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160.過去4『暗い記憶』

 真っ暗な洞窟を歩く。


 妙にヌメリ、弾力があって、何となく温かくて、振動と言うか脈動の様なモノが足裏から伝わってくる。


 正直気持ち悪くなってきたし、もう歩きたくないという感情でいっぱいなのだが、強制的に歩かされている。


 誰に脅されてとかそんなんじゃなく、例のあれだ。


 羊の村で見た夢の続きか、はたまたただの類似なのか不明だが、ゴワゴワとした動きにくい環境服の感触は何故か夢に入った瞬間からしっくりと来ている。


 今回は選択してくださいが出ないまま、環境服に取りつけてあるらしいライトの明かりを頼りにただひたすらと奥に進んでいるだけ。


 今の所なにも起きないのだが、何となく光景が暗く狭く、それでいてグロテスクと言うか、何か生き物の体内?みたいな雰囲気に、すっかり気持ち悪くなっているのが現状だ。


 幸い、環境服のおかげか臭いがしないのが唯一の救いだろう。


 唐突に開けた場所に出た。


 しかし、周囲は真っ暗なので、余計に怖いというか恐怖を感じてしまう。そんなどこまでも広がる闇の光景を前に佇む。


 『選択してください』


 来た!やっとだ。この夢はさっさと終わらせたいと、ディスプレイの表示に集中する。


 [かの生物からの脱出までのタイムリミットは120分です。上へ向かいますか?下へ向かいますか?]


 「脱出口に近い方に行きたいです!」


 『あなたは肺から鼻孔へと向かう道を歩き始めた』


 うん、どうやらやっぱこのグロテスクな感じは生き物の体内で間違いなかったみたいだ。


 生物からの脱出って言ってたし、肺から鼻孔?って事は多分鼻から脱出するって事だよな?


 いったい何の生き物の中にいるかは分からないけど、当たり前の様に体の中を歩けるなんて相当な大きさの筈。


 しかし、何で脱出にリミットがあるんだろうか?寝てる間に侵入して、起きるまでに出ないといけないとか?


 そんな事を考えていると、まるで場面を飛ばしたかのように、いつの間にか狭くて入り組んだ場所に出てきた。


 『選択してください』


 [タイムリミットまで60分です。付近を探索しますか?脱出までこの場で待機しますか?]


 「え?もう出口近くって事なら、出たいんですが?」


 [息苦しさを感じる生物の体内から一刻も出たいと願い、混乱する]


 『SNSに影響が出ます。2D6を振ります……3・4が出ました。あなたのSNSは43になります』


 [今強引に外に出れば、場合によっては水圧で一瞬で死ぬことも考えられる。十分に機をうかがう必要がある]


 これはミスった。


 タイムリミットって言うから、時間までに脱出するのかと思いきや、脱出のタイミングが決まってるタイプだったのか。


 「じゃあ気を取り直して探索します」


 『あなたは壁の一部を押し込むと、そのまま正体不明の水流に流された」


 いや!流されたとか!冷静に言ってる場合じゃない!


 あっという間に身動きが取れなくなり、ただただ酷い圧力にもみくちゃにされながら、押し流されていく。


 「うわーー!!……喋れる?ってか水も入ってこないし呼吸も出来てる」


 体の自由は相変わらず効かないが、呼吸が出来る事で急に余裕が出来た。


 そして、何がどうなったのか急に投げ出され地面を転がって、ゆっくり起き上がると、体の自由を取り戻していた。


 そこは、何もない真っ白な空間?しかし中央には何やらテーブルの様なモノがあり、とりあえず近づいてみる。


 するとそこには例の漆黒の宝玉のはまった台座があった。


 生物の中に石製と見られる台座が一個だけ置いてある風景が、妙にミスマッチなのだが、どうしたものだろうか?


 自分の意思とは関係なしに手が伸び、漆黒の宝玉に触れると、突然周囲が真っ黒になった。


 闇と言うよりは、黒い映像を映したかのようなのっぺりとした感じ。


 そこに白い骨の様な生き物が泳いでいく。


 そう、魚を骨だけにしたような不思議な生き物が群れて通り過ぎ、次には細長いやっぱり骨のみの魚が一匹通り過ぎて、さっきの骨の魚を一匹食べて行った。


 骨が骨を食べるのってどうなんだろうか?


 それからも次から次へと骨みたいなガリガリの魚が現れるが、やたら大きな魚を見て、ちゃんと身もついている事が分かった。


 ただ自分が知ってる魚と違って、食べやすいプリッとした感じではなく、ひたすらガリガリの姿が普通みたい。


 虫と魚の間を取って、ほとんど骨にしか見えないようにした感じとでも言えばいいか。


 急にぽわぽわと光る丸っこい物が現れたと思ったら、多分海月の仲間のようだ。


 この映像は一体どういう事だろう?と思っていたら、漆黒の宝玉を抜き取ってしまう。


 当然ながら自分の意思ではない。自分が入ってる人物が勝手に抜き取ったのだ。


 すると、それまで足裏から感じていた脈動が急に強く、早くドクドクドクドクと鳴り響き、ふと気が付いた瞬間にはまた流されていた。


 流されながらも右手だけは強く握り、漆黒の宝玉は手放さない。


 そのままどれだけ流され続けただろうか?


 急に目の前が眩しいと感じた時には、周囲は真っ赤。


 いつの間にか遠くに見慣れた火星の夕日が目に映る。


 『あなたは火星の海の記憶を手に入れ、無事脱出に成功した』

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