空は青く晴れ渡っている
悲鳴を上げるエンジン音。
近づいてくる鉄の塊。「睦月!」という、悲鳴じみた叫び声。直後に誰かが突き飛ばされる音。「あっ……」という女の声は、しかし直後に響いた重い音にすぐ掻き消される。
なにかがなにかを跳ね飛ばしたような、鈍い音。間違っても、キャッチャーミットを揺らした時の快音にはほど遠い。
ギャリギャリ。
ギャリギャリ。
ギャリギャリ。
ギャリギャリ。
ギャリギャリ。
なにかがだれかを削るような、生々しい音。
引かれる。跡が。
血。
血。
血。
血。
血。 血。
血血血血血血血血血血血血の跡が点々点々点々とあちらにこちらにそちらにどこにもかしこにも
嗚呼。
「ひ……」
……嗚呼。
「い……ぃ、い」
その悲鳴は。
「イヤァァァァァァァァァァァァァッッッ」
――俺のものか、睦月のものだったかは、自分ですらよく、分からない。
だけど、本当に空はよく晴れていた。
とても、青く、青く、晴れ渡っていた。
……残酷なぐらいに。




