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2-33 犯人を追え!


「いた!キリュウ!」


「『渡り鳥』か!」


 移動する座標を先読みしながら街を走っていたレイは、目の前で全力疾走する黄色い着ぐるみを見つけて声をかける。


「状況は!?」


「こっち方面に走って行ったのは分かったんだが見失った!」


 キリュウの言葉に状況が良くないことを知り、レイは舌打ちをする。


「ってかキリュウ達がいて何でこんなことになってるのさ!」


「返す言葉もねぇ。完全に油断してた!」


 レイの責める言葉にキリュウは謝罪で返す。


「いきなり店にスタングレネードみたいな光が発生してだな。ミツミを庇ってたんだが狙いが違ったらしい!」


「トラッカーはつけなかったの?」


 トラッカーとは対象の人物、建物に目印をつけられる機能だ。トラッカーをつけた対象物はマップに常に表示されるようになるため、マッピングの際に重宝されていた。


「当然試した!何故か付かなかったんだ!」


「はぁ?どういう事!?」


「多分【霧隠の装衣】の効果だと思う」


 レイの疑問に答えたのは、いつの間にか隣で走っていたウサだった。彼女は涼しい顔で走りながら言葉を続ける。


「効果はマップに映らないのとネームの非表示。それとモンスターからのヘイトを買い辛くなる」


「って事はもう追えないって事じゃ……」


「大丈夫、【ばっとん】を追わせてる」


 その説明に絶望した表情を見せたレイだったが、ウサはそれに対して首を振る。それから走りながらウィンドウを操作すると、レイとキリュウのマップに赤い点が表示された。


「【ばっとん】の座標。これを追えば辿り着けるはず」

 

