったな」


 そう言って先輩から渡されたのはアンダーアーマーというのだろうか?体にぴったり合うタイツのような黒い服だ。


 「一応それだけでも通常の火星の気温なら昼夜耐えられるし、このTEAMのメンバーはみんな同じものを持ってる」


 言われて周囲を見回すと、装備こそそれぞれ違えど、一番下には体にぴったり張り付くような服を着ている。


 「コレからよろしくなタツ!」


 そう言って、青髪眼鏡に軽く背中を叩かれる。


 「よ、よろしくお願いします!」


 先輩に渡された黒い服を両手で握り締めていると、他のメンバー達からも声を掛けられた。


 「それで?タツは当面【狙撃手】を目指すんだよな?」


 「えっと、スナイパーライフルは使います」


 「う、うーーーん……今はまだ駆け出しだろ?次は正規兵(レギュラー)だ。そうなると肩書きが付くようになる。スナイパーなら基本【狙撃手】からがいいんじゃないか?」


 「肩書きっすか?」


 「ああ~突撃兵とか偵察兵とか衛生兵とか聞くだろ?肩書きが付くとステータスやスキルにボーナスがあるんだわ」


 「へ~!でもなんで皆は兵なのに自分は手なんですか?」


 「多分、翻訳の問題なんだろうが、一応一個理由があってな。体制側のクエストを受けてると兵って付くらしい」


 「【狙撃手】は体制側のクエストじゃなれないって事っすか?」


 「まぁ、スナイパーのなり手が少ない理由ではあるな。駆け出しまでは新人の街の保安官かマスドライバーで仕事を受けてれば良かったが、役職となると仕事を受ける相手も選ばないとならない」


 「そうは言っても前提条件をクリアしてクエストさえ受ければ別の役職も持てるし、街で付け替えも出来るから、そう深く考えなくていい」


 「そうそう!正規兵の上の熟練兵だと更に細分化されるし、まずは熟練まで来て貰わないと一緒に大会も出れないからね!」


 「まだ先は長いんすね……でもメンバーにしてもらったからには、一刻も早く役に立てるようになるっす」


 「やっぱ素直な奴じゃん!ブルも良い後輩持ったもんだね~」


 その後も和やかに顔合わせは進み、一刻も早く合流できるようにならねばと、決意を新たにした。

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