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64.防衛『猿勢力の襲撃』

 ドンッ!


 っと、鈍い音をたてて木から降り立ったのは一体の戦闘猿。


 いつもは遠目で観察するばかりだが、いざ目の前にするとゴリラとまではいかないものの、結構なサイズに思わずもう一歩下がってしまう。


 そして、次から次へと続くように猿達が降り立つが、こちらは普段自分が相手取るような猿達、とは言え、いつも隠れて一体づつ狩る自分からすると数十匹はいるそれらの威圧感は尋常じゃない。


 数はほぼ対等?と言ったところではあるが、なにぶん今は昼で、猿達の方が優勢の時間だ。


 勿論それを狙って猿達がやってきたのは分かるが、お互い話し合いなどと言う緩い雰囲気からはかけ離れ、牙をむき出し合いながら牽制している。


 一触即発


 と言う言葉はこういう時に使うのだろう。野生の獣なら威嚇の為にもっと叫び声をあげてもいいのだろうが、猿にしても狼犬にしても小さく唸るばかりで、人間語に訳したら多分『殺す』って言ってると確信せざるを得ない。


 ふと、一匹の猿が前に出て来て、自分が仕掛けた毒ガス装置を踏みつける。


 すると案の定と言うか、当たり前ではあるが毒ガスが発生し、紫の煙のエフェクトが周囲に撒き散らされ、猿達はその場で叫びながら咳き込み、狼犬達は冷静に一歩下がった。


 中途半端なタイミングで口火が切られてしまったが、こうなったらやるしかないと、戦闘猿に向かって麻痺矢を放ったのだが、飛び出した普通の猿に当り、その個体はその場でころりと倒れる。


 大急ぎで弦を引き、麻痺矢をつがえると毒ガスから飛び出してきた個体がいたのでそれを撃ち飛ばす。


 すると間髪もなく近くの狼犬がその猿を組み伏せ、喉笛を噛み千切った。


 その様子を見ながらリロードからの射出で、更に一体猿の動きを止め、順調に敵の数を減らしていく。


 そんな中、毒ガスの効果が切れその場から紫のエフェクトがスゥッと消えていくと、狼犬達が一斉に猿達に襲い掛かった。


 そのフォローをすべく次から次へと麻痺矢を飛ばすが、ふと一瞬他を向いた隙に横合いから一体の猿が襲い掛かってきた。


 突撃された反動で、その場にひっくり返るが、クロスボウで相手の噛みつきを阻害できたのは自分の事ながら上出来だろう。


 そのまま馬乗りに押し倒されるもののなんとか噛み付きだけは防ぐも徐々に追い込まれ、万事休すと目の前に猿の牙がありありと迫った。


 そんな時、ふと他の猿が近くに有った酸の罠を発動させ騒いだ瞬間に自分を襲う猿の手が緩んだ。


 殆ど無意識に腰からナイフを抜き、逆手でとにかく馬乗りになってる猿に突き立てると、運がいいのか悪いのか右目に突き刺さり、猿がその場で怯んで大きく仰け反る。


 すると首の下に急所が見えたので更にそこを抉ると……両手で頭を抱えてそのまま自分から転げ落ちた。


 「はぁ……はぁ……」


 いつの間にか自分でも意識しないまま大きな息をつきながら立ち上がり、ナイフを腰のホルダーに戻すと、斜め掛けに投げナイフを提げていたのを思い出し、一本引き抜く。


 そのまま、麻痺矢をリロードしていると猿が再び襲い掛かってきたので、猿の眉間に投げナイフを放ると、気をつけの姿勢で、空を見るように硬直する猿。


 狼犬がその猿に噛み付いたのでその隙に周囲を見渡すと、別の狼犬が苦戦しているのを見つけ襲い掛かる猿に投げナイフを放る。


 不思議とどれもきっちり急所に突き刺さり、硬直した隙に狼犬達が組み伏せてトドメにかかる。


 先手の罠と狼犬達の健闘のお陰か、やや状況が優勢に傾いてきたと思いきや、灰毛の狼があさっての方を向いて、一吠えした。


 すると、ガサガサと木の揺れる音が聞こえ、別の戦闘猿率いる一団が飛び降りてきた。


 まさか、先に同数を見せてこちらの手の内を開示させておいて、全く別方向から襲い掛かってくるなんて言う戦術的行動を猿がとるなど夢にも思わず、浮き足立った所に一体の猿が噛み付いてきた。


 左腕に噛み付かれ取り着かれながら、すぐさま矢をつがえていないクロスボウを足元に捨て、腰の矢筒から引き抜いた麻痺矢を直接猿の首に突き立てる。


 そのまま腕を振り回し猿を引き剥がして、再びクロスボウを拾い上げた時、灰毛の狼が大きく遠吠えをした。


 その灰毛狼に近づく猿の眉間に投げナイフを放り突きたてて、硬直させつつ、灰毛狼の護衛に向う。


 すると波が引くように一斉に森奥へと走り出す狼犬達に、思わず呆気に取られて立ち呆けていると、灰毛の狼に袖の裾を引かれて我に返った。


 そして灰毛の狼の後ろをついていく様に自分も森奥へと向うと、いつもの灰毛狼達がいる木のない空間に辿り着いた。


 ある種広場のような日の光の差すその空間は、いつもなら静謐と表現してもおかしくない独特の神聖な空気感を生み出している場所の筈が、今はさながら狼犬達の野戦病院のようだ。


 それこそ、治療の方法もなくただ怪我した狼犬達がそこいらに転がっているだけと言う光景が、正にそれを連想させる。


 ……狼犬達の空気に飲み込まれ、思わず俯き、広場の端で佇んでいると灰毛の狼が近づいてきて、軽く自分の腿の辺りを鼻で突き、まるでよくやったと慰めてくれているかのようだ。


 自分の無力感に思わずその場に座り込みそうになると、ふと自分のベルトにつけた〔錠剤〕を思い出し、1錠口に入れて噛み潰す。


 清涼感が口いっぱいに広がり、穴から吸う息が冷たくて、ヒートアップしていた脳を癒してくれる。


 ふと、自分の〔錠剤〕を狼犬に差し出すが、気に入らないようでちょっと臭いを嗅いですぐに顔を背けた。


 それなら、自分が作れる〔餌〕に〔Gハーブ〕を混ぜたらどうだろうか?


 まだ自分にもやれる事はありそうだ。

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