「ナイスウサ!じゃあ私先回りするね!」


「任せた!」


「了解」


 マップに表示された点を見て、レイはウサに感謝しながら2人とは違う道を進む。


「これは東門目指してるのか……じゃあここかなっ!」


 犯人のルートに当たりをつけたレイは、屋台の上によじ登ると窓のサッシをつたって建物の屋根へとよじ登る。


 そのまま人だかりを避け大幅にショートカットして一目散に対象の場所を目指すと、やがて真っ黒のローブを被った3人組が走っているのを発見した。


「いた!待てぇぇぇぇ!!!」


 そう叫びながら3人のうちの1人に飛びかかると、その人物ごと巻き添えにしながらゴロゴロと地面を転がる。


「ぐぁぁ!?」


「何だこいつは!?」


「くらえ!」


 急な乱入者に男達は驚いた声を出したものの、すぐに冷静さを取り戻すとその中の1人が呪文を詠唱し、魔法陣が現れる。


「魔法!?あっぶなぁ!」


 それにいち早く気づいたレイはその場から飛び退く。次の瞬間、魔法陣から火球が飛び出すと逃げ遅れた男ごと火柱をあげてポリゴンに変えた。


「……はぁ?仲間じゃないの?」


「ふん、あの御方の命令の前にはその程度些細な事よ」


「……気分悪いな」


 何かを盲信するように発言する男にレイは眉を寄せて不快感を示す。


「というか、ラッキーなんか攫って何が目的なの?」


「ラッキー?」


「惚けないでよ。あんた達が攫った虹リスの事だよ」


 レイの言葉に一瞬だけ疑問の声を上げた男達だったが、その後に続いた言葉に対して大声で笑い始めた。


「これは滑稽だな!まさかモンスター如きに名前をつけるとは!」


「なるほど、そういうこと言っちゃうタイプか……」


 その様子に会話が成り立つ相手ではないとレイは悟り、ゴミを見るような目で相手を見つめる。


「で?何でよ?」


「何故貴様に教えなければならない?あまり調子に乗るなよ」


「あ、そう。じゃあ無理やり吐かせてあげる」


 予想通りの返答に、レイは静かに怒りを滲ませながら武器を構える。


「我々に勝つつもりか?余程頭が悪いらしい」


「何?有利だとでも思ってんの?」


「当たり前だろう、数も数えられないのか?」


 馬鹿にしたように笑う男達を前にレイも同じように鼻で笑うと、馬鹿にしたような口調で返す。


「数えた上で言ってるんだよ。3対2(・・・)だから私達が有利に決まってる」


「3……?一体なにを――」


 男が眉を顰めた瞬間、背後に黄色いリスの着ぐるみが現れる。そのまま裏拳の要領で拳を横に薙ぐと、男のうちの1人が壁に叩きつけられてポリゴンと化した。


「ふんっ!」


「ッ!?くそっ!」


 続く形で目の前にいた男にもその拳を叩き込もうとしたが、ローブの男はそこから飛び退くように前に転がり、その攻撃から何とか逃れる。


「おっと、ついぶっ殺しちまった。まぁいいかもう1人いるし」


 全く反省した様子もなく呟いたキリュウは地面に転がった黒い球を叩き割る。


「もきゅー!」


「おう、悪かったな」


「年貢の納め時」


 中からラッキーが元気いっぱいの様子で飛び出てくると、怒ったようにキリュウの頭の上に乗り、着ぐるみ越しにべしべしと叩く。


 その横では【しゃーくん】を空中に三体ほど展開したウサがいつでも攻撃できる状態で構えていた。


「おのれ、不意打ちとは卑怯な!」


「それ君が言う?」


 1人残された男は悔しそうにギリッと歯軋りをし、それを見たレイが呆れた声を出す。


「さて、もう君に勝ち目なんか残ってないんだしさっさと白状したら?」


「ふん!馬鹿も休み休み言え!」


 最後通告と言わんばかりにレイが声を掛けると、ローブの男は唾を飛ばしながら怒りを露わにして叫ぶ。


「これで勝ったと思うな!最後に笑うのは我々だ!」


「な!?待っ――」


 そう叫んで不敵に笑った男は自身が持っていた杖を真下に向けると、地面に魔法陣が展開される。


 その意図に気付いたレイが慌てて止めようとしたものの、残念ながら間に合う事はなく男の体は炎に包まれた。


「ちっ、口を割るくらいなら、か。小賢しい」


「だね、まさかここまでするとは思わなかったよ」


 そのままポリゴンとなって消え去った犯人に、レイとキリュウは不快感を隠そうともせず、眉根を寄せながら会話をする。


「……アイツか?ごめん、ちょっと行くとこできたかも」


「どこに行くんだ?」


 ただレイの方はそれだけではなく、少し考えた素振りを見せるとキリュウ達に声をかける。


「心当たりがあるからさ、お話ししてこようと思って」


「ほう?そりゃぜひ俺も行きてぇな」


 レイの返答に興味をひかれたキリュウは、着ぐるみの衣装からいつものグラサンスーツ姿に着替えて腕を回す。


「そう?じゃあウサ、ラッキーのことお願いできる?」


「分かった。でも程々に」


「相手次第かな」


 ラッキーを抱いたウサの警告に対して、回答を曖昧にぼかすレイ。その鋭い目は決して年頃の女子高生がして良いモノではなく、幾多もの地獄を経験した修羅の目をしていた。

[TOPIC]

ITEM【ばっとん】

ウサの所有している装備の一つである自立行動人形。

こうもりの姿をしたぬいぐるみで、主に追跡する際に使用される。

効果①:協力NPCとして行動

効果②:自身の位置、及び対象の位置をマップに表示

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― 新着の感想 ―
[一言] さて犯人はどっちだ?
[一言] 更新お疲れ様です! いや、ホントなぜ抗争民にケンカを売ったよ首謀者Aよ、、、 対人戦闘なら一流の奴らぞろいだぞ、、、? 終わってない、、物理的にそのうち終わらせられそう、、、 いや待てよ?ま…
[良い点] あーあ、抗争民を本気にさせちゃいましたよあの子。
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