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110.『TEAM戦(練習)』タツ

 目の前に立ち並ぶのは宇宙開拓時代とは到底思えぬ、みすぼらしいバラックのトタン屋根が延々と広がる風景。


 まったく整理されずちぐはぐに並ぶそれらの間には、いくつもの弾痕の後が見られる白い土壁の家屋跡の数々。


 その中でも特に背の高い廃墟の最上階で伏せて、目下を監視している。


 今回自分が参加したのはクラン大円の低レベル帯アンダー40の交流TEAM戦だ。


 現状先輩の下には自分しかアンダー40がいない為、一人での参加となった。


 勿論交流TEAM戦という事で、同クランの別組織の人達と組まされているし、極力同組織の者はバラバラに配置されているらしい。


 そして低レベル帯とはいえ、一応は対人戦がそろそろ可能なレベル帯という事で集められた者たちの中には既にクラスが5段階目に突入している者もいる。


 そんな中、自分は先日やっと狙撃手のクラスを手に入れたばかりのある意味じゃ一番下っ端だ。


 それでもスナイパーってのはいるだけで存在感があるものだからと、参加を進められとりあえず今は伏せたまま、下を眺める人をやっている訳だ。


 ルールは簡単で、複数TEAMが同時参戦し、それぞれランダムで割り振られた拠点を守りながら、敵拠点を攻めるというもの。


 アイテムボックスの使用は不可で、基本持てる限りの弾薬を持ち、使い切ったら拠点に補給に行かねばならない。


 一部アイテムはバックパックのみ使用可能らしいが、基本銃弾に関してはバックパックでの持ち運び禁止となっている。


 愛銃のPSG-1とその弾を脇に置き、ひたすら下を眺め続ける。


 狙撃手を取得するためにひたすら待って、撃つ。というのは徹底的にやったのだが、それでも結構暇である。


 TEAMメイトは迷路のようなバラックの間を駆け抜け、敵の気配やなんかに一々驚いたり、お互いで連絡を取り合っている様子が無線で聞こえるのだが、上からは何にも見えない。


 そんな時、ふと広場とも言えない空間に一人ポツンと周囲を見渡す人影が確認できた。


 「11時方向、2階建て廃墟の影、多分井戸と見える物陰に敵影」


 すぐに無線で通達すると、返信が返ってくる。


 「ナイス!タツ!一番近いのは……」


 「はいはい!30秒で行けるからちょっと待ってて!」


 正直なところ30秒待つくらいなら、こっちから撃っちまえばいいんじゃないか?と念のためPSG-1のスコープに敵影を収める。


 そのまま、井戸の辺りから動かないという事は<察知>とかに準ずるスキルは持ってないのだろう。


 スクッと、立ち上がり近くの別の家屋に向かう。


 「移動した!撃つぞ!」


 「ちょっと待て!」


 その警告と同時には発砲し、人影の頭を撃ち抜く。


 我ながら完璧な一撃だった。


 ワンショットワンキルで、糸を失ったマリオネットのように崩れ落ちる人影を見て、悦に浸る間もなくすぐさま移動する。


 何しろ今の銃声で、多分自分の居所は知れた。


 それは誰であれ同じ条件なのだが、問題は自分はとにかく足が遅いという事。


 スナイパーの宿命として武器を扱うSTRと命中させるDEX、そして視野の広さや動く標的を追うSNSを上げねばならない為、AGI及びVITがかなり他のプレイヤーに劣るという弱点を抱えている。


 急ぎPSG-1を担ぎ逃げていると、あっという間に敵が追いかけてきた。


 できるだけ複雑な道を右へ左へとランダムに折れているはずが完璧な追跡を見せる敵に、PSG-1は背中に背負い、ハンドガンを腿に取りつけたホルスターから引き抜く。


 最悪相討ちと思い、ある角で止まりハンドガンを構えたが、急に敵の追跡が止まった?


 油断せず、背中を壁にくっつけて両サイドを監視していると、ふと頭上から影が差す。


 そのまま上を見ると、


 パラパラパラパラ……


 軽い音が鳴り響き、自分は死んで先ほどまでのバラックの密集地域とは別の場所に飛ばされた。


 そこはいくつものモニターが並ぶ、小綺麗というか、近未来的なBAR?


 残念ながらいまだかつてBARというものに縁がなかったというか、そりゃ学生の内から酒が提供されるような店には行かないだろうって事情から、正直よくは分かっていない。


 チラッと、横を見やるとさっき自分が倒した人物がいた。


 「あっ!やりやがったな!はっはっは!腕はいいけど、まだまだだったな~!」


 「え?あっすみません」


 「あ?撃ち合いのゲームですみませんも何も無いだろ?隙見せたら撃つ!それくらいの気概じゃないとな!」


 「あ、あっす!」


 「でも、あれは悪手だぞ?ほら!」


 そう言って指をさされたモニターでは、自分の拠点が複数のTEAMに狙われて大ピンチの様子だった。


 「え?あれ?うち負けてる?」


 「そりゃそうだろ。試合始まってそう経たないうちにスナイパーが撃ったって事は、その近くに拠点があるって誰もが思うだろ?」


 言われてみれば、今回お互いの拠点は分からない状態でのスタートだった。


 そんな中で鈍足と知られてるスナイパーが発砲したなら近くに拠点があるって言っているようなものか。


 自分がその事実に気が付き頭を抱えていると、軽く肩をたたかれた。


 「まぁまぁ、最初の内はそんな事もあるって!そう言うのを勉強するのが交流戦だろ?そもそもスナイパーなんて数も少ないし、警戒されて、研究もされてるんだからさ。次からはもっと慎重にな!」


 撃った相手にアドバイスされ、スナイパーの奥深さを思い知ることになった。

